マガジンのカバー画像

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」

119
御山が燃える……、愛しい男に再開するための代償は、多くの命であった。それでも少年は、全てのものを犠牲にして、男に仕えようとする。心に晴れない何かがありながらも………………。男の野… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 119(了)

 岐阜に戻られた早々、殿は自ら出馬の仕度をされていたのだが……………… 「此度の戦は、某…

hiro75
1年前
8

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 118

 九月二十六日、信長は岐阜に帰還。  長島、越前と立て続けに一向勢を制圧し、残るは『百姓…

hiro75
1年前
9

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 117

「うむ……、なるほどな……、左近尉(一益)は如何に?」 「勘九郎君でございます」 「おぬし…

hiro75
1年前
9

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 116

「今しばらく、そなたたちに尋ねたきことがある」  珍しく、殿が神妙な顔をしているので、家…

hiro75
1年前
6

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 115

 ―― 八月十二日  殿は、意気揚々と越前へ出馬した。  十三日には秀吉の守る小谷城に、十…

hiro75
1年前
6

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 114

 その〝猿〟が、官位の礼にと挨拶に参じた。 「此度は、筑前守という職を頂き、ありがたき幸…

hiro75
1年前
6

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 113

 だが、単純に断っては朝廷の面子を潰すと、殿が推挙された者の官位を願ったそうだ。  帝は、快くこれを許された。  これにより、松井有閑は宮内卿法印に、武井夕庵は二位法印に任じられた。  羽柴秀吉は筑前守を、簗田広正は別喜(べっき)姓と右近(うこん)の官位を賜った。  秀吉の喜んだ顔が目に浮かぶ。  さらに、塙直政は原田姓を、丹羽長秀は惟住(これずみ)姓を頂戴した。  そして明智光秀には、惟任(これとう)姓が与えられ、日向守に任じられた。  別喜、原田、惟住、惟任は、九州の名族

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 112

 七月に入り、東宮が蹴鞠の会を催された。  殿も招待され、馬廻り組を率いて参加された。  …

hiro75
1年前
5

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 111

「しかし、武田の小倅もやるではないか。奇妙よりはできるかな?」  織田側の柵はまだ破られ…

hiro75
1年前
5

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 110

 ―― 二十一日辰の刻(午前八時)  徳川側から、わっと喚声があがった。  大久保忠世が仕…

hiro75
1年前
8

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 109

 明けて二十一日、志多羅は小ぶりの雨模様………………  これでは鉄砲が使えぬと心配してい…

hiro75
1年前
7

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 108

 ―― 五月十八日  雨である。  信長は、陣を志多羅の極楽寺山に移す。  長篠城で合流し…

hiro75
1年前
5

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 107

「さて、あとは、そこに武田をどうやってそこにおびき寄せるか………………」  勝頼は、長篠…

hiro75
1年前
5

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第三章「寵愛の帳」 106

 長篠城は、寒狭川と乗本川の合流点に突き出た、天然の要害である。  武田と守備兵の奥平では兵力差は大きいが、よくよく持ちこたえているらしい。  家康は、信長に長篠城援軍の助力を願ってきた。  家康に請われては、これを拒むこともできない。  過去何度か家康の援軍願いがあったが、こちらの都合で上手い具合にいかなかった ―― その負い目もある。  天正三(一五七五)年五月十三日、信長は信忠を連れ、三万の兵を持って出陣。  熱田神社を参拝したのち、五月十四日に岡崎に入った。  翌十五