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食べることは、生きること(仮想現実)

そういうCMを見ては
泣いていた時期があった。

冬弓は、ある時期から、
ご飯を作ることを拒否してたから。
 
健康オタク父が倒れた頃、
冬弓の全てが崩れた。
ま、人のせいにしては
いけないのだけれど。
 
でも、先日、別れた彼氏と、
語りあった。

「なんで、冬弓を選ばなかったの?」

「お前、メシを作ろうともしなかっただろ」
 
その一言で、ガツンときた。
 
運命の人を、
そんな間抜けなタイミングで、
逃してしまっていたなんて。
 
ま、それだけが原因じゃ
ないだろうけど。

そんなわけで、冬弓は、
部屋も大模様替えをし、
キッチン・スペースを作り、
古い炊飯器とコーヒーメーカーを
棚から取り出し、
再度使用してみた。
 
そしたら、動くじゃない、
全部!

調味料をそろえなおし、
食材を買ってくると、
自動的に、昔作っていた
料理たちができあがった。
 
今更、料理自慢なんて
ことはしないけど、
必要とあれば出来ます、
くらいのことは言える。
 
なんで、運命の人に出会ったとき、
料理をしない自分を
カッコいいなんて思っていたんだろう、
演じていたんだろう。
 
それもまた運命だというのなら、
彼は運命の人ではなかったのだろう。

ならば、本当の運命の人のために、
いや、自分の精神のために、
今後もちょこちょこ料理して、
食べようと思う。
 
だって、食べることは
生きることなんだから。

奇しくも、前の彼が
教えてくれたこと。
憎しみも喜びもありがとう。

そして、いまだに冬弓の窮地には
駆け付けてくれてありがとう。
 
でも、冬弓、先を行くね。

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