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顧客の葬儀に対する意識変化の背景

あまり知られていないお葬式の業界について経営学の視点からお伝えしています。

急激に進行した日本の高齢化

 顧客の葬儀に対する意識の変化の背景には、景気動向の低迷、少子高齢化による高齢者の増加や生産年齢人口の減少などの人口動態の偏り、核家族化の進行による家族構成の変化と地域社会との関係が希薄になったこと、死に対する意識の変化などが挙げられる。

 バブル景気の終わりと共に、日本の経済成長が鈍化していくとともに、世帯所得は低下していった。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、世帯当たりの平均年間所得は、1995年に659.6万円だったのに対して、2007年では、556.2万円、2015年には、545.8万円と減少している。また、同調査の2015年の世帯の生活意識をみると、「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」)が 60.3%、「普通」が 35.9%となっており、年次推移をみると、「苦しい」の割合はおおむね上昇傾向となっている。生活者の家計は、全体として余裕が無くなっていると言える。
 また、日本は、世界でも類を見ない超高齢社会に突入している。総務省の「平成25年版情報通信白書」によると、日本の人口は、2000年の国勢調査からは1億2,700万人前後で推移していたが、2020年には1億2,410万人、2030年には1億1,662万人となり、2050年には1億人を、2060年には9,000万人をも割り込むことが予想されている。高齢化率は、総人口のうち65歳以上の高齢者が占める割合の事であり、老年人口(高齢者人口)÷総人口×100で算出される。WHO(世界保健機構)と国連の定義では、高齢化率が7%を超えた社会は「高齢化社会」、14%を超えた社会は「高齢社会」、21%を超えた社会は「超高齢社会」とされている。内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、日本は65歳以上の高齢者が3,459万人で、総人口の27.3%となっており、超高齢社会といえる。
 また国内における75歳以上の高齢者人口は1,691万人となっている。つまり日本は、4人に1人が高齢者という事になる。また、高齢化の進行の速さも日本の高齢化の特徴である。
 内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、国別に、高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数を比較すると、日本は、1970年に高齢化率が7%を超えると、24年後の1994年には14%に達している。これに対し、年数の長いフランスで115年、比較的年数の短いドイツでも40年かかっている事から日本の高齢化は急激に進んだことがわかる。

老後の長期化による将来への不安

 死亡者数の年次推移をみると、1980年代から増加し、2003年に100万人を超え、厚生労働省が2017年6月に発表した「平成28年人口動態統計月報年報(概数)」によると、2016年の死亡人口は、130万7,765人(前年比1.3%増)となっており、戦後初めて130万人を超えた。 内閣府による、「平成29年度 少子化の状況及び少子化への対処施策の概況」によると、合計特殊出生率は、第1次ベビーブーム期に4.3であったものが、1950年以降低下した。第2次ベビーブーム期以降は、ほぼ2.1台で推移していたが、1975年に2.0を下回り、低下傾向となった。2005年には過去最低である1.26となった。死亡者数の増加と出生数の減少により、日本の総人口も2006年から減少し始めている。
 こうした状況の下、高齢化の進行により、高齢者にとって「長い老後をどのように過ごすか」という事が課題となっている。内閣府が2014年に行った、「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果(全体版)」によると、将来の自分の日常生活全般について、どのようなことに不安を感じるかという質問に対して、「自分や配偶者の健康や病気のこと」が67.6%と最も高く、次いで、「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること」59.9%、「生活のための収入のこと」33.7%となっている。このことから高齢者は、長くなった老後の間に、病気や介護、収入に関する不安を抱えている事がわかる。
 内閣府の「平成28年版高齢社会白書(全体版)」によると、2015年現在、平均寿命は、2015年現在で、男性80.75歳、女性86.99歳となっており、今後も伸び続けると予想されている。すなわち、「老後」の期間は今後も伸び続けていく。 高齢化により、医療や介護に要する期間が長くなり、医療費、介護費等の支出の増加が予想される。一方で、景気動向の低迷による、世帯年収の減少は深刻である。つまり高齢者は、長寿とお金の問題という両立困難な問題を抱えているといえる。

生産年齢人口の減少


 一方で、現役世代ともいえる、生産年齢人口(15~64歳)も減少している。内閣府の「平成28年版高齢社会白書(全体版)」によると、生産年齢人口(15~64歳)は、1995年に8,716万人でピークを迎え、2013年には7,901万人となり減少に転じ、総務省の「国勢調査」によると、2015年の生産年齢人口は7,592万人となっている。内閣府の「平成28年版高齢社会白書(全体版)」によると、65歳以上の高齢者人口と15~64歳人口の比率をみてみると、1950年には1人の高齢者に対して12.1人の現役世代(15~64歳の者)がいたのに対して、2015年には高齢者1人に対して現役世代2.3人になっている。これは、現役世代2.3人で一人の高齢者を支える社会といえる。また、総務省統計局による「平成24年就業構造基本調査」によると、働きながら介護をしている人の数は約291万人となっている。
 今後、認知症患者数の増加が予想されているなか、高齢者を支える世代である、生産年齢人口が減少するなど、核家族化の進行による家族構成の変化により、高齢者を支える環境は大きく変わってきている。葬儀は医療や介護の延長にあるともいえるので、葬儀を執り行うための家族一人当たりの精神的、費用的な負担も大きくなっているといえる。

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