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スタイリストが考える、アパレル業界がヤバい理由

ここ数日はclubhouseにちょくちょく顔を出してます。断言しますが、やる気があり過ぎる人には向きません。ゲストの話が聴きたいのに相槌打たせてどうする。ラジオパーソナリティ的な平衡感覚が必要ですね。やっぱりプロは凄いと逆説的に思います。

 
今年に入ってからも、アパレル業界の話題といえば人員削減とか閉店とかネガティブな話題しかありません。先週だけでもこんなニュースがありました。

ヴィアバスストップは本当に残念。これぞセレクトショップという感じの本気が刺さってきて心地良かったのに。残念ながら買い支えるほどの財力はないけれど。

主に個人のお客さまのために日々ショップを回っていますが、やっぱり景気のいい話は出てこない。縮小とか閉店とか、そんな話ばかりで悲しくなります。

積年のツケを払っている

でも、バイヤー、販売員、スタイリストとずっと現場にいて思うのですが、これは長年のアパレル業界から世間へのアプローチのツケが来ているんだよなと。それが今の状況で加速されてしまっただけなんだと。

ひとことで言うと「あなたのための一着を提供する」ということをやってこなかった。

「服は着飾るものではなく自分を表現するもの」「自分のために心地良さやテンションの上がるものを選ぶ」ということを伝えてこなかったツケです。

その結果、今回の事態において「エッセンシャルじゃないもの」に転落してしまった。

新作を出せば、シーズンが変われば自動的に売れるというラクな時代が長かったので、特に服に存在意義や選ぶ理由付けをする必要がなかったんですよね、業界に。それより何着売るか、どのトレンド・どこのデザインをマークするかということばかりやってきた。「トレンドに乗り遅れたらヤバイですよ」という不安商法みたいなアプローチになっていた。

本来は、ファッションはエッセンシャルなものだと信じてます。毎日身に着けるものなんだからそれによって気分も変わるし思考も整う。本当はこういうときだからこそ質を見直してほしいのに。だから余計悲しい。

”消去法”に負けていていいのか

スーツ専門店は打ち出す方向性を変える必要があるからと急に「スーツは仕事着ではなくて個性を表現するもの」「日常で着よう」とか言い出してたりします。今までそういう方向性でアプローチしてこなかったのに、いきなりではユーザーに響かないだろうと。急にカジュアルの仲間に「俺も俺も♪」と行っても入れないですよ。

正直、スーツ市場で言えばこれまで以上に厳しくなるでしょう。5,000円くらいのゆるセットアップは売れてるようだけど、それはもう別物。

だけどちゃんと売れているところは”キチッと見える”以上のものを提供してきているわけで。それが自分のスタンスを表現してくれたり、心地良さだったりテンションを上げてくれるもの、ということなんだと思う。そこを守り続けてきたことが価値になっている。

個人的な感覚ですが、ファストファッションの人気は「積極的支持」より「消去法」で選んでいる人が多いと思っています。そんなに心惹かれる熱烈に好きなブランドもないし(金銭的な気軽さも含めて)〇〇でいいか、みたいな。

どの企業もすごい努力をしていてそれはもちろん素晴らしいこと。僕もお世話になってます。でも消去法で負けてるような状況でいいのか、という話です。

”価格的にはちょっと張るけどやっぱりこっちがいいよね”という人を増やさなければ。ファストファッションに価格やテイストを合わせても結局沼に引きずり込まれるだけ、ということはもうハッキリしています。

「服が売れない理由」のウソ

そもそもで言うと「日本人が貧乏になったから服が売れない」という意見をよく見聞きしますが、それがもうウソです。クライアントでも単価数万円のものを複数お買いになられる方は多いし、本当に欲しいものがあれば購入したいと思っている人は潜在的にたくさん居ます。

全体的な話で言えば、服以外にお金を掛けるようになって他に流れてるだけであって、単純に支出先としてガジェットやゲームとかとの競争に負けてるというだけのこと。

iPhoneの最新型なんて、もうパソコンが買えてしまうくらいの値段になっている。それでも買われていくのはニーズを満たしてくれるからでしょう。買うことで最新の便利さが手に入り、自分の仕事やプライベートがアップデートされる。ニンテンドースイッチが人気なのも”家でみんなでゲームが出来る”というコンセプトが今求められているからですよね。

ファッションは、もう一度意義を再定義しないといけない。あなたの人生をアップデートさせ、日々の暮らしのお役に立ちますということを、それこそ一軒一軒扉を叩いてドブ板選挙のように訴えていく必要があると本気で思います。そしてその公約を守っていけば、価値を認めてもらえる。価値を認めてもらえれば、値段を下げよう下げようとしなくても買ってくれます。

値上げしても売れる雑誌

NYLONというファッション誌がありますが、雑誌の価値として1,000円は頂いてもいいはずと値上げをしてみたけれど、それでも問題なく売れているそう。その値段を出す価値があるとユーザーが納得しているわけです。

この本には値段に相応しいだけの満足感があります、読んだらベネフィットがありますという雑誌や発信を通した訴えがちゃんと読者に届いているから、購買という応援行動に反映されている。

よく販売員への教えで「お客様の財布の中身を勝手に決めつけないこと」と言いますよね。こちらで予算を勝手に想像して勧めるな、ということですが、ブランドはまさにそれを思い出すときなのではないだろうかと思います。

「みんなお金ないだろうから少しでも安く(=それなりの品質で)」という勝手な忖度のせいでどんどんシュリンクしていって、皮肉にも総出で安くそれなりにがウリのファストファッションのアシストをしてしまっている。

求められているのは”私のための服”

もう、ファッションは誰もが自動的に憧れるジャンルではなくなってしまった。大人になる通過儀礼みたいなところから外れてしまった。

だからジャンルとして、ちゃんとした服を着ているとこんな効果があるよ、いいことあるよと訴えてファンを増やさないと。若い層だけじゃなく、今のアラサーアラフォーアラフィフの人たちは”大人のためのちゃんとした服”が無くて困っています。

幸い、と言っていいのか分かりませんが今の社会状況になって「着心地」「自分が満足できる」といったところにフォーカスする方が増えてきている実感が出てきた。まさに”私のための服だ”という一着を求めているんです。

ちゃんとした質を担保した、ユーザーが大切にしたくなるていねいな服。

みんな本当は”ちゃんとした服”を求めている。大事にしたくなる品質で、デザインに面白さがあって、着ていてテンションの上がる服。

正直、スタイリングする側からしてもブランドがなくなったり取り扱いが減ったりして選択肢が狭まっていくのは死活問題。業界的に明るい未来は見えにくいですが、前向きに変革し続けるしかないと思うし、僕は現場や発信を通してファッション大事だよ!と訴えていくしかないと思っています。

 
まぁ僕みたいな端くれが言ったところでなんだという話ですが(笑)しがらみが無い人が言いたいことを言ってみた。

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