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【第15話】 マドラスの牛使い🇮🇳

インドの街中には牛が多い。野良牛もいれば、乳牛もいるが、なにより度肝を抜くのが牛車である。初めて見た時は驚きを通り越して感動してしまった。そうか、牛も働くのか。そうか、かつて日本でもこのようにして牛を使っていたのか。だが、車ではなくなぜ牛なのだろう。。牛を洗っている男たちの中に入っていき取材を申し出た。男たちはポカンとして困ったように互いを見合っている。別の男にも説明したがどうも要領を得ない。ではこれならどうだ。「ユアジョブ、インタビュー、オーケー?」とにかくこう連呼してみた。

仕事にかかるまで3時間待った
約束の時間に牛も仕事へ
なぜ牛を使うのだろう
牛はあちこちにいる
肉体労働とたくましい身体
鋭い目つきだが優しかった
思い通りの手綱
もっと乗っていたかった

おしゃべりが仕事でない彼ら肉体労働者は、外部の者からすれととっつきにくいところがある。少し乱暴な口調の人もいるし、カメラを向けると怒らせたりする。でもどうしても撮りたくなった。こんな牛使いを取材できるなら、何日でも待つ。チャイ売りを呼び寄せて彼らに振る舞い、タバコを勧めて世間話を始める。すると心を開いてくれたのか、3時間後に来いという。

インタビューに応じてくれた男性は先ほどと違って穏やかに接してくれた。牛をもう一度引いて歩いて欲しいだとか、この道を行ってくれだとかこちらの要望に文句も言わず相手をしてくれる。鋭い目つきをしていたが、優しさが伝わってきた。

「インドで牛車の上から働く男にカメラを向けた日本人」といえばかなり稀な部類に入るだろう。牛に揺られながらそんなつまらないことを考えた。それだけでこの旅の半分以上の醍醐味を味わった気がした。


仕事はな 荷物の積み降ろしだよ

毎朝6時半には仕事が始まるだろ
そう 夜9時半くらいには帰れるな
ずっとこれの繰り返しだ
これが俺の仕事だよ

これ以外にできることなんてねぇからな
コンピューターの使い方なんて知らねぇ
文字だって読めねぇんだから
この仕事が俺の全てなんだ

愛してる 満足してるさ
この仕事に100% 満足してる

深い充実感? いつも幸せだよ
何も悩むことがねぇからよ
みんな幸せだよ
俺の家族も 奥さんも 息子もな

Ox-cart Driver in south INDIA summer 2018
www.monologue365.jp

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