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ヘルスケア情報#7 ブロックチェーン×治験がCRAに与える影響は?(考察)

皆さんこんにちは!
CRO(ヘルスケア企業)にて新規事業開発をしているヒロシズです。

今回は、先日Twitterでも皆さんに質問した、ブロックチェーン×治験について、元CRA(臨床開発職)の経験と個人的な考察を含めてお話していこうかと思います。

まずはじめに、先日私が皆さんへ質問した、ブロックチェーンの治験への導入によってCRAの働き方はどう変わると思うか?の質問に対する投票結果を貼っておきます。

「そんなに変わらないのでは?」と回答した方が比較的多いですね!
そこで今回は、ブロックチェーンを切り口にしてCRAの仕事について考えてみようと思います。

①ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンというと、ビットコインなどの暗号通貨(海外では仮想通貨ではなく、暗号通貨と呼ぶことが多いです)と関係しているとイメージされる方が多いかと思います。
ブロックチェーンとは、インターネット上で発生した取引の記録が「ブロック」という塊に格納されていき、その「ブロック」が時系列に繋がっていくデータ構造を指します。

そして、ブロックチェーンの価値の本質は、新しい形の「台帳」(すなわち分散型台帳)を実現する技術であることです。
細かい説明は省きますが、この「分散型台帳」の技術を使うことによって、我々が治験にて受けられる価値(とその裏の技術)としては、例えば以下のよなものがあります。

・データの信頼性が担保できる(マイニング結果がブロック状に連鎖)
・治験情報が保護される(ハッシュ関数)
・自動的な合意形成で治験プロセスが進む(スマートコントラクト)

上記の説明だけではブロックチェーンの説明が足りないと思います。
もっと知りたい!という方は、製薬協が出している以下の報告書を是非ご確認ください!
ブロックチェーンの基礎情報から医療への応用に至るまで、情報が詰まっています。

②治験にブロックチェーンが導入されることへの期待は?

こちらに関しては、企業の取り組みから紐解いていきましょう。

サスメド社:ブロックチェーンを用いた症例データの管理で治験を効率化へ

サスメド社の取り組みは界隈でも有名かと思います。
サスメド社は今月上場を果たし、いま勢いに乗っている企業ですね。

サスメド社からは、治験データのCRFへの転記にブロックチェーンを導入することで、CRAのコストダウンが見込めるという話が出ております。

eワークシート(原資料)に入力されたデータをCRF(症例報告書)に転送する仕組みにブロックチェーン技術を導入する。

CRAが行う原資料とCRFの照合作業(SDV)が削減できる。

CRAはSDVの負担が減ることで、業務量と施設訪問回数が削減でき、結果として開発コストが削減できる

また、サスメド社は東京医科歯科大学とコラボして、臨床試験での実際の検証も進めております。
ここで実際に医療機関にて使われ、そして費用対効果が良いという風になれば、大きな進捗になりますね!

アイロムグループ:治験情報統合管理プラットフォームの提供

アイロムグループは、治験業務の効率化を目指し、「aSBo Cloud System」を開発・提供しています。

このシステムですが、ブロックチェーン技術で個人情報の保護や治験データの改ざんを防止する機能を実装しております。
また、個人的に興味深いのは、それに加えて「スマートコントラクト」技術を応用してCRCやCRAの業務の一部を自動化しております。
(スマートコントラクト:契約と取引行動のプロセスを自動化し、契約をトリガーに自動的に行動が起きる仕組み)

なお、aSBo Cloud Systemによる機能としては以下が挙げられています。

① 医療機関の電子カルテ等の院内システムとのデータ連携
② 検査機器等からの直接のデータの取り込み
③ 被験者(治験に参加する患者)が自己の診療データ等を管理できる仕組み

https://www.iromgroup.co.jp/wp-content/uploads/2021/05/20210526_1_359517.pdf

③治験へのブロックチェーン導入の課題は?

ここからは推論が入ります。
治験におけるブロックチェーン技術の活用ですが、期待は高いものの、まだまだ課題もあるかと思います。
その中で私が感じる一つの課題は、医療機関側での導入体制構築があるかと思います。

例えばサスメド社の取り組みについては、グレーゾーン解消制度の照会における厚労省からの回答を見ますと、以下の記載があります。

当該技術を活用し、原資料に含まれる原データ とCRFのデータを直接連携・同期させ、当該データの通信及び保存において適切な改 ざん検知等の機能を備えたシステムを設計し、そのシステムを適切に運用することが 担保される限りにおいては、原データとCRFのデータの実地での照合による一致性の 確認作業は不要と考えられることから、御提案がただちに医薬品の臨床試験の実施の基 準に関する省令第21条第2項に違反するものではないと考える。

https://www.mhlw.go.jp/content/000702071.pdf  P1:5(1)

クリニックではまだ紙カルテが存在している現状や各医療機関がITの導入について模索している現状を見ますと…今後、医療機関でのシステム間連携がどれだけ構築できるか、が普及のポイントになると考えてます。

④CRAの仕事はどうなる?(経験談含めて検討)

治験へのブロックチェーン技術の導入についてTwitterの皆さんはどのように考えているのか…というところで、冒頭に紹介したアンケートを取りました。
ちなみに私の意見は「効率的になる」です。

グレーゾーン解消制度の話が出た頃、私の周りでは「CRAの仕事なくなるの?」「CRAはこれからどうなるの?」などをよく聞いていました。

ただ、ここでちょっと考えてみましょう。
CRAの業務ってなんでしょうか?

CRAの仕事の本質は、原資料とEDCの内容の間違い探しをすることではないです。
治験が適切に行われているか(被験者さんの安全性や人権がしっかり守られているか)をモニタリングすることです。

私自身、CRAとして仕事をしていたとき、SDVに行った際に膨大な量の原資料とEDCの見比べっこすることが苦手でした…アレハタイヘンダッタ…

ブロックチェーン技術がそのSDV作業を代わりにやってくれるなら、大変ありがたいな…というのが個人的な感想です笑
そこで空いた時間を、例えば被験者の電カルをより詳しく見て被験者の安全性に問題ないかを深く考えたり、医師への問い合わせ内容を考えたり、CRCとコミュニケーションする時間に充てたり…などなど、CRA(人間)にしかできないことに使えると思います。
自分もいくつかの施設を担当しているときは、SDVの量が多いとなかなかそういったことに満足に時間が割けず…でした。

自分にしかできない仕事と、ITが代わりにやってくれる仕事は分けて考えていき、CRAに求められる価値ある仕事をしていきたいですね!

⑤さいごに

ブロックチェーンと治験のお話、いかがでしたでしょうか?
みなさん、この話が出てきた際に「CRAの仕事はどうなるの!?」ときになっていたかと思いますが、私の結論としては「ブロックチェーンが導入されればCRAの仕事がしやすくなるだろうから、来る日を楽しみに待とうぜ!」です。
治験業界が良い方向に進んでいくことに期待です!

また、ブロックチェーン×治験については、治験界隈では知らない人はいない、大人気のりすさんも、以下で記事を書いています。
のりすさんの記事ではサスメド社の解説を中心に、ブロックチェーンについて詳細をとてもわかりやすく書かれているので、ぜひ読んでみてください!

コメント・ご質問などがありましたら、Twitterなどでお気軽にご連絡ください!

では、また次回!

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