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証拠と数える概念:”evidence”が数えられない理由

 今回は “evidence” という名詞に焦点を当て、英語における「数える感覚」を掘り下げてみたいと思います。

 「証拠」と訳されることの多いこの単語ですが、日本語特有の「ひとつ、ふたつ」というカウントに慣れ親しんだ私たちにとって、なぜ数えられないのか、直感的に理解しにくい単語ではないでしょうか。

 しかし、その理由も「名詞が単位として機能する」という英語の原則に基いており、"information" や "luck" と同じく、”one" として機能する基準が感じられるかどうかが鍵となってきます。

名詞とは単位そのもの。では “evidence” に “one evidence” とする基準はあるか?

 まずは前提として「日本語と英語における数え方の違い」を理解しておきましょう。

「英語における『数える』とは?」のおさらい
 日本語では、例えば「薄いもの」や「細長いもの」、あるいは「動物」といった形や性質に基づいて数を数える。しかし、英語では "two pencils" や "three cats"のように、名詞自体が単位として機能する。
 つまり、英語で名詞を「数える」かどうかは、その名詞に "one" として機能する基準があるかどうかに依存する。

 つまり "evidence" をカウントする場合、その名詞自体が単位となり ”two evidences, three evidences” のような形をとる必要があります。そして、その為には “one evidence” とは具体的に何か?という基準が存在しなければなりません。では ”evidence” にはそうした基準があるでしょうか? 

犯罪現場の「足跡」を例に考えてみる。

 ある犯罪シーンにて、上の画像のような「足跡」が “evidence” としてが残されていたとします。この場合、いくつと数えられるでしょうか?

 改めて考えてみると、なかなか正解が見つからないことに気づきます。というのも「足跡」を纏めて「ひとつ」と考えることもできるし、そこに残された靴の痕を個々にカウントして「十一」とも言えそうだからです。想像力を働かせれば「歩幅」やら「積雪量」など、他の “evidence” も見つけられるでしょう。

 そしてここで思い出して欲しいのが、「英語にとって名詞とは単位そのもの」という点です。ある人が “one evidence” と数えたものを、別の人が “eleven evidences” と数えるのであれば、そこにはなんら根拠がない、つまりは基準がない、ということになり単位としては成り立ちません。

 こうした理由から、”evidence” という名詞は「数えられない名詞」として扱われるのです。

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