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ようやく涼しさを感じた日の、おはぎ

暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったものだと思う。まだまだ気温は高いとは思うけれど、彼岸の中日を過ぎたら空気は一気に秋めいて涼しくなった。

そんなお彼岸には、やはりおはぎが食べたくなる。

春のお彼岸には沖田精米でぼた餅を購入した。秋もそちらにしようかと思っていたのだけど、noteでフォローしている方の記事を見ていたら、ちょっと気になってきたお店があって、今回はそちらに。

というわけでやってきたのは、鶴見にある「こめ蔵」。ここもおはぎで有名なお店らしく、開店10分後くらいに到着したらすでに15人ほどの列が出来ていた。とはいえ、店頭の購入だけだし、店員さんがテキパキと注文と会計を済ませてくれるので、あまり待たずに購入できた。

おはぎはつぶあんとこしあんがあり、その他には赤飯といなり寿司。和菓子屋となっているけれど、作っているのはそれだけなのか、並ぶメニューはそれだけだった。

つぶあんとこしあんを両方食べてみたかったのでどちらも入れてもらって、それといなり寿司も美味しいとのことでこちらも購入してみた。

おはぎは見るからに大ぶり。実家のもこれくらいだった気がする。スーパーのとかはもっと小ぶりで、あれを見るたびになんだかちんまりしているなあ、と思っていたのだけど、やはりこれくらいの大きさがないとおはぎって感じがしない。

重さを測ってみたら150gもあった。なかなかの重量級。

まずはつぶあんから食べてみる。

ん、塩気がちょっと強い。甘さは、売り物としては普通くらいだと思うけれど。そしてあんこが結構多め。もち米はやや少なめかな? あ、でもちょうどいいもっちり具合かも。

春の沖田精米と比べると、ややメリハリの効いた味な気がする。

こしあんの方も基本的には同じではあるのだけど、つぶあんと比べるとやっぱりこしあんは滑らかさが違って、結構印象が変わるものだなあ、と。つぶあんもかなり潰してあって、半殺し、というよりは7分殺しくらいになっているけれど、それでも結構違って面白い。

どうでもいいけど、あんこの「半殺し」って言い方、ずいぶん物騒だな、と思う。どうしてこういう言い方になったものやら。どっちかというと「潰す」だと思うのだけど、「半潰し」ではなんとなく語呂が悪かったんだろうか。

「潰す」っていうとこれまた違和感があるのが、「牛を潰す」とかの屠殺するという意味。昔っからこの言いまわしにはなんとなく違和感があって、「潰す」というと「ぐちゃっ」とか「ぺたんこ」とかいうようなオノマトペがつくようなイメージをもっていて、どうにもそれが動物に対しては適切ではない気がしてしまう。普通に「殺す」と言ってくれたほうがまだイメージしやすいんだけど、というのが子供の頃から思っていたこと。

話がぜんぜん違う方向にいってしまった。しかもなんだか物騒すぎた。

気を取り直して、おいなりさん。
いなり寿司はおはぎと比べると小ぶり。なのだけど、食べてみるとごはんがみっちりしていて意外と重い。そしてかなり甘めではっきりした味付け。実家のいなり寿司は、ごはんは割とほろほろとした感じでぎゅっとはしていなかったので、こういうタイプのいなり寿司は初めてかも。

甘いおはぎと甘じょっぱいいなり寿司、そして、ちょうど以前に作ってあった自家製のガリ、あとは緑茶。甘い、渋い、甘じょっぱい、スッキリ。この組み合わせ、どこまでも延々とループできる……。

おはぎ2個においなりさん2個は、さすがにちょっと食べ過ぎだったか。おかずもあったので、かなりお腹いっぱいな状態に。

たくさん食べても大丈夫なくらいには運動していたのだけど、それでもこんなに食べて大丈夫かな、という感じ。いやでもそれくらい美味しかったことは確か。

ただ、おはぎはちょっとあんこが多すぎたかな。あんこをもう少し減らしてくれた方が、ごはんとの割合が丁度いい気がする。途中でちょっと甘さが気になってしまって、あんこを少し剥ぎ取ろうかと思ってしまった(やらなかったけど)。

と思ったところで、先日読んだ平野紗季子さんの「ショートケーキは背中から」を思い出した。なるほどそうか、こういう感覚なのかと納得した。

平野さんは「どら焼きのあんこを剥がして食べる」らしい。そんな告白めいた内容の、でも切実な想いをうまくまとめきったエッセイが載っていた。自分はどら焼きではそうしたいと思ったことは無いけれど、なるほど確かに分かる。思えば、売り物のおはぎではそう思うことが何度もあった気がする。実家のおはぎは、もっとあんこの層は薄めだった。あれがちょうど良いバランスだと感じていたのか。

ほんのちょっとのバランスで印象が大きく変わる。多分、砂糖と塩の加減や、あんこの潰し方の加減でも結構変わってくるのだろう。シンプルな構成だからこそ、その違いがはっきりと感じられるのかもしれない。どっちが上とか下とかではなく、その違いがありありと出てきていることが面白い。

奥が深いなあ、おはぎ。

ごちそうさまでした。

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