美術館散歩 #8 ヴェッキオ宮殿
2019年に訪れたイタリアの美術館を数回に分けてレポートします。
今回はウフィツィ美術館の隣にあるヴェッキオ宮殿。
ヴェッキオ宮殿は1314年、フィレンツェ共和国の政庁舎として建設されました。日本で言えば鎌倉時代。今でもフィレンツェの市庁舎として使われています。
美術館ではありませんが、五百人広間という部屋にヴァザーリのフレスコ画があります。
今回はそのお話。
画家であり建築家でもあったジョルジョ・ヴァザーリは、その本業の業績もさることながら、「画家・彫刻家・建築家列伝」という著作を残しています。
これによって、イタリアルネサンス期における芸術家の様々な側面が伝わる貴重な資料となっています。
ヴァザーリの絵がここに掲げられる前には、この場所にミケランジェロの「カッシナの戦い」、レオナルドの「アンギアーリの戦い」ありました。
共に未完に終わったその作品にヴァザーリが上書きし、両巨頭の絵は永遠に失われた。と、思われていました。
この「タヴォラ・ドーリア」はアンギアーリの戦いの中央部分の模写ですが、誰の作品か分かっていません。
もしかするとレオナルド本人のものかもしれないという説もあります。
長い間、行方が分からなくなっていたのですが、巡り巡って東京富士美術館が購入したものを、2012年にイタリアに寄贈されました。
さて、このヴァザーリの絵ですが、兵士が持つ軍旗に小さく「Cerca Trova」(探しなさい。そうすれば見つかる)という謎の文字が書かれていたのです。
レオナルドを最大に敬愛するヴァザーリが「アンギアーリの戦い」を塗りつぶすはずはないと考えた研究者がX線とレーザーで調べてみると、ヴァザーリの絵が書かれている壁の向こうに1インチほどの隙間が有るのを確認しました。
つまり二重の壁になっている奥の壁に、今も「アンギアーリの戦い」は眠っているかも知れない。ただ、ヴァザーリの絵も芸術的価値の高い作品なので、それを壊すわけには行かず、調査は次の手段を模索しているという段階です。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました!