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【まいぶっく04】壮大な自由研究~ウエズレーの国

「夏休みの宿題」、私にとってそれは、「最後の日に泣きながらとりくむ」ものだった。

小学4年生の夏休み。もう夜の10時になるのに工作ができあがらない。箱で自動車を作っていたのだが、タイヤがうまくつけられない。竹ひごに厚紙を丸く切ったタイヤをつけたいのに、何度やってもひしゃげてしまう。自動車本体もひしゃげている。

「今までの24日間(※)、何をやっていたんだろう・・」と鼻水をすすりながら思ってもあとの祭り。親に「もう寝なさい!」と怒られ、万事休す。

始業式、半分つぶれたその「自動車もどき」を持って学校へ。担任の先生に「もっと他のものは、できなかったのか。」とあきれたように言われたのを今でも思い出す。

* * * * *

ウエズレーが取り組んだ夏休みの宿題の自由研究は、私みたいな一夜づけではない。次元が違う。なんてったって 「自分だけの文明」を つくることなのだから。  ぶ、ぶ、文明って何? メソポタミア? インダス?

ウエズレーは、まず庭をたがやす。
学校で「文明がさかえるためには、いい作物が必要」と習っていたから。

その畑には、だれも見たこともない新しい作物が育つ。
チューリップを巨大にしたような赤い花、ザクロみたいな丸い実。

実からはジュース、根っこもおいしい。繊維から服や帽子を作り、種からは油・・。この作物のありとあらゆるところを使って、ウエズレーの文明は発展していく。

そして、自分の庭を「ウエズランディア」(ウエズレーの国)と名づける。

「他の子とは違っている。」ということで仲間はずれだったウエズレー。
「あの子ったら、かわいそう。いつもひとりだけ、はみだしてる」と心配していた両親も、文明が進むにつれ、息子がかわったのに気づく。
「あんなにしあわせそうな顔、はじめてみたわ。」

文明づくりの仕上げは?
そう「文字」だ。
「ウエズレー語」でウエズランディアの歴史を執筆して自由研究の完成。

この絵本、最初の数ページですぐウエズレーが発明好き、工夫好きなのが見てとれる。
コップ、ジュースしぼり機など手作りの道具や機械もたくさん登場。
いろいろな生き物たちも、あちらこちらに顔を出す。(となりのおじさんも、ひんぱんに顔を出している)
絵だけ見ていてもいろいろな発見ができる。

絵本の見返しには、「ウエズレー語」と思われる文字がかいてある。
きっと、これは数字だな・・・・他はなんてかいてあるのだろう。読んでみたいものだ。

 ※私の地域の夏休みは25日間でした。

ウエズレーの国  (A)
 ポール・フライシュマン作
 ケビン・ホークス絵  千葉茂樹訳
 あすなろ書房  1999年


読んでいただき ありがとうございました。