【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第四章「白村江は朱に染まる」 後編 24
弟成はその場に崩れ落ち、兵士たちに取り押さえられた。
「流石に俺が見込んだだけある。鋭い振りだ。だが、兵士としてまだまだだな」
大国は剣を仕舞い、兵士たちに組み伏せられている弟成の顔を覗き込んだ。
「お前、なぜ俺に恨みを持つ? 俺が何かしたか? それとも、あの娘はお前の女だったのか?」
兵士は、弟成の髪を掴んで顔を上げさせる ―― 左目には、大きな痣ができている。
「お前が、兄を殺したからだ!」
「兄? 俺は、奴を殺すようなことはしておらんぞ。いや、待て……