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そもそも葬祭業ってなに?

あまり知られていないお葬式の業界について経営学の視点からお伝えしています。

葬儀の総合メーカー


 葬儀業は、経済産業省が発表する「特定サービス産業動態統計調査」では、以下の通り定義されている。
 「主として死体埋葬準備、葬儀執行を業務とする事業所(斎場、式場、ホールなど)をいい、葬儀執行のための祭壇等葬具の貸出し、通夜・葬儀式の進行・運営その他に関する便益の提供及びこれに付随する物品の給付など葬儀に係る一切のサービスを請負うことを業務としている事業所」。
 また、一般的には葬祭業ともいわれ、この場合は、葬儀だけでなく祭事の執行を請け負う場合を指していが、本研究では、日本標準産業分類(平成19年[2007年]11月改定)の分類「葬儀業」に準じ、葬儀の執行を請け負う事業を葬儀業とする。
 また、葬儀業の役割については、平成23年8月に経済産業省商務情報政策局サービス産業室が発表した「安心と信頼のある『ライフエンディング・ステージ』の創出に向けて~新たな『絆』と生活に寄り添う『ライフエンディング産業』の構築~報告書」によると、以下の機能があるとされている。「葬儀の施行に関する機能(祭壇等の設営、葬儀の運営、物品提供等)、葬祭の施行に係る知識提供に関する機能、葬祭の伝統的な習俗や風習等の継承に関する機能、死別後の悲嘆のプロセスに対応する機能、遺体の取扱いに関する機能」。
 このように葬儀業者が提供するサービスには多くの機能があり、田中[2017]によると、「現代の葬儀業は何よりも葬儀全体をトータルに扱うものである」とされており、葬儀サービスには、多種多様な業務が含まれている。
 このため、多くの場合、葬儀業者が全てのサービスを自社のみで賄う事は難しく、多くの場合は業務を外部の事業者に委託、または顧客に対して関連する事業者を紹介、斡旋している。
 このような事業展開を山田[2007]は以下の通り述べている。「(前略)葬儀業者が葬儀全体をトータルに扱うようになると、葬儀を事業化していき葬儀という一個の商品を作りだすメーカーになったのである。
 一方で、生花や葬儀用品、霊柩車、返礼品などは、葬儀専用のものとして専門化していくと、個々の部品を調達しにくくなる。また経営効率からも分業が進んでいった。
 その結果、メーカーとしての葬祭業は、部品を仕入れてコーディネートする総合メーカーにかわっていったのである。そして消費者である一般の利用者にとっては、部品が全く別の会社であることはほとんどわからず、生花も霊柩車も返礼品も含めて個々の葬祭業者名をもった。つまりブランドをつけた葬儀という商品を買うような状況に至ったのであった」。
 葬儀事業者は葬儀関連業者のまとめ役として葬儀サービスを提供している。また、葬儀サービスの提供には、最短で翌日、長くても1週間程度で葬儀を行わなければならないという時間的な制約がある。このため、短期間で顧客の意向を確認しながら、多数の関連業者と連絡を取り、1件の葬儀を執り行う事が求められている。

葬儀にかかる費用の分類

 また、このような状況から、葬儀サービスにかかる費用はいくつかに分類される。
 平成17年5月に公正取引委員会が発表した「葬儀サービスの取引実態に関する調査・提言」では、葬儀サービスの費用項目として、葬儀全費用(通夜から火葬までの葬儀及び返礼品のすべてが行える費用)と、寺院等に関する費用(戒名,お布施等の宗教者に対する御礼,心付け等)に区分され、更に葬儀サービス費用は、基本的な葬具の利用費、人的サービス費用、その他の葬儀サービス費用と分類される。
 このうち、その他の葬儀サービス費用に分類する項目のいくつかにおいては、それらを専門に取り扱う事業者があるため、葬儀事業者は業務委託、または顧客への紹介、斡旋をすることになり、葬儀サービスの費用には、葬儀業者が提供するサービス以外に、紹介、斡旋した事業者の費用が含まれる。

サービス提供場所について

 また、現在では、葬儀サービスを提供する場所として、葬儀専用の施設が利用される事が多くなり、一般的に「斎場」「葬儀場」「葬祭ホール」などと呼ばれている。
 葬儀専用施設には、民営、公営それぞれがあり、公営の葬儀施設は火葬場に併設されていることも多い。また火葬場を「斎場」と呼ぶこともある。
 斎場には、祭りを行う場所、神仏を祭るために、特別に設けられた清浄な場所などの意味がある。従来、葬儀は自宅から棺を運び出し、村落のはずれなどで葬儀を行い、火葬していたので、葬儀と火葬が同じ場所で行われていた。
 しかし、現在では、葬儀は葬儀専用の施設で行われたのち、火葬場に移動して火葬のみを行う事が多くなった。そのため、本来は「斎場≠火葬場」となるが「〇○斎場」という名称で運営している火葬場が多くなっている。
 これらの火葬場は公営のものが多く、葬儀業者が運営している事は極めて稀であり、「火葬」については、葬儀業者が直接提供するサービスには含まれない事が多い。

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