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ニンジャの話 その37 テンセントビデオ

2019年。東京オリンピックを翌年に控えインバウンド熱は大きく高まっていました。NINJAにお泊まりになるお客様の8割以上が外国人のお客様でした。そんな中、またしても一本のメールを受け取ります。2019年の4月のことです。今回は中国からのメールでした。取材させてほしいとの内容です。丁寧な英文で書かれたメールでした。

Ninjaを初めて3年。母の事務能力は飛躍的な進化を遂げていました。Booking.comやAirbnbでのやり取りはほぼ全て彼女がPCを使ってこなしていました。メールのチェックもゲストとのやり取りも彼女がメインです。私はNinjaのカスタマーサポート業務からはほぼ離れていました。イレギュラーな作業は発生する時にだけ母からのリクエストを受けお手伝いする形になっていました。

英文でくる取材メールはイレギュラー扱いです。私が読んで返信します。しかし滅多にありません。私はそのためほとんどメールを読んでおらずこれを見逃していたのです。その後何通か同じ方からメールをいただいていたようでした。それでも気づかずにいたらついに母から、「何通も同じ方からメールが来てるから返事してよ!」とお叱りを受けました「やっちゃった、、、」とバツが悪く返信遅れの謝罪メールをお送りしました。また取材内容についても詳しく教えてほしいとお願いしました。

中国はITの分野ではかなり自国企業優先の発展をしているそうです。検索エンジンで一番利用されているのはGoogleではなくBaidu。ネットショッピングはAmazonではなくAlibabaグループ。メッセンジャーはWhatAppではなくWeChatです。動画エンターテイメントもNetflixではなくTencentが強いそうです。そしてこのメール、そのTencent系の動画サービス Tencent Videoのプロダクションの方からでした。

それまでTencent Videoのことは全く知らなかった私。早速調べました。これまたスゴイ動画配信プラットフォームであることがわかりました。アクティブユーザーが約9億人、アプリダウンロードが4億近く、有料サブスク会員が約1億人中国最大級のインターネット動画サービスでその65%が自社制作の番組です。わかりやすく言うとまさしく中国のNetflixでした。

そのテンセントビデオがなぜNinjaを取材するのでしょうか?日本の旅番組作るのなら北海道のグルメとか京都の寺社仏閣とかあるだろうに。お伺いすると意外な答えが返ってきました。

「2017年にAirbnb Magazineに掲載された The Ninja Mansion Experiment の記事を読みました。認知症のお父様を介護しながらNinjaを運営するお母様の話を聞いて感動しました。私たちは「奇遇人生」と言うドキュメンタリーを作成しています。グルメや観光ガイドの番組ではありません。旅を通して知りうる世界の美しい物語を映像にして視聴者に送り出したいと思っています」

またもやConnecting the Dotsでした。点と点はつなげようと思って繋がるものではありません。ジョブスさんもおっしゃっていた通り、繋がる前は何がつながるかはわかりません。繋がった後に初めて何がきっかけだったのかがわかります。今回もまさにこのようなお話だったのです。

奇遇人生という番組についても詳しく知っているわけではありませんが、私はこのような縁はとても大事にすることを心がけています。「奇遇」という言葉のもつ“connecting the dots” 感もいいなぁと思いました。担当者の方によれば5月に日本にロケハンティングに行く予定だとのこと。母からの催促がなければこのタイミングも逃していたところでした。親の忠告はちゃんと聞いた方が良いです笑。5月の来日の際にNinjaでお会いすることを約束してメールを終えました。

そして2019年の5月、番組ディレクターのStevenさんがNinjaにいらっしゃいました。

続く

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