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先生の働き方は常識的か?とあるドキュメンタリー番組をキッカケに考える

前回、慶応高校野球部監督の講演から「常識を覆す」ことについて書いたのですが、ちょうど(?)録画していた番組の中に「常識か非常識か~教員の働き方~」というのがあり見てみました。

前回書いたのはこちら↓

こちらの番組、1年目の中学校教師、野方さんに密着しつつ「教員の働き方」の実態が垣間見れるもので、色々考えさせられることがありました。

とある1日は、7時過ぎには学校に来て、当日使うプリント類の印刷、生徒が出した課題のチェック(いずれも紙ベース・・・)をこなし、朝食はおにぎりで済ます。その後はホームルーム、担当教科の授業、給食と続いていき、放課後も合唱コンクールの指導、部活動の立ち合い、欠席している生徒の過程への連絡と、やることは沢山。退勤は21時(そして、この時間にも職員室に残っている人が複数いる・・・)。
この間休憩が取れているか分かりませんが、14時間近く働いていることになります。かなりハードです。

教員勤務実態調査から見えること

ここで文部科学省が行った「教員勤務実態調査(令和4年度)」から中学校の先生の「1週間あたりの総在校時間データ」を見てみます。

平成28年度も同様の調査を行っており、そちらと比較すると1週間あたり60時間超えの分布が減っており、教員の世界も働き方改革が進んでいるのかしら、と思うのですがこのデータを見るだけだと直感的に良いのかどうかわかりにくいので、もう少しかみ砕きます。

文部科学省「教員勤務実態調査」より1週間の総在校等時間の分布

東京都の条例では「学校職員の正規の勤務時間は、休憩時間を除き1週間について38時間45分とする」と定められています。
また、時間外については原則「ひと月について45時間」とされています。
なお、厚生労働省は労働時間が2~6か月平均で「月80時間」超えると健康障害のリスクが高まるとしています(いわゆる過労死ライン)。

で、先述のデータをどう見るかですが、月45時間を仮に4週間で割ると1週間あたり11.25時間。これを正規の勤務時間である38時間45分に足した50時間以上働いている場合は、時間外の原則を超過していることになります。

同様の計算で、過労死ラインを計算すると58時間45分以上が該当してきます。

それぞれの線を引いてみると先のデータが以下のようになります。
黄色い線から下が「原則超え」、赤い線から下が「過労死ライン超え」となります。

文部科学省「教員勤務実態調査」より1週間の総在校等時間の分布を筆者にて加工

それぞれのラインを超えている割合を集計してみると令和4年時点で「原則超え」が77%、「過労死ライン超え」が36.5%となります。
平成28年度と比べれば改善されていると言っても、これはマトモに思えません・・・。
(なお、この調査は特定の3か月の期間、調査票に記入する形での調査のため、データとしては完全ではありませんが、それにしても、という感じです)

部活動のあり方が見直されている

冒頭の番組に話を戻します。
番組の中では、とある先生が過労死してしまった事例が取り上げられています。
この方は運動部の顧問をしており、月の時間外は150時間。倒れる前は約50日の間で休日は1日のみだったそうです。

「教員勤務実態調査」によると、部活動の活動日数が多いほど在校等時間が長くなっていることもわかります。

引用元:文部科学省「教員勤務実態調査」(令和4年度)

教育現場側も部活動のあり方を変えようと動いており、それが「部活動の地域連携・地域移行」です。
従来学校単位で閉じていた活動に、地域の人材に加わってもらったり、生徒達が地域のクラブ活動に参加することが想定されており、まずは令和5年から休日の部活動について地域連携・地域移行をトライアルしているそうです。
この動きは、少子化(学校単位で部活が成り立たない)も要因としてありますが、先生の負荷を下げるうえでも意義がありそうです。

引用元:スポーツ庁Web広報マガジン

冒頭の野方さんも、部活動の指導については、別の指導員のサポートを受けているそうです。
先生の中には、部活動の指導を好きでやっている方もいらっしゃるようですが、必要に応じてサポートを受けられる体制をつくっておくのは、部活動の持続可能にするためにも重要なことだと考えます。
(私立学校の話になりますが、前回の記事で取り上げた慶応の森林監督は、野球部OBの大学生を指導員として手伝ってもらっているそうです)

まだまだ変えられる要素がありそうな教育現場

ということで少しづつ変わっていっている教育現場。
それでも、この番組のタイトルである「常識か非常識か」という点では、常識的には思えない働き方だなあ、と感じます。

番組冒頭の一幕にあった紙ベースでのやり取りや、保護者への電話連絡など、まだまだ変えられる要素はありそうです。

部活のあり方もそうですが、教育現場を担っていただいている先生たちのことも理解して「学校でそんなこともやってくれないのか!」みたいなモンペアにならぬよう、変わろうとしている教育現場を保護者側からも支えられればと思います。

ググってみると、紹介した番組はyoutubeで配信されてますので、ご興味ある方はご覧になってください。では今回は以上です!

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