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星野リゾートのマーケター牧場を作る④牧場らしさを作る


③の続きです。

つい先日まで「ゴルフ場」であった土地を「ファームエリア」として、お客様を迎える事が決まっている中、OPENまでの数日間で何が出来るかを考えます。
という事で、急ピッチで進めていきます。

目指すは、本格的な酪農業を軸とした6次産業化ですが、酪農はある程度の設備が必要になります。(乳牛、牛舎、搾乳施設。6次産業化には乳処理施設、乳製品製造施設、エリア内配送手段etc)
が、この時点では影も形も無いわけです

まず、1年目(2017年)の現実的なターゲットは欲張らず"ファーム"と呼んでも差し支えない事、になります。

取り急ぎ海野さんに、知り合いの牧場に相談いただき、"育成牛"という搾乳をしない若牛を夏の間数頭貸していただく事になりました。
これで取り合えずトマムに牛さんが来る事に。

でも、約100haあるファームエリアを埋めるにはそれだけでは圧倒的に足りない。。。

という事で、社内で色々相談する中で、トマム近隣で個人で運営するペンションをベースに乗馬プログラムを行っている「カウボーイ」がいる事を聞きつけます。

ダメ元で電話し簡単な自己紹介と事の経緯を説明し「旧ゴルフ場エリアで乗馬プログラムをやってみませんか?」と切り出したら、拍子抜けするくらいあっさりOK。

羊にヤギ、牧羊犬も数頭いるという事なので「みんなまとめて来てください」と言ったら本当に数日後来ました。


表紙から再掲の春に生まれた仔羊。思わずキュン死しそうになった。
ヤギがやって来た。(まさかの徒歩)
芝に馬が映える。乗馬プログラムでも大活躍。


しばらくして待ちに待った牛も合流
若牛5頭。はじめは慣れない環境にキョロキョロ。
しばらくすると、「いい所じゃん」と気づいてくれた様子。

そんなこんなで、ファームエリアも少し賑やかになってきました。
嬉しかったのは、近所の保育所が噂を聞きつけてバスに乗ってみんなで家族遠足に来てくれたことです。

ゴルフ場だったら、子供たちは遠足にこの場には絶対来ない訳で、その子達が動物たちを見て、走り回り、お弁当食べて、とその光景を目の当たりにするだけでグッときました。(ちょうど子供が同年代だった、というのもありました。)

これらの"仲間"のお陰でファーム化初年度から賑わいが出来ました。

ファームエリアの目立つ場所に作った「牧草ベッド」が、"映えスポット"としてSNSや各種媒体で取り上げていただけたのも大きかったです。

当時の牧草ベッド。今は更に進化しています。

キャッシュフローの面では、ゴルフ場時代の資産である「カート」を有料で貸し出し、広いファームエリアを散策できる様にしたり、「ガイド付きの動物見学ツアー」を販売したり、夜には鹿やウサギなど野生動物との遭遇率が上がるので「ナイトサファリツアー」を実施したり、アクティビティーチームが色々なプログラムを立ち上げていき、ゴルフ場時代に負けない収益源を作っていきます。


ただ、私個人としては本当にやりたい事は本格的な農業(酪農)であり6次産業であり、こういうのでは無い、という思いが私の中に少なからずありました。

「早く本物になりたい。」

と願っていたのですが、今になってみると"本物っていったい何だろう?"って思います。

いつ頃までか"観光牧場"と言われる事に抵抗があったのですが、
"観光"×"牧場"なんて、まさにファーム星野の活動そのものだな、と今では思えます。

生産活動の中に、食べる楽しみだけでなく、癒しや憩いの滞在空間があり、学びや気づきがある体験やプログラムを提供したい、という思いは今も昔も変わりません。
私たちが本当に作りたいのは、牛乳やチーズではなく、旅の目的や思い出だったりします。

引き続きトマムに訪れる方が楽しめる空間作りを継続しながら、本格的な生産活動の準備を進めていく事になります。

続きは次回。

===
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
当時はルールもブランドも何もなく、一番自由で「とりあえずやってみるか」の精神でエネルギッシュに動き回っていたまさにスタートアップ期でした。
あの頃に一緒に動いていたメンバーは未だに"戦友"とも言える同僚を超えた特別な存在です。

写真は前述の「カウボーイ」こと本田さん。
当時から今でもファームエリア内の人気プログラム「体験乗馬」を提供してくれています。

仔牛vs馬&本田さん


トマムにお越しの際には、是非馬にも会いに来てください。


もうすぐ、8年目のシーズンがはじまると思うと気が引き締まります。
今はしばしの準備期間中です。



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