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時は有限だと、腹を切られるまで気づかなかった

1年前、病気になり開腹手術をすることに
時間には限りがあるのだと身をもって知った

お腹の上あたりから恥骨まで切る
 場合によってはみぞおちからきる

全身麻酔
手術時間は8時間
場合によっては10時間

手術のための書類
同意書へのサインは気が滅入った

体を切るような手術も初めてだったし
「いつ退院できるかわからない」と言われた

先が見えない

退院しても病理の結果次第では再入院
抗がん剤か放射線どうするか
その時に治療方針を決めるということだった

結果が悪かったら
もしかして死ぬこともあるのかも

と思って終活もしてみた
(けど一ヵ月じゃとても終わらない…というか何も手につかない)

手術は高リスクだけど
それ自体、死ぬような手術ではない

でも不安

ネガティブ一直線

「大丈夫だよ」なんて言葉も
誰の声も耳に入らない

病室は4人部屋だったけど半個室だったので
タイミングをずらせば誰ともあわない

「入院期間は己と向き合う時間にしよう」

誰とも話す気分ではないし(当時、コロナ渦のため面会も中止)
自分の中に籠ることにした

そんな私の状況を変えたのは
同じ病室にいた母くらいの年齢の女性だった

「何の手術するん?」
歯ブラシをしていた時にふいに声をかけられた

うわっ捕まった…

観念して少し話をしていたら
同じ手術をしていたことが分かった

違いは術式
私が開腹手術だと告げると
「切腹するんかぁ!?」と叫びだした

頭の中を時代劇の切腹シーンが浮ぶ
切腹は死ぬやつだろがっ!(内心、怒)

でもそんなの表情に出さない

にこやかな顔で(※あくまでイメージ)
「そうですね~お腹を切る手術なんです」と言い換えるも

「切腹じゃぁぁぁ~ひょえぇぇぇぇぇ~」
叫びながらベットの上にひっくり返って転がりはじめたので
静かにその場を立ち去った

その時は【切腹=死】と連想してしまったのでとにかく嫌だったし、
籠っていたところを引きずりだされた感じで腹立たしかったのもある

でも気づくと不安は消えていた

そして
「もしかしたら手術も失敗するのでは?」と悶々としていた気持ちが

手術室へ向かう時には
「腹、切られてくるぜぃ♪」

180度 気持ちが変わっていた

手術後も身動きが取れない間、女性の元気な声が聞こえる

心の中でツッコむ日々

手術前も手術後もその女性に励まされていたのだと後から気づいた

手術の結果も病理の結果も良い方にいき、5年間の経過観察となる

そして1年経った

嬉しいことに手術前と同じような生活も送れるように
(走ったりするのは無理だけど)

「HIROさんは時間が無限にあるかのような時間の使い方をするね」
と言われるくらい時間の使い方はヘタなんだけれど

腹を切られたら時間への意識が変わった

時は有限なり

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