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私はラジオが好きだ、ラジオにしかない魅力【空気階段の踊り場】#とは

芸人さんのラジオが好きだ。

ライターの山田です。

ラジオはテレビなどの映像を伴うコンテンツよりもマイナーで、時代遅れのカルチャーかもしれません。

それでも私は声を大にして言いたい、「ラジオがたまらなく好きだ」

ラジオにしかない魅力、話術だけで0から作り上げる世界にいつでもワクワクさせられています。「ラジオはテレビに劣る」なんてことは決してないのです、むしろ情報が制限される分、そこにはより演者の力量、そして人間性が色濃く滲み出る。声だけで笑わされて、そして時折とんでも無く感動させられる。ラジオは話芸を生業とする人々の力を最も贅沢に堪能できるコンテンツだと私は思っています。

恐らく、日本には無数にラジオ番組があり、そのすべてを聴いているわけではありません。私なんかよりもっとラジオに詳しい人たちだっています。そして、過去ラジオ史にいわゆる傑作と言われる回が多数あり、もちろん私にも、「10年前のあの回が、あの大御所のオールナイトニッポンが…」と思うような名作がたくさんあります。

しかし、ここまでの拙い文章を読んで、“いま”1ミリでもラジオを聴いてみようと思った人に、最も“ラジオの魅力”を感じてもらうならば、コレだと自信を持っておすすめしたい番組が私にはあります。それがTBSラジオで毎週土曜日に放送されている「空気階段の踊り場」という番組です。

※リスナーとして多くの方に、親しみと興味を持っていただくために敢えて出演者の敬称を省略させていただきます。
ラジオクラウドという公式アプリをダウンロードすれば無料で過去回を聞くことができます。ぜひお試しください。

まずは「空気階段」というコンビについて簡単に説明します。吉本興業所属の鈴木もぐらと水川かたまりのお笑いコンビ。主に東京を中心に活動しており、2019年度はコントNo.1を決める「キングオブコント」の決勝に進出するなど、実力派のコント師として知られています。

ボケの鈴木もぐらは肥満でチョビ髭という風貌と、多額の借金を抱えるエピソードから破天荒で常識はずれな印象を受けます。水川かたまりは、現役で慶應義塾大学法学部に合格する秀才で、実際にコントの台本を担当するなど、コンビのブレーンであるイメージを持たれています。しかし、ラジオ内では、どちらかというと鈴木もぐらが巧みな話術で、水川かたまりの上げ足を取りながらトークは進行していきます。

今回ここまでこの2人のラジオを推す理由は、この番組が濃厚な“人間ドラマ”と“先の読めない即興性”というラジオの持つ最大の魅力を強く兼ね備えているからです。2人は放送期間中に20代前半の売れない若手から、実力派の中堅へと成長、互いに結婚や出産など人生の節目を迎えていきます。

トーク内容も番組初期の売れない貧乏エピソードから、親族との付き合い方や市営住宅の抽選へと変わっていき、あくまでも等身大の若者の人生の葛藤がその場で紡がれる即興のトークで描かれています。

下記に、160回以上にも渡る放送の中から、ラジオというものを存分に堪能できるエピソードを抜粋します。少しでもラジオに興味を持っていただけたなら、下記の中から気になる回を聞き、「テレビにはないラジオの魅力」を体感してみてください。

①かたまり号泣プロポーズ #79

(#79 本編→#79 アフタートーク→#80 本編→#80 アフタートーク→#119 本編→#119 アフタートークの順番で聴くと最高です)

ラジオ史に残る傑作と言われている、かたまりプロポーズ回。たわいのない話から、同棲していた彼女との破局がばれてしまう、かたまり。芸人としてラジオ上での復縁懇願という形でオチをつけようとするもぐらに対して、笑い話にしたくないかたまりは、それをかたくなに断ります。

詐欺師まがいの屁理屈で、最終的になぜか復縁を通り越して公開プロポーズというオチに。放送中に号泣するかたまりの姿はとても人間臭く、最初は笑っていたはずが、いつのまにか自分の姿に重ね合わせていくはずです。

そして、彼の涙ながらに語るプロポーズの言葉は、28歳成人男性の飾らない言葉。たわいのない日々、そして戻れない日々を嘆く。一切の笑いもない手紙、これは芸人としてどうなのかという内容でありながら、かたまりという人間の誠実さと圧倒的な愛の熱量にやられていきます。

たわいのない日常会話から、いつのまにか1人の人間の決死のプロポーズが始まっていく。トークやエピソードが面白いラジオ番組は他にいくつでもあります。しかし、ここまでラジオの持つ“即興性”という魅力と、ラジオ特有の“ノリ”という醍醐味を味わえる回はなかなかありません。ラジオに興味がなくともこの放送だけは、聴いて欲しいです。そしてそのまま#80でのアンサーに泣いてください。

②泊まりもぐら #149

突撃でかたまり宅に泊まる回を放送すべく収録の計画を練っていた、もぐら。ライブや打ち合わせ後のかたまりを3回待ち伏せるもすべて失敗に終わります。3回目の待ち伏せに失敗した際に収録をあきらめきれない一行は、たまたま、近くにいたマセキ芸能社所属の芸人「かが屋」のメンバー「加賀翔」の家に行くことに。実は加賀は、この数日前に放送されたラジオの中で10年交際した彼女にプロポーズしていたそうです。(放送中にプロポーズとはどこかで聞いたことある話ですが…)。恋人同士であった2人の語る“思い出”や“すれ違い”は切なくありながらも、これから別々の道を歩む2人にはどこか前向きな想いも感じられます。

後に、もぐらはツイッターにて「お笑いが好きな人、音楽が好きな人、映画が好きな人、漫画が好きな人、文学が好きな人、写真が好きな人、絵画が好きな人、好きな人がいて好きな人以外のことを考えられない人、みんな聞いてください。」と温かい言葉でこの回を評しています。人と人の出会いや別れ、絆といったものを強く感じさせてくれる名回です。

③駆け抜けてもぐら  #103

学生時代、銀杏BOYZの熱狂的なファンだった、もぐら。高校生でありながら、全国各地に遠征を重ね、バンドメンバーからも認知されるほどのファンであったにもかかわらず、その事実を隠しており、相方のかたまりも知りませんでした。

青春時代を捧げた熱狂的大ファンバンドとの日々を振り返る濃厚なエピソード。なぜ青春時代の思い出を封印していたのか、そしてこのタイミングで解禁にいたった理由を、芸人としての決意や苦悩と共に語っています。

④サラリーマンじゃない人の声 #1 #13 #5 #26

番組初期の名コーナー「サラリーマンじゃない人の声」。深夜の歌舞伎町や、クラブ周りの怪しいスポットで明らかに“サラリーマンじゃない”風貌の人に声をかけて人生の教訓を学ぶコーナーです。

インタビュー相手の大半が呂律の回らない酔っ払いで、そこから繰り出される格言は赤裸々でとんでもないものばかり。しかし時折、人間の真理をついたような言葉に唸らされることも。

特に第1回の放送では、以後番組史に残る“深すぎる格言”も飛び出します。他にも、#13の高円寺伝説の男エザキさんの「上下迷彩は着ないこと」という迷言や、#5、#26の秋葉原のカメラマン、マサキさんのギリギリすぎるエピソードも必聴です。

⑤将棋部の話 #117

もぐらが学生時代に所属していた弱小将棋部の思い出を語る回。将棋好きのもぐらが、将棋部への入部をかけて、キャラの濃すぎる部長と勝負した高校時代のエピソードを語ります。電車内で聞いていて、我慢できずに吹き出してしまったほど、私が一番笑ってしまった回です。

以上のエピソードがラジオを堪能するうえで外せない私のおすすめの放送回です。

もちろんここには紹介しきれない大好きな回もまだまだたくさんあります。正直、5つに納めるのにとても悩みました。ネタバレにならないように、すべて大筋のあらすじまでの紹介にしています。詳しくはぜひ実際の放送をお楽しみください。

繰り返しにはなりますが、紹介したエピソードはラジオクラウドのアプリにてすべて無料で聞くことができます。毎日の通勤時間や作業の空き時間にでも、“ちょっと試し”にという気持ちで一度聞いてみてください。そして、ラジオのもつ唯一無二の魅力に一人でも多くの方が触れてもらえると幸せです。

それではこのへんで、
「ニンニン、ドロン!」

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