見出し画像

力を交換することで 成り立つ生活~2024年2月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、 印象に残った本 を 記事にしている。2月は2冊。


1 リラの花咲くけものみち  藤岡陽子

父の再婚相手とうまくいかず、不登校になった岸本聡里さとり
中3の時、愛犬パールと一緒に祖母に引き取られ、獣医師をめざすようになる。

北海道の大学に進学した聡里さとりは、寮生活、動物病院でのアルバイト、臨床実習など様々なことを通して一歩ずつ目標に近づいていく。

獣医さんの仕事は、全く未知の世界。
牛の直腸検査、段角(牛の角を切る処置)、出産など初めて知ったことがたくさんで、声に出さないまでも、口の形が何度も「へえええええええええ」「ほおおおお」になっていた。

「ナナカマドの花言葉」「ハリエンジュの約束」「ラベンダーの真意」と花の名前のついた8つの章からなる。
章ごとに、聡里さとりが、だんだん人としても、獣医としても成長していく様子が心地よい。

ただ、母牛を守るために、うまれ出てくる子牛を殺してしまうという描写には、かなり衝撃をうけた。これは、獣医になるのをやめたくなるのもわかる気がする。

なんといっても、北海道それも江別が舞台で、自然もふんだんに盛り込まれているのが嬉しかった。

昔、酪農地域に住んでいた時のこと。お願いして乳牛を飼っている知り合いにちょっとだけ仕事の体験させてもらった。 

牛舎に一歩足を踏み入れる。ずらっと何十頭もの牛がいっせいにこちらを向く。思わず後ずさり。
「牛って好奇心が強くて、知らない人が入ってくると見るのよ」と教えてもらった。

飼料をいれているサイロ(?)の中で、フォークを使ってわらを出す仕事をしたのだと思う。 

予想通り、ちょっとやっただけで すぐばててしまい 何の役にもたたず、おやつの菓子パンをごちそうになって帰ってきただけの体験だった。  

もう、30年以上も前のことなのに、突然よみがえってきた。  
こうして、記憶の奥底に眠っていたものが おもいがけず表に出てくることがあるのも、読書の楽しさの一つ。


2 水車小屋のネネ  津村 記久子

親からのがれ、二人で暮らしていくことにした18歳の理佐と8歳の律の姉妹。
二人が暮らし始めたところには、しゃべる鳥<ネネ>がいた。
助け合い力を交換し合う人々の40年にわたる物語。

最初の数ページを読んで、
「姉・理佐は、1981年に高校卒業。うん?私とほぼ同い年だ」
と気づく。

家を出て、自分で就職先を探し、小4の妹とふたりで暮らす。働きながら、妹を小学校に通わせる。
家庭の事情で、急いで大人にならなければなかったとはいえ、なんと理佐の、しっかりしてることか。
これに比べて私の18歳のころといったら・・・う~ん、「のんべんだらり」としか言えない暮らしだった。

理佐が就職したのは、そば屋。その店は、そばの実を水車で挽いていた。その作業を手伝っていたのが、「ヨウム」という鳥。名前はネネ。
理佐には、お店での仕事の他に「ネネの世話」という大事な仕事があった。

ヨウムとは、初めて知った鳥。
オウムのように、言葉をしゃべるのだが、ただ人の言葉を真似するだけでなく、会話がなりたつというのだ。

読んでる途中でYouTubeを検索してみた。
ほんとだ!会話してる! すごい!賢い!

津村紀久子さんの水車小屋のネネに関するインタビュー記事(新刊.jp)に、こういう一文があった

一方的な親切ではなくて 助け合い、力を交換することで成り立つ生活 を書けたらいいなと思っていました。

なるほど、このお話は、おそば屋さんが 姉妹に職場と住居を提供しただけの一方通行の親切という状況ではない。
おそば屋さんにとっても、理佐が、一生懸命、そば屋の仕事やネネの世話をすることで、とても助かっている。

他にも、姉妹に親切にする人がたくさんでてくるが、地域の行事に参加して、得意な裁縫の技術で役立っている理佐も描かれている。

出てくる人の多くが、「助け合い、力を交換」して、日々暮らしていること。そして、それが時代とともに受け継がれていること。

二人の姉妹の成長だけでなく、こういうことも描かれているからこそ、読後感がとてもよいのだと気がついた。

最近、読書系のポッドキャストを聞くことを覚えた。
いつでも好きな時間に聞けること、短時間で聞けることがとてもいい。

ポッドキャストと言えば、青山美智子さんの「月の立つ林で」。あの本を読んだとき、ポッドキャストって面白そうだなあと思ったのだが、思っただけで終わっていた。

AmazonMusicで5~6つの番組をお気に入り登録している。
よく聞くのは、「次に読む本、これいかが?」や「好書好日」。
(「次に読む本~」はポプラ社の番組。MCのクマシロさんがとってもいい声で、この声を聞くだけで嬉しい)

新しい本を知りたくて聞いているのだが、読んだことある本が取り上げられているのも かなり面白いものだ。
読んでから日がたっているのもあって、すでに覚えていず、あらすじを聞いて「ええこんな話だったっけ?」と思うことはしょっちゅうで、「読み直してみようかなあ」とも思ってしまう。
こうして、また読みたい本は増えていく。



読んでいただき ありがとうございました。