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小説を書くときの超基本

評論家東浩紀さんが主催されている『シラス』という配信サイトでチャンネルを持っています。
今日はその宣伝を兼ねて、とっても基本的なことをご紹介します。

何が書きたいのか

 これはもう、このnoteでも繰り返しお伝えしてきたことですね。
 自分はなんのために書くのか。
 自分だけが「書くことを楽しむ」のももちろんアリです。
 けれど、他の人に読んでもらいたいのなら、少し工夫をしないといけないね、ということ。

 いいキャラを思い付いたので、その活躍が書きたい。
 いい関係性を思い付いたので、彼らの楽しいぐだぐだを書きたい。
 いいアイディアを思い付いたので、感心してもらいたい。
 いい心の動きを思い付いたので、読者にも共感してもらいたい。

 いろいろあると思います。
 その「一番書きたいこと」を、絶対に忘れないこと。
 これが、芯の通った小説の基本です。

 内心が右往左往するだけの小説、それは右往左往してしまう人間のさががテーマだったのでしょう。
 私はエンタメ作家なので、心情だけを取り出して話を進めることはまずありませんが、目的もなくだらだらと筆のママに書くことと、目的に沿ってだらだらしたところを表現することとは、まったく別です。

「これがやりたい」を、ぜひ自覚してください。

一本調子にラストへ向かわない

 シラスでの配信は、半年を迎えました。
 シラスはゲンロンSF創作講座と関わりが深く、そちらの受講生も私のチャンネルを見てくれています。
 多くの新しい才能に接することができて、幸せだと感じる一方、定番はこっちなのでこうしたらよくなるのでは、と思うこともままあります。

 短編、特にSFやミステリとなると、アイディア勝負の一面があります。
 イイコトを思い付いたら、そのアイディアの説明、または謎の解明に一直線に向かってしまいがちです。

 けれどそれは、ナゾナゾやクイズの域を出ません。
 そこに至るまでを楽しませるのが、小説というものなのです。

シンデレラ曲線

 過去記事「好きを表現できますか?」でも書いたように、人にものを伝えるときには緩急織り交ぜて――つまり、山谷の起伏を作って興味を途切れさせないのが基本です。

 童話のシンデレラを例にとって、起伏を図式化したのが、下の図です。
 実際、ディズニーの長編映画『シンデレラ』でも、このようなチャートが存在します。

シンデレラ曲線

 小説とは、読者の心を揺らす娯楽です。
 一直線でも、解明のカタルシスはある程度保証されますが、途中にハラハラドキドキ、ほっとしたら陥穽かんせいが、という読み進んでもらうためのサービスが必要なんですね。

山の前には谷を作る

 だんだん不幸になる、だんだん上り調子になるというパターンもありますが、それも一つの、長い谷、長い山、と捉えましょう。
 そうすると、比較の問題で、「山と谷は交互に来る」ことが判ります。当たり前ですね。

 つまり、いい調子がガクッと不幸、地を這うような苦労の末に大きな幸運、という落差が大きければ大きいほど、読書のカタルシスは大きくなるということです。

 ここが、なんとなく書く、からの大きな前進ポイント。
 なんとなく書いていると、ずーっと平坦な語り口になってしまい、読者が飽きてしまうのです。
 しっかり書き手側から仕掛けましょう。

物語をひねる

 これも以前の復習めきますが。

 ごく単純にいうと、意外な展開がほしい
 思った通りに着地する場合、安心感とつまらなさの戦いになります。
 読書は、読者の貴重な時間を奪うわけですから、なーんだ、当然じゃん、 読んでも無駄だった、などと思われないようにしたいですね。

 いろいろな意外性を設けるときに、便利なのが以下の言葉です。

 シノプシスを立てるとき、または物足りなくて加筆するとき、これらを活用してみてください。

 価値観をひっくり返す、物語の方向性をコントロールする、隠されていた事実が露見する、新たな要素が出てくる、などなど、上記の言葉を使って考えると、うまくいくと思います。

すべてを有機的にリンクさせる

 さあ、自分が書きたいことを忘れずにやれそうですか?

  • 書きたいことがある。

  • それを伝えるためのラスト。

  • ラストが盛り上がるようなシンデレラ曲線。

  • それに沿ったストーリー。

  • 役割が割り振られたキャラクター。

  • そちらが息づくにふさわしい世界観と設定。

 書きたいことを認識できていれば、上のすべてが過不足なく決められるはずです。

 一つを決めると他と齟齬そごが出てきたり。
 あっちを考えるとこっちのことを忘れてしまったり。
 それ以前に、考えなきゃと思っても上手に決められなかったり。

 全体が綺麗につながるように。それが理想です!
 そのためには、「これは何のための決定か」の自覚も必要です。
 主人公が泣き虫なのは、後半で強くなるための谷として。
 大爆発が起きるのは、施設を破壊しておかないとラストシーンが台無しになるため。

 テーマ ≓ 書きたいこと を大前提として、設定・キャラ・ストーリー。これらの歯車をうまく噛み合わせてください。そうでないと小説はうまく回転しません。

宣伝

 ……というようなこと、私はこの note と  シラス でやっています。
 嬉しいことにご好評をいただいていますが、それゆえに、もっと多くの方々に知っていただきたいのも事実です。

 note の記事一覧はこちらから。有料のものもあります。

 シラスはまず視聴者登録が必要ですが、そこでは課金は発生しません。
 登録すると、無料視聴を設けた番組の冒頭を見ることができます。
 番組買いをするときには、確認が出ますので、ご安心ください。
 気に入ったチャンネルは、月会員になると金銭的にもお得ですし、特典もあります。私のチャンネルの場合は、原稿を応募することができます。

 ぜひ一度、ご覧になってくださいね。
 よろしくお願いいたします。


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