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みさきちゃん(仮名)のこと(エッセイ)

むかーっし昔のお話。

私がカナダにワーキングホリデーで
行っていたとき、1年間で5回引っ越した。

MOVING・・・トランクひとつで
引っ越しできた時代があったんだなぁ。

ナイアガラで2回、
トロントで3回引っ越したのだけど、
トロントの2度目の引っ越しは、
ベースメント(半地下)の
スペースを日本人女子とシェアした。

彼女の名前が、みさきちゃん(仮名)。

外大出身の、美人さんで、あこがれの
存在だった。

なぜ、彼女とシェアになったのかと
いうと、顔見知りだったのと、
あと、お互いに、ミシサウガに住みたかったから。
(ミシサウガとは、トロントの西、一番
空港に近いサブウェイの駅)

私は、空港近くのジャパレス
(=ジャパニーズ・レストラン)、
みさきちゃんも空港近くの
日本人出張者相手の
ラウンジに勤めていた。
いわゆるホステス、水商売。
当然、みさきちゃんの時給のほうが
私の倍ほどあったわけだが、
みさきちゃんは、いつも、そのきれいな
ラウンジからトイレットペーパーを
ぺちってきてくれた。
一日一巻、カバンに隠して。
(もう時効。
海外では紙製品、高価だった)

お金がないのに、トイレットペーパーだけ
超高級だった。

ベースメントの持ち主が
得体の知れない外人で、
まるで映画「シャイニング」に出てくる、
ジャック・ニコルソンみたいなオッサンで、
雪が降る前に、二人とも引っ越した。

お互いタバコを吸っていたのだけど、
ある日、トイレの便器にタバコが
捨ててあり、そんなマナー悪いこと、
お互いしない、となり、問い詰めると、
ジャックが、私たちのいない間に、
勝手に地下に降りてきていた!!

もう、マジ、シャイニング!!

そして、私はちょうど1年で、
尻尾を巻いて帰国してしまったのだけど
みさきちゃんはちょうど、
ビザが切れる寸前、アメリカに入国して、
その後どうなったのか。

すっごい昔のことだけど、
あの不気味なベースメントと、
みさきちゃんと、天井が煙だらけになるくらい
タバコ吸って、話したのを思い出す。

若い頃、夢いっぱい。

彼女は、細く長くではなく
太く短い人生を送りたいと言っていた。

私もそうありたいかったが、
すでに細くなってきた人生・・・つらい。


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