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話せない僕のこと

僕の内側には たくさんの感情と それに見合った言葉であふれている。
でも、
家族の枠を飛び出たその瞬間から
なぜか言葉は喉の下にぐんと詰まって
出ていこうとしない

きみが発した言葉を聞いて
思いきり笑いたいけど
僕の笑い声はでてこない

少し頬がゆるんで
口角が上がっちゃったの、
気づかれたかな。

誰も見ていませんように。

誰か気づいてくれていますように。

きみになら、見つかっても良いかなって
最近少し思ってる。

だから僕は きみの話を耳をすまして聴いているんだ。
楽しいことを聴き逃さないように。

いつか 僕の喉が解放されて、
家族じゃないきみと
声で言葉を交わす日が来るだろうか。

そんな日が来てほしいとも思うけれど。


そうならなくても大丈夫だよと
待ってくれている あなたがいるから
僕は今日もじっと
この教室の中で
安心して
耳をすましていられるのだ。


*場面緘黙で、家族とは全く話したことがない息子。
毎日中学校に行って、授業を受けて、給食を食べて、部活をして。
帰宅するのは18時。
小学校のときとはずいぶん生活が変わったにもかかわらず、
五月病にもならずに日々を送っている。
小学校のときは母子分離不安が強く、
私もお弁当を持って毎日学校に付き添った。
他の子どもと比べては
なんでこんなこともできないのと
ひどい言葉を投げかけていた時期も長かった。
この子の成長のペースがあるし、これで良いんだ。大丈夫。と
私が心から思い始めた時から、少しずつ母離れを始めたように思う。

大丈夫。
話せなくても学校に行けているだけで、
学校に行けていなくても朝起きてきてくれるだけで、
朝起きられなくても、一緒に暮らせているだけで。
今、いてくれているだけで。
大丈夫。

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