「経営統合」

なんだか最近にわかに投資単位界隈が盛り上がっており(東証リリース報道①報道②等ご参照)、タイミング的に自らに何かのインサイダー疑惑が浮上するのではと勝手に怖がっている、ひろです。

ネタがあまりないので、だいぶ更新が遅くなりました。excel系を今風にupdateしてもいいかな、とはちょっと思っています。

さて、今回は掲題の通り、単発の話題として、「経営統合」について取り上げたいと思います。
以前にストラクチャをまとめた時にある程度言及したようにも思いますが、今回はストラクチャからではなく「経営統合」という点で切ってみよう、というところです。

「経営統合」とは

そもそも「経営統合」とは何でしょうか。
そう思って改めてGoogleに聞いてみると、「合併と経営統合の違いとは - 事業承継」とか、「M&Aの経営統合と合併の違い、メリット、事例を図解で解説」とか、何だかいろいろと出てきました。
中身を見てみると、どうも「(共同)株式移転」を「経営統合」と定義しており、「合併」とは違う、といった説明がなされています。しかも、非常に多くの記事が見つかり、goo辞書等でもそのような定義が採用されています。

う~ん…これはだいぶひろの認識や考え方とは違います

「経営統合」は文字通り「経営」を「統合」するという意味しかないので、「株式移転」よりも明らかに意味範囲が広いと思っています。
結局のところ、何を人々は「経営統合」と呼んでいるのか、というところから帰納法的に考えるより他にないと思いますが、「株式移転が一番多い、または目立つ(なんとなく? 統計を取ったことはないです)」ということに過ぎないのではないか、という所感です。

具体例として、2022年9月28日とごく最近に公表された、八十二銀行長野銀行の「経営統合」を見てみましょう(リリース報道)。
この「経営統合」ですが、手法は八十二銀行を完全親会社、長野銀行を完全子会社とする「株式交換」として、更に、「株式交換の効力発生日から約2年後を目処に合併することを基本的な方針」としているとのことです。
どうもまずは独立の会社体として互いを維持しつつ、様子を見つつ完全に一体とする、という考えのようですね(許認可等も関係あるかも知れません)。

「経営統合とは株式移転」派の人は、この発表を見たら「これは経営統合ではない。嘘をリリースに書くな!」とか言い出すんでしょうか…。「主張が不自然極まりない」とひろは思います。「経営は統合されるのではないでしょうか?」というのが素直な感想です。
ただ、「嘘をリリースに書くな!」と言っていただけるなら、それはそれで面白そうなので、個人的にはその派閥の方々には是非とも争ってほしいです。

ついでにもう一例、かなり簡単に見つかったので紹介しておきますね。
2022年11月14日に、Jトラストミライノベートとの「経営統合」を公表しています(リリース)。手法はJトラストを吸収合併存続会社、ミライノベートを吸収合併消滅会社、とする「(吸収)合併」とのことです。

そちらの派閥の方々には、こちらにも是非とも「経営統合とは株式移転以外にない! 嘘をリリースに書くな!」と突撃してほしいものです。

まあ争いや突撃というのは言わずもがなで冗談なのですが、このように、「経営統合」の現実的な用語の範囲は決して「株式移転」に限るものではなく、「経営」が「統合」されるものを広範に指しているということは明らかと思います。辞書は、現実から乖離した記載を早晩に見直すべきでしょうね。株式移転に限定する有力な根拠がある人は、是非とも教えて下さい(一緒に「リリースに嘘を書くな!」と言い回りましょう)。

「経営統合」スキームの簡便比較

「経営」が「統合」されるなら広範、とは言いましたが、現実的にはおそらく①合併②株式交換③株式移転、あたりを指すことが非常に多いと思います。
なので、いったんその3つに限定して簡単に比較すると、以下のようになると思います。

①合併

やはり他と比べると「1社になる」ということに尽きるかと思います。
統合効果(シナジー)を最大限追及する場合にはこの手法が選択されることになるかと思います。
ただし、「1社にする」ということから、統合の実務作業がどうしても大変です(経営陣、幹部人事、部門の統廃合、人事制度の統一、ITシステムの統一、また、カルチャー等)。
また、許認可について、承継ができないものであれば再取得が必要となります。

②株式交換

これは株式移転が「持株会社傘下の並列の子会社」になることと比べると、「親子関係」が明白である点が、特に株式移転との違いになると思います。
仮に「対等の精神」を謳ったとしても、やはり「親子」という上下関係が存在します。
これは良し悪しですが、たとえば子会社側の従業員のモチベーション低下、なんてことはありえるところでしょう。ただ、その分親会社側の強いリーダーシップを発揮しやすく機敏な意思決定が可能、ということもあるかも知れません。
合併との比較で言えば、1社になるのではなく互いに独立して存在し続けるので、その分だけ統合効果(シナジー)には限度があるものの、他方で実務的な負担は減る、ということになると思います。
上記の八十二銀行と長野銀行の経営統合のように、「株式交換しておいて2年後に合併」というのは、許認可もあるかも知れませんが、大変な統合作業のためにしっかりと時間がとれる(銀行だとシステムの問題等も大きそうです)、ということも加味しているように思います。

③株式移転

株式交換との比較で言えば、やはり「持株会社傘下の並列の子会社」になるということで、形式的な「対等」が維持されることが大きいでしょう(ただし、「現実的な力関係」は当然にありえます)。
「対等」なので互いに心理的にも受け入れやすくなりますね。ただ、逆に親子関係が明白ではないので、意思決定等での機動性に欠く可能性は出てくるかと思います(持株会社の役員構成等で「現実的な力関係」を反映する等で対応が可能といえば可能ですが)。
統合効果については、株式交換と同様のことが言えるかと思います。

なお、上では触れませんでしたが、青森銀行みちのく銀行の「経営統合」では、「株式移転」を手法として選択しつつも、2年後には持株会社の下での「合併」が基本方針とされています(リリース)。八十二銀行・長野銀行とは、当初の手法が異なりますね。
「経営統合とは株式移転」派閥には、ここで「当初は経営統合と言えるが、合併によって経営統合とは言えなくなる。持株会社が維持されるとしても、少なくとも経営統合したと言い続けられるかは疑わしい。経営統合をしたが、後に経営統合を取りやめた事例となる。」といった主張をしてほしいところです。
(「あくまでも『経営統合』という範疇で株式移転したり合併したりしている」と物事をとらえた方が、少なくともひろはわかりやすいです。ひろは上記の太字のように理解するメリットを全く感じませんが、その派閥の人達はどのように物事の理解が促進されているのでしょうか? 太字レベルで主張するなら一貫性は認めますが、一貫性に必ず意味があるわけでもありません。)


さて、恐らく各手法の差異については、法的プロセス等を含めたりしたらもっといろいろ出てくるかと思いますが、いったんここまでとしておきます。

今年の更新は本記事で終了にしたいと思います。
だいぶ早いですが、皆様よい年末をお過ごしください。

ではではまた来年。

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