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飛べなかった鳥(仮想現実)

今の冬弓を例えると、
飛べなかった鳥、というところ
だろうか。

’SPREAD YOUR WINGS’を
聴きながら過ごしてきた
青春時代。

もっともっと遠くへ
力強く飛んでいけるとばかり
思っていた。

冬弓は、雨の日に、地面に落ちた
スズメのヒナのように
弱く震えている。

かつて、雨の日に見つけた
スズメのヒナを
獣医に連れて行ったら
野鳥は診察できない、
と言われた。

まだ、寒い時期だった。

所用があったけど、いったん
家に帰った。

2時間くらいして
家に戻ると、さっきまで
ピーピー鳴いていたヒナの声が
しなかった。

ヒナは、獣医が用意してくれた
箱から這い出して、
冷たい床の上で、硬くなっていた。

どうしてあげたらよかったんだろう。
冬弓が拾わなかったほうが
よかったんだろうか。

今、冬弓は、周りの人に、
そう思われている。

拾ったほうがいいのか、
拾わないほうがいいのか。

翼を広げて世界に羽ばたく
つもりでいた冬弓は、
雨に打たれたスズメのヒナに
なっている。

こんな人生を待っていたわけではない。

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