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このままじゃ、アパレルやばいぜ

いや、決してそうなってほしくはないんです。でも難しいかなという思いも日に日に増してきています。業界の人ほど読んでほしい。

一般のニュースでもトップの方に出てきているのでご存知の方も多いと思いますが、現状はこんな感じです。

でもって、今は株主の投資会社とのつばぜり合いが繰り広げられています。

細かい数字的な話はアナリストの方々が分析されているのでお任せするとして、アパレルの現場の人間として、顧客のひとりとして感じたことを書いてみたいと思っていました。

ちょっと三陽商会に絞って、経緯を振り返ってみましょう。
 

バーバリーのライセンスで安泰だと思われていた三陽に暗雲が立ち込めてきたのは2015年。

この年の春夏を最後に、バーバリーのライセンスブランドは終了することが決まったのです。その裏で長く交渉は行われていたのでしょうけど。

日本でバーバリーと言えばバーバリーロンドン、黒いバーバリーでおなじみだったブラックレーベル、もう少し手軽で若者にも人気があったブルーレーベル。これは三陽商会が生み出したライセンスブランドであり、ディフュージョンライン(低価格ライン)だったのです。これが非常に評判が良く、日本だけでなくアジアでも売れまくっていました。僕もポロシャツとか買ってましたね。

でもそれがバーバリー本体に目を付けられた。
2013年頃になると中国での本格展開を考えた本国サイドがそれを問題視し始めます。同時にブランドのラグジュアリー化を進めていく方針も重なり「全世界的にバーバリーの管理を本体で一括しよう」という決定がなされることになりました。それが今回の発端です。

ちなみに交渉の末、日本ではブルーレーベルが「クレストブリッジ」という名前に変わり、チェック柄などいくつかの意匠のみ使用してよいという契約で残りましたが、当然バーバリーの名前やホースマークは使えません。

 
この段階で、業界では「これは相当マズいのでは」という空気が立ち込めていました。当然です。利益の大半がバーバリーによるものだと分かっていたから。

でも当の三陽は、一旦売り上げは落ちるけど3年後には同じ基準に戻るよ、という見通しを立てています。(1,063億→960→850→1,000)

もちろん、対外的にそんな悲観的な見通しを立てるわけにはいかないでしょう。でも「うん、そうなると思う」と納得した人はあまり居ないんじゃないかな。というのも、後継のブランドが”マッキントッシュロンドン”だったから。

いやブランド自体の質がどうこうという話ではないんですが、ネームバリューとしてとても穴埋めになるとは思えなかった。僕はきっと新しいインポートブランドや名前のあるブランドを引っ張ってきてくれるのでは、とワクワクしていたんです。バーバリーを扱った実績と利益を使って。

やはり同じテイストで格落ちしたものに差し替え、ではお客さんも納得しません。ここから下り坂を転がるように業績が悪化していき、買収の話も噂されるようになってしまった、というのがここまでのまとめです。

 
先日、一時代を築いたレナウンが破綻したニュースも大きな話題となりました。

レナウンの場合は10年前中国企業に買われた時点で、言い方はアレですけど延命されていたようなものでした。だから個人的には驚きはなかったんですが、三陽とも問題がかぶる部分があるように思うんです。
 

どちらも「自分たちの影響力を過信しすぎていた」のではないかと。

 
三陽はずっと「ものづくりの三陽」を自負していました。
バーバリーが売れていたのも、自分たちのものづくりが評価されているからだ、良いものを作っているからだ、という意識が見えていた。

事実、バーバリーを手放してからも「ものづくりの三陽として〜」というフレーズは何度も耳にしました。もちろんライセンス品のクオリティは高かったし、推していた百年コートも仕立てはいいと思う。

自社のクオリティに自信を持つのは良いことですが、過ぎたるは及ばざるが如し。正直、一般的にそのような評価の声が聞かれるかというと?でした。

 
結局、ユーザーはバーバリーの名前で買っていたのであり、三陽だから買っていたのではなかった。

 
もちろん名前は有名でしたが、三陽の熱心なファンという人は思ったほど多くなかった、というのが事実でしょう。みんなオレのこと好きだろ?と思っていたらそうでもなかったみたいな。寂しいですね。

レナウンも古くはレナウン娘で一世を風靡して日本を代表するアパレル会社になったけど、ユーザーはレナウンのものなら何でも買っていたわけではなく、ちゃんと良し悪しを見ていたわけです。良くなかったから売れなくなったというだけ。

 
評価は、やはり他人がするものだと思うのです。そして冷静に反応を観察しなければならない。いくら自分で言っても認めてもらわなければ意味がないですよね。SNSで自称○○と言ってる人みたいになっちゃう。

確かにアパレル界では巨人だった。評価も高かったし、良いものを作っていたのも間違いないと思う。でも、顧客との距離感を見誤っていたのではないかなと。ここにファッション業界が不振に陥っている原因がある。

 
今の世の中、代わりのないものなんてほとんど無いんですよ。

 
楽天がイヤだったらAmazonがあるし、ウーバーイーツじゃなくても出前館があったり同ジャンルに色んなブランドがひしめいている。新興のジャンルは競争の中で切磋琢磨してるから改善を繰り返してユーザーの支持を得ようとするのが当たり前になっている。

でもファッションは、業界として絶対売れ続けるしみんなが憧れるトップジャンルだという変な自信があって上から目線だった。今もまだそう。勝手に百貨店に買いに来るものだと思っていたしコレクションも業界内の”分かる人”(←ディスってます)で盛り上がっていただけだった。ここは業界として考え直さなきゃダメだと思う。

そして気付いたら、顧客だった人たちは他の趣味や散財先を見つけ、新たな顧客も育成できていなかった。振り返れば奴がいる…じゃなく誰もいなかったということです。その結果、今回のコロナ禍が致命傷になってしまっている。

 
洋服は趣味のものじゃなく、生活に密着したものだと改めて知ってもらう必要がある。着る服によって毎日のテンションや体調も変わるし、人生が変わることだってある。センスのいい人や余裕のある人だけが楽しめる趣味じゃなくて、誰でも楽しめて人生に欠かせないものなんです。それを地道に訴えないと。

 
でもしっかり顧客とヴィジョンを共有しているショップやブランドは、この危機の最中でもしっかり絆を確かめ合っている。

某セレクトショップでは、大々的な告知をしていなかったにも関わらず緊急事態宣言解除後の週末に多くの人がスタッフとの再会を楽しみに訪れたそうです。ここでなければ、という「代わりのないお店・ブランド」は、やはり強い。
 

確かにアパレルはヤバいです。
でも業界の人間として諦めてはいません。
自分に似合うものが見つかって、それを着たらどんな気分になって、どんなことが起こるのか?それを知ってもらえたら必ず視線は変わる。

そう信じて、地道にスタイリングを続けていこうと思います。

なにを偉そうに?いや偉いとか偉くないという概念を持ってない人が一番偉い。ぺこぱは松陰寺さんが着物にローラースケートのときから期待してました。

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