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アイデンティティは使いよう

新卒で入った会社で、営業部門に配属された。
そこには、営業が好きで、営業であることにプライドを持っている人がたくさんいた。
そんな組織に対して周囲からは、さすが営業、という言葉が褒め言葉のように使われていた。

身なりが整っていれば、さすが営業
気配りが行き届いていれば、さすが営業
しゃべりがおもしろければ、さすが営業

ぼくはこの「さすが営業」が、あまり得意ではなかった。
というか嫌いだった。

別に営業だからじゃないんですけど。
これがぼくの個性なんですけど。
もちろんあなたに悪気があるわけじゃないのはわかりますけど。

まだ社会人としてのアイデンティティを自認してない段階から、押し付けられている感じがしたのが、気持ち悪かったのかも。

自己認識とズレたところで褒められても、褒められた気がしない。
人を褒めるというのは難しいもので。

一方で、役割が人を育てるなんてこともある。

自分はエースなんだ
自分は父親なんだ
自分はプロなんだ

役割を自覚することが、行動を確かなものにし、その人を強くする。

こんな話を聞いたことがある。

あるレストランで、細かいところまで要求するワガママな客がいた。
ウエイターは何度も呼ばれ、説明を求められ、時には謝罪する。
あるとき、そのウエイターは自分のことを、その人の執事だと思ってみることにした。
今日のおれはウエイターじゃない。執事だと。
執事ならご主人のワガママに応えるのが当たり前。
しょうがないですねぇ、おぼっちゃま。みたいに思いながら対応する。

その客の前では執事を演じることで、本来のアイデンティティを守る。
シーンに応じて役割をすり替える高等テクニック。

そんなふうに切り替えることは、言うほど簡単じゃないけど。

アイデンティティは使いよう。

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