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キプロスから来たムシュー・ドゥマニというアヴァンフォークトリオについて

先週は富山県南砺市で開催されている音楽フェス「SUKIYAKI MEETS THE WORLD 2022」(スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド)に手伝いに行っていた。この30年続くワールド・ミュージックのフェスの素晴らしさについては別記事にして書こうと思っているがそこに出演したムシュー・ドゥマニ(Monsieur Doumani)の音楽が素晴らしかったので今日はそれについて書いてみたいと思う。

そもそもキプロスってどこ?というわけで私も今回改めてキプロスについて知りました。ヨーロッパでもリゾート地でもあるようでnoteでもけっこう観光で行っている人が多いみたいです。

しかしながらキプロス共和国の成り立ち自体はちょっと複雑みたいで

キプロス共和国は人口119万人、国土面積約9,251平方キロメートルで、日本の四国の半分ほどの広さです。国民の8割がギリシャ系で、2割がトルコ系から構成され、言語の面でもギリシャ語、トルコ語、英語が話されています。国旗には黄金色のキプロス島が描かれているのですが、実はその島全体がキプロス領土というわけではありません。南北は別の国になっており、北部はトルコだけが国と認めるエリア(北キプロス)があるのが実態。

【キプロス編】Antonis Antoniou - "Kkismettin"【音楽世界周遊】
からの引用。

https://note.com/mxrk/n/n5fb0d2a372ad

さらに地中海音楽とかレンベーティカとかトルコ音楽とか色々あるそうでキプロスはヨーロッパと中東、アフリカの文化が古くからクロスオーバーする地域であったとのことでムッシュドゥマニはそんなキプロスの伝統民族音楽を継承/刷新するグループとのこと。地中海系といえばPFM後期やアフロディーテスチャイルドなどの70年代のプログレ由来ぐらいしか知らない私は前知識ない状態でメンバーの送り迎えやスタンバイのお手伝いをしていました。

ムシュー・ドゥマニのメンバーは以下の通り

アントニス・アントニオウ
Antonis Antoniou

(Tzouras, Vocals, Electronics)

デメトリス・ヤセミデス
Demetris Yiasemides

(Trombone, Flute)

アンディ・スコルディス
Andys Skordis

(Guitar, Loops, Backing Vocals)

ムシュー・ドゥマニ公式サイト

公式サイトの写真だといかつい感じだが本人たちはとても気のいいあんちゃんたちであります。今回のSUKIYAKI MEETSのコーディネートディレクターでもあるサラーム海上さんのツイートにええ感じのライブ写真を引用させていただきました。東京でのライブも終わって韓国焼き肉を待つメンバーが可愛い。

リーダーのアントニス・アントニオウはジュラ(ズーラス?)とリードヴォーカルを担当しほぼ全曲の作曲も担当。ちょっとスティーヴ・ヒレッジとかフランク・ザッパ風味のあるナイスガイ。ジュラというのはギリシャの小型弦楽器でギリシャ音楽のマンドリンみたいな音がこのジュラだそう。本来は3弦の副弦=で6弦らしいのだがアントニスは単弦化して電化、常にモジュレーションとエコーをかけたサウンドでサイケデリックな雰囲気を醸し出す。

アントニスのジュラを接写したナゴヤハローさんのツイートを引用。

アントニスはムシュー・ドゥマニと平行してトリオ・テッケ(Trio Tekke)というバンドもやっていて地中海ルーツのブルース・サイケ・ロック・バンドでそちらも面白い。また自身のソロアルバムもリリースしておりそちらは少しエレクトロニクスと地中海音楽をミックスしたようなアプローチでそれも面白いです。キプロスの音楽シーンの中心人物らしく今月には2枚目のソロアルバムもリリースするらしく今、非常にノリにのっているようだ。Bandcampにリリース情報があった。

トロンボーンとフルートを担当するデメトリス・ヤセミデスは長身のイケメンあんちゃんだ。彼だけヒゲがないので爽やか。身体もデカいが彼が扱うバストロンボーンも独特なサウンドでまるでベースのようにランニングしてバンドの低音部を受け持ったりまた分厚いサウンドでブラスセクションのようにリフを重ねたりアントニスのジュラとの対旋律を受け持ったり非常に複雑な役割を果たしている。トロンボーンならではの音程のグリッサンドとかも面白い。またデメトリスはフルートも上手くて使い分けて吹いているがフルートは伝統的なメランコリックな楽曲で使われることが多いようで独特の哀愁感がある。

そしてギターとルーパー、エレクトロニクスを扱うもう一人のヒゲ&ちょんまげヘアのアンディ・スコルディスは2019年から正式加入したメンバーだが彼の加入がムシュー・ドゥマニを大きく変化させたように思う。彼は基本的にアコースティックギターを演奏するのだがアコギにギンギンにディストーションかけて歪ませたりリフやボディを叩いて作ったビートをルーパーでコントロールしてドラムレスとは思えない多彩なバッキングやビートを魅せる。彼が参加したアルバム「ピソーリン(邦題「暗闇」」(2021)とそれ以前の初期3枚のアルバムは全く別のグループのようだ。初期3枚のアルバムの地中海伝統的なサウンドを主体としたアコースティックサウンドも素晴らしいがアンディが生み出すエレクトリックでヘヴィなループを主体にしてアントニスのジュラやデメトリスのトロンボーンが複雑に交差するスタイルがムシュー・ドゥマニの特徴であり世界のワールド・ミュージック・ファンが注目を集める彼らの魅力だと思う。アンディ氏はギタリストとしても相当なスゴ腕でツイッター上で今回の初来日を祝うバークリー音楽大学時代の学友もいたので米国でも音楽の修行や演奏を経験していた模様。

今回は一旦ここまで。続きは彼らの魅力となるライブについて書いていきます。

最後まで読んでいただいたありがとうございました。個人的な昔話ばかりで恐縮ですが楽しんでいただけたら幸いです。記事を気に入っていただけたら「スキ」を押していただけるととても励みになります!