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葬儀業の市場規模

あまり知られていないお葬式の業界について経営学の視点からお伝えしています。

死亡者数の推移と予測

  葬儀業界にとって、死亡者数は取扱数にほぼ等しい数値であり、業界自体の趨勢に非常に大きな関わりを持つ。

内閣府が毎年発表している高齢社会白書の「平成29年版高齢社会白書」には、以下のように記されている。

「我が国の65歳以上の高齢者人口は、昭和25(1950)年には総人口の5%に満たなかったが、45(1970)年に7%を超え、さらに、平成6(1994)年には14%を超えた。高齢化率はその後も上昇を続け、現在27.3%に達している。」

(出所)内閣府「平成29年版高齢社会白書」より筆者作成

 更に、同調査では、詳細推計人口についても以下のように述べられている。
 「将来推計人口とは、全国の将来の出生、志望及び国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて我が国の将来人口規模並びに年齢構成等の人口構造の推移について推計したものである。以下、平成29(2017)年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」における出生中位・死亡中位推計結果(以下、本節においてはすべてこの仮定に基づく推計結果)を概観する。
 我が国の総人口は、長期の人口減少過程に入っており、平成41(2029)年に人口1億2000万人を下回った後も減少を続け、65(2053)年には1億人を割って9,924万人となり、77(2065)年には8,808万人になると推計されている。」
 高齢者人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成28(2015)年には3,677万人に達すると見込まれている。

その後も高齢者人口は増加傾向が続き、平成54(2042)年に3,935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。
 総人口が減少する中で高齢者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、平成48(2036)年には、33,3%で3人に1人となる。54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇傾向にあり、77(2065)年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されている。総人口に占める75歳以上人口の割合は、77(2065)年には25.5%となり、約4人に1人が75歳以上の高齢者となると推計されている。高齢者人口のうち、65~74歳人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後に平成28(2016)年の1,768万人でピークを迎える。その後、40(2028)年まで減少傾向となるが再び増加に転じ、53(2041)年の1,715万に至った後、減少に転じると推計されている。
 一方、75歳以上人口は増加を続け、平成30(2018)年には65~74歳人口を上回り、その後も平成26(2054)年まで増加傾向が続くものと見込まれている。
 なお、5年前(平成24年)の推計と比較すると、人口減少の速度(2060年推計人口について、今回推計では9,284万人、前回推計では8,674万人)や高齢化の進行度合い(2060年高齢化率の推計について、今回推計では38.1%、前回推計では39,9%)は緩和している。

(出所)内閣府「平成29年版高齢社会白書」より筆者作成

 更に死亡数・出生数の推移については、以下のように述べられている。出生数は減少を続け、平成77(2065)年には、56万人になると推計されている。この現象により、年少人口(0~14歳)は68(2056)年に1,000万人を割り、77(2065)年には898万人と、現在の半分程度になると推計されている。
 出生数の減少は、生産年齢人口にまで影響を及ぼし、平成41(2029)年に6,951万人と7,000万人を割り、77(2065)年には4,529万人となると推計されている。一方、高齢者人口の増大により死亡数は増加、死亡率(人口1,000人当たりの死亡数)は上昇を続け、平成77(2065)年には、17.7%になると推計されている。
 更に、地域別にみた高齢化については、以下のように記載されている。
 平成27(2015)年現在の高齢化率は、最も高い秋田県で33.8%、最も低い沖縄県で19.6%となっている。今後、高齢化率は、すべての都道府県で上昇し、52(2040)年には、最も高い秋田県では43.8%となり、最も低い沖縄県でも、30%を超えて30.3%に達すると見込まれている。また、首都圏など三大都市圏をみると、千葉県の高齢化率は27(2015)年の25.9%から10.6ポイント上昇し、52(2040)年には36.5%に、神奈川県では23.9%から11.1ポイント上昇して35.0%になると見込まれており、今後、我が国の高齢化は、大都市圏を含めて全国的な広がりをみることとなる。
 以上のことから、今後約20年死亡数は増加の一途をたどり、死亡数自体が減少に転じた後も、高齢化の影響により、総人口における死亡率は依然として上昇を続けることが分かる。また、高齢化率を地域別に見たときも、大都市圏を中心にいずれも大幅な上昇をするため、地域に関係なく葬儀の取扱数が増えることが分かる。

葬儀の取扱件数の推移

 葬儀数の推移を「特定サービス産業動態統計調査」における取扱件数をから見ると、2000年(平成12年)に181,733件であった件数は、2016年(平成28年)には420,585件であり、約2.31倍となっており、大きく増加していることが分かる。

前述の通り、「特定サービス産業動態統計調査」は全ての事業所を調査しているわけではなく、売上高で7割をカバーすると目される事業所のみを対象としているため、取扱数も限られた範囲での推移を示している。

葬儀数は、死亡者数に連動しているものであり、年間死亡者数が130万人を超えている現在、取扱件数を大幅に超えた数で推移していると予測される。少子高齢化が続く現状を鑑みると、更に増大していくことが確実である

(出所)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」より筆者作成

葬儀1件当たりの単価の推移

 前段の通り、死亡数は年々増加しているため、葬儀の取扱数も同一に増加している。しかし、その一方で、葬儀単価は、年々下落傾向にある。「特定サービス産業動態統計調査」の調査から、売上高と取扱数を抜粋し、売上高を取扱数で割ることで平均単価を算出すると、以下のようになる。

(出所)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」より筆者作成

 平成12(2000)年に181,733件であった取扱数が、28(2016)年には420,585件と2.3倍になっている。一方で、葬儀単価については、平成12(2000)年の1,448,955円から、平成18(2006)年の1,521,453円までは上昇していたものの、その後下落を始め、平成24(2012)年の1,407,495円を底としたものの、その後もほぼ横ばい状態であり、平成28(2016)年は1,425,657円と言う結果になっている。
 尚、この「特定サービス産業動態統計調査」の売上高に含まれるのは、純粋な葬儀の売上としては、「式典進行・設営・葬具」「会場・室料」「飲食料(サービス料含む)」「生花」「返礼品販売」「その他」である。それ以外に「その他業務」からの売上についても、売上高に含まれている。具体的な「その他業務」とは、「運輸業務」「卸売・小売業務」「不動産業務」「飲食店・宿泊業務」「サービス業務(火葬業・結婚相談所・その他等)」等であり、企業によって「その他業務」の比重が全く異なることに注意が必要である。
 更に、別の調査として、財団法人日本消費者協会が「葬儀についてのアンケート調査」として3年ごとに発表しているデータによると、以下の通りである。

(出所) 一般財団法人日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」より筆者作成

 この「葬儀についてのアンケート調査」については、調査対象は葬儀社では無く、葬儀を経験した一般の生活者であるため、視点が大きく異なっている。この調査における「葬儀費用」には、『特定サービス産業動態統計調査』([1])にも含まれる「式典進行・設営・葬具」「会場・室料」「飲食料(サービス料含む)」「生花」「返礼品販売」だけでなく、葬儀の中で儀式を執り行う宗教者へのお礼も含まれており、葬儀社の売上高とは必ずしも対応していない。また、本来葬儀費用は、明細を確認し自ら支払う立場(施主)でなくては正確に把握することは難しいが、この調査は回答する生活者が必ずしも施主ではないため、正確な単価では無い数値が混在している可能性がある。

葬儀社の売上の推移

 経済産業省が発表する「特定サービス産業動態統計調査」によると、2016年の葬儀業の調査対象事業所は2291か所、対象者の合計売上高は599,610百万円である。
 「特定サービス産業動態統計調査」とは、経済産業省が調査対象とする特定のサービス産業の売上高等の経営動向を把握し、短期的な景気、雇用動向等の判断材料とするとともに産業構造政策、中小企業政策の推進及びサービス産業の健全な育成のための資料を得ることを目的に行っている調査である。毎月調査として昭和62年12月から実施されている。
 当初は、物品賃貸業、情報サービス業、広告業の3業種について、平成5年10月からは、クレジットカード業及びエンジニアリング業の2業種を追加し、5業種の調査を実施してきた。平成12年1月からは、映画館、劇場・興行場、興行団、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ボウリング場、遊園地・テーマパーク、パチンコホール、葬儀業、結婚式場業、外国語会話教室、カルチャーセンター、フィットネスクラブの12業種を加えて、合計17業種について調査するとともに、インターネットを活用した、オンラインでの申告を開始した。
 平成16年1月からは、学習塾を加えて、合計18業種について調査をしてきた。また、平成20年7月からは新規業種として、インターネット附随サービス業、映像情報制作・配給業、音楽ソフト制作業、新聞業、出版業、ポストプロダクション業、デザイン業、機械設計業、環境計量証明業、自動車賃貸業、機械等修理業の11業種を加えて、合計29業種について調査を実施してきた。サービス業関連統計の整備の一環として、平成26年12月分をもって、映画館、劇場・興行場、興行団、カルチャーセンター、音楽ソフト制作業、映像情報制作・配給業、新聞業、出版業、ポストプロダクション業、デザイン業、機械等修理業の10業種(10調査票)を調査終了し、平成27年1月からは合計19業種について調査を実施している。
 特定のサービス業に属する事業を営む企業(又は事業所)のうち当該業種の全国(又は特定の地域)の年間売上高の概ね7割程度をカバーする売上高上位の企業(又は事業所)を対象に毎年調査している。葬儀業は全国を調査範囲とし、事業所を対象に調査が行われている。

この調査において、葬儀業は以下のように定義されている。
 主として死体埋葬準備、葬儀執行を業務とする事業所(斎場、式場、ホールなど)をいい、葬儀執行のための祭壇等葬具の貸出し、通夜・葬儀式の進行・運営その他に関する便益の提供及びこれに付随する物品の給付など葬儀に係る一切のサービスを請負うことを業務としている事業所。
 地方公共団体の施設(斎場等)で、地方公共団体が直接管理・運営を行っている施設(斎場等)は調査対象にはならない。しかし、地方公共団体の施設(斎場等)であっても、管理・運営を委託している場合(「指定管理者制度」利用の施設)には、その業務を受託している事業所(企業)が調査の対象となる。
また、調査の対象外として挙げられている事業所の内、葬儀業にかかるのは以下である。

①法事・法要後の食事会等の飲食が目的な場所(飲食店、料理屋など)
②葬儀、法事・法要などの業務の取次・あっせんのみを行っている事業所
③冠婚葬祭互助会において、互助会員の会員募集のみを行う営業所
④霊きゅう自動車運送のみを行っている事業所
⑤納棺のみを行っている事業所
⑥火葬を業務とする事業所
⑦生・造花、神・仏具、墓地・墓石、香典返し等の販売・あっせんのみを行っている事業所
⑧棺、神・仏具、祭壇等葬具の製造・販売のみを行っている事業所
⑨宗教団体の礼拝の施設
 以上の条件の調査の為、葬儀業界全体の売上高及び事業所数ではないが、推移については一定である。

(出所)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」より筆者作成

 売上高・対象事業者数はほとんどの場合前年より上昇しており、2000年に263,323百万円だった売上高は、2016年には599,610百万円となり、2.27倍となっている。これに対し、対象事業者数は2000年に553件であったのに対し、2016年の調査では2291件に広がっており、4.14倍となっている。葬儀業界内の事業者数が急激に増えていることを示す変化と言える。
 一方で、葬儀業界で専門誌「月刊フューネラルビジネス」を発行している綜合ユニコム株式会社が2016年1月に発表した調査によると、2015年度の葬儀業界全体の売上高は、1,544,610百万円と報告されている。この調査については、対象事業者数は明記されていないものの、綜合ユニコム株式会社が、業界紙の編纂の中で培った葬儀業界内のネットワークを通じ、売上高3億円を超える事業者を対象としている。
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