フランス葬儀事情#01
世界のお葬式に関する話題をお伝えしています。
※2011年にフランスの葬儀業界を視察した際の内容を業界誌で「フランス葬儀業界探訪記」として特集して頂いた内容の抜粋となります。記載されている数値は当時のものになります。
フランスの葬儀業界の概要「宗教離れと火葬の増加」
フランスにおける葬儀の歴史は大きく3つに時代に分けられます。
(1) 19世紀以前までのカトリック教会などの宗教組織が葬儀を取り仕切る時代
(2) 1905年の政教分離の法律施行以後、自治体などの公的機関、また公的機関から委託を受けた一部の業者が独占的に葬儀を行なう時代
(3) 1998年葬儀市場の自由化により、中小規模の葬儀社やそのグループの台頭
それぞれの時代における、葬儀業界の特徴は省略しますが、今回は上記の歴史をふまえて次の点に注目しました。
① 市場の自由化により、新規参入が相次ぎ競争は激化したが、それにより葬祭サービスが向上、また葬儀単価が高くなったこと。
② 政教分離による、宗教離れから火葬が増加していること。
③ フランスでは葬儀社の経営に許可が必要で自治体が管理を行なっている。またディレクターには96時間のトレーニング(研修)が義務付けられている。
日本では価格競争による、単価の下落が大きな問題となりつつあります、特にシンプルな葬儀においては、価格だけで判断されがちな訳ですが、サービス面で競争することで、価格を上げるためには人材育成が不可欠であり、そのための研修が義務付けられているという事は非常に興味深く、またカトリック教徒が7割近い中で、宗教離れによる火葬の増加は、日本においての宗教離れ、火葬の増加と本質的に結ぶつけられるものなのかを考える旅となりました。
グルノーブルへ
グルノーブルはフランスの南東部に位置しアルプス山脈の麓、イゼール川沿いに位置し、周囲を大きな岩山で囲まれている街で、パリからリヨンまで飛行機で約1時間、その後車で1時間30分の合計2時間30分の距離ですから日本でいうと、羽田についてから、福岡に移動するような距離感です。
PFI訪問「美術館のような葬儀センター」
PFI(グルノーブル地方葬儀共同企業体)はグルノーブル市を中心に65の市町村が共同出資をする株式会社として運営している葬儀共同事業体です。
出資している各自治体は葬儀の価格について意見を出せるようになっていますが、株主に対して利益は還元されないので、利益は施設の維持管理や建設などの設備投資にまわされます。
今回は市街地の外れにある市営墓地に隣接した、葬儀センターと火葬場を訪問させて頂きました。
葬儀センターは2haの土地に4000㎡の二階建の建物で外観は白で統一されており、全ての葬儀サービスを行なうことのできる設備が整っています。
利用者はエントランスで受付を行い、マネージャーが相談の手配を行なうそうですが、エントランスから扉を抜けて一歩中に入ると、葬儀の相談・打合せ用の部屋が6室あります。(写真奥)
ここではプランナーと呼ばれる方がお客様の対応を行ないますが、中を覗くと広々とした個室で清潔感もあり、外資系企業のマネージャーのオフィスのようです。(外国なので外資系企業は当然ですが…)
また、利用者がいたので撮影はできなかったのですが、葬儀は公共サービスという位置づけで、他社もこの施設を利用する可能性があり、エントランス内にはPFIのロゴを入れてはいけないと法律で決まっているそうです。(建物の外にはロゴが入った看板があるのは大丈夫なのでしょうか?)
通路には、ISOなどの認定証やグルノーブルの1811年から200年にわたる葬儀の歴史がパネル展示されています。
葬儀社に限定した格付けのようなものは無いそうですが、ISOなどEURO内での認証はとっているとの事でした。
下積みから始まるのは、国を問わず一緒ですね
スタッフのお話を伺うと、社内でレベルが設定されていて
① 棺を担ぐ担当
② ディレクター(葬儀施行担当者)
③ プランナー(葬儀受注者)
となっており、「棺を担ぐ」とこから始まり、経験を経てプランナーへ昇格するとのこと。ちなみにプランナーの方は業務の中で2割程度はディレクターのお仕事もされるそうです。
下積みから始まるのは、国を問わず一緒ですね。またディレクターは葬儀施行の際は規模に関わらず写真のような制服を着用するそうです。なんだか格好いいですよね
気になる人材育成については、公務員向けの教育システムの中で、葬儀社向けのものを96時間受け、それを補足する内容として、葬儀社の団体が作ったプログラムで研修を行なっているそうで、主な内容は、心理学や法律学、社会学だそうです。
社内では、PFIの葬儀に対する考え方、「利益よりも家族のケアを優先」というマインドを伝えているという事でした。
実務的な面より、マインドや法的な知識を重視しているんですね。
フランス葬儀事情#02に続きます。
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