【コラム】カウンセリングのセッションではどのような応答が行われるのか その1
カウンセラーと相談者は実際にはどのようなやりとりが行われるのでしょうか。
カウンセリングを受けてみたいなと一度は考えたことがある方もいると思いますが、でも具体的にどんなことが行われるのかよく分からないからやめておこうとなった方もいると思います。
カウンセリングセッションにおいては、相談者は何かしらのお悩みをお持ちの状態なので、まずはそのお話を聞くことからはじまります。
カウンセラーは傾聴の専門家でありますので、特に否定することも、途中でアドバイスすることもなく、丁寧に興味を持って、積極的に相談者の方のお話をお聞きします。
そうして共感的な傾聴を行う中で、相談者の方は少しずつ気持ちがほぐれていくようになります。徐々に安心してご自身の深いお話もできるようになっていきます。
具体的に気楽にお悩みを相談できるような状態にまでなると、カンセラーと問題を共有できる状態になります。
カウンセラーの最初の問いかけ
お互いに心が落ち着き、気持ちをある程度、重ねられたなという感覚を得られるくらいの状態になったら、カウンセラー側から少しずつ問いかけを行います。この時の質問はカウンセラー側の受け取っている感覚が、相談者の方とズレていないか確認をするためのものです。
これを「伝え返し」といいます。ですから、新しいことを考えたり、いいにくいことを引き出すような、相談者の方にとって思考負荷のかかるようなものではありません。
カウンセラーは「私は先ほどのお話を〇〇のように解釈しましたが合っていますか?」といった、双方の感じている痛みのポイントを正く一つに合わせていく問いかけです。
カウンセラーがどうのような支援ができるかを判断する問いかけ
カウンセラーが相談者のお悩み、感じている痛みを可能な限り正確に需要し、双方が一致した感覚を手に入れてから、ようやく次のフェーズに移ります。
その状態にないと傷ついている興奮状態の相談者が、初対面のカウンセラーにリラックスして、冷静な思考で会話することなどできないからです。
心理的な安全性が担保されたところで、お悩みのきっかけとなった出来事について聞いていきます。
「どんな気持ちだったか」「どんな考えが浮かんだか」「どんなことが起きると想像したか」などを語ってもらいます。職場で起きた「感情的な言い合い」などもでてきます。
本来は思い出すことも嫌な出来事ですが、共通の知人もいない、利害関係もない、アドバイスもしないカウンセラーだからこそ、正解も不正解もなく、良い格好をする必要もなく、その時に感じたそのままを言葉にしていくことで相談者自身が自己内省を行うことができ、これだけでも悩みの整理ができます。
それと同時にカウンセラーは相談者と同じ痛みを感じながら、冷静な思考で相談者の方を観察します。そして相談者の話の中にある思い込みや思考のくせを受け取っていきます。
カウンセラーが集める相談者の情報とは
カウンセラーは相談者の話す一つの方向からだけでなく、語られない角度からも質問を行うことで、より相談者の思考の中に起きていることを引き出していきます。
どのような思考のクセがあるのか、どのような行動パターンがあるのか、どういう時に感情が動くのか、どうした生理的な特性があるのかなどです。
生理的特性とは、緊張しやすいとか、イライラしやすいといったことです。
こうした方法で相談者の方の個性を客観的に取り出すことで、カウンセラーと相談者が二人で「こんな人なんだね」と確認し合うことができます。
良いとも悪いともなく、こうして一致した感覚を持つ二人が、相談者がどういう人かを確かめていきます。
物理的には二人ですが、その間にいるもう一人を見つめているような視点でコミュニケーションが取れると良い空間作りができていると言えます。
こうして相談者が感情と行動を区別して捉えられるようになるところまでが、まずセッション応答の初期段階で行われることです。
相談者の方のコンディションにもよりますが、わりと強めに傷ついていらっしゃる方の場合は、2回目か3回目のセッションまで、カウンセラー側はお話をお聞きすることに徹するようなケースもあります。
カウンセリングは人間関係であり、アドバイザリーサービスではありません。解決策を渡すコンサルティング契約ではないので、方法論を求めたくなるお気持ちは分かりますが、HOW?の質問が相談者から出たときには「答えを急ぐのではなく、何があなたをこうさせているのかというWHATに注目してみましょう」とお伝えします。
現在のお悩みを軽くして生きやすくなっていただくだけでなく、この先の未来においても自らの力で、内省し、自分を俯瞰し、思考のエラーに気が付く人になっていただくように、カウンセラーはどんなに良いアドバイスが思いついたとしても、いきなりそれを相談者に渡すのではなく、相談者が自分自身でたどり着いたという感覚を得られるまで、プロセスを大切に伴走していきます。
続きは次回へ。
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