選抜高校野球の話【聖隷クリストファー高校落選に関する所感】

東海大会準優勝校が落選。

2022年3月18日に開幕を予定されている第94回選抜高校野球における出場校32校が決定したわけであるが、まさかこういう形で騒ぎが起こるとは思っていなかった。

まずはじめに断っておくと、私は大垣日大校が選ばれたことに疑問があるわけではない。
九州在住の私でも知っているくらい甲子園常連の強豪校、今回の選出も実力を買われてのことらしいので、全国の舞台で思い切り野球を楽しみ、素晴らしいプレーを見せてほしいと思う。
ただどうしても言われのない批判や心無い誹謗中傷が浴びせられる可能性はある。選手や関係者にはそういうバカな雑音に動揺することなく残り少ない高校野球を全うしてもらいたい。

本題。疑問点は聖隷クリストファーを落選させたことにある。

周知の通り選抜大会はあくまでも“選抜”によって出場校を決めるため必ずしも前年の秋季大会の結果で出場校が決まるわけではない。
過去にも不可解選考や明らかな選り好みは散見されていたようだ。
それについては私自身はあまり詳しくないが、YouTubeやネット情報で確認できる。
参考までに私はイセサンTBさんでのYouTube動画で確認させてもらった。

個人的にはやはり高校野球の全国大会とはいえ、新聞社主催で興行的側面も持っているので「準々でコケたけどあの注目投手を投げさせたい!」「史上最強と呼び声高いあのチームを全国で見たい!」というような盛り上がりを考えた選出基準はある程度仕方ないとは思う。また、同じ県から何校も出すより複数の県から選んだ方がより多くの人の関心を引けてその分盛り上がるだろう、というのも。
そして詰まるところ“より新聞が売れる”というところに繋がるわけだが、まあその辺はここでは置くとしよう。

ただまあ当然直前の公式大会である秋季大会は選考上大きなウェイトを占めているわけで、ここで好成績を残すことがセンバツ出場の1番の近道であることは事実である。
現場的にもここで決勝まで行ければほぼ出られるようなもん、という意識なのではないか。

各報道によれば、東海大会の1位と2位が順当に選ばれなかったのは1978年の第50回大会以来44年ぶりのことだそうだ。
しかも調べてみると、このときは優勝した中京高校が不祥事により推薦辞退したため他の高校が選ばれたというのが真相だったため、それがなければ普通に1位2位で選ばれていた可能性が高い。
それ以前の記録を調べたわけではないが、少なくとも東海大会においてはほぼ半世紀以上に渡って“決勝に行きさえすればセンバツに出られる”という状況が常識として出来上がっていたことになる。

にも関わらず準優勝した聖隷は甲子園出場を許されなかった。

さらに選考委員は
「個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで賛否が分かれましたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とします」
「甲子園で勝てる可能性が高いチームを選んだ」
大垣日大を選んだ理由としてこう説明している。

つまり
「投打共にイマイチ、個人の力量で劣り甲子園では負ける可能性が高い聖隷クリストファーは選びたくなかった」
とはっきり聖隷をディスっているわけだ。

私は聖隷の選手達がこの一連の事件に対しどう思ったかを考えたくない。

私も意外だったのだが、聖隷クリストファーは強豪ではあるが甲子園に出場したことがない。私でも知っているくらいなので一度くらいは出たことがあるものだと思っていた。
初の甲子園出場を夢見て練習していたはずだ。

しかも聖隷はエースの弓達(ゆだて)君をケガで欠く不安な状態の中でチーム一丸となってまとまり、なんとか決勝まで戦い抜き、見事に準優勝という成果を納めた。
万全ではないチーム状態の中でも最後まで諦めず逆転勝利を信じてバットを振り抜き、ボールを投じる能力は個人の力量ではないのだろうか。

上村敏正監督も仰っているように、負傷者を抱えた中で準優勝できるチームは普通に強いと思うのだが。

何度も言うが、過去50年東海地区は準優勝すれば甲子園に出ていた。

初の甲子園出場を成し遂げたと喜んでいたはずが梯子を外され、あまつさえ出られない理由は弱いからだと大人達にこき下ろされる選手達の気持ちなど私は考えたくもない。

大垣日大は選ばれることなど考えておらず、会見の準備もしてないし記者も誰一人来ていなかったという。監督も飛び上がって驚いたそうだ。

やはり大垣日大を選ぶにしても、聖隷は出してあげないといけなかったと思う。

特に昨今はウイルスのせいで大会自体の開催が危ぶまれ、そういった意味でも全国大会への出場体験というのは本当に貴重なものとなってきている。

出場校を増やす措置をとったり開催期間を長めにとってやる働きがけをしても批判する者などいないはずである。

粘り強さで勝ち上がってきた秋の準優勝校とベスト4に沈んだものの名監督率いる名門実力校が甲子園で相見えるとしたらこれほど盛り上がるカードもないのではないか。

聖隷の選手達は気持ちを切り替えて夏に向けて頑張っているはずだ。この悔しさをバネに夏の決勝で日大三島にリベンジを果たし、今度こそ誰も文句の言い様のない甲子園出場を勝ち取ってほしい。

ファンとしてはこれ程溜飲の下がる、爽快なドラマはないだろう。

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