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「洋服」と「人」を売る極意、知ってますか?

僕は元々バイヤーであり、販売員であり、今はスタイリストという肩書きですが、立場は変わってもこれまで売ってきた洋服は数千着にはなるんじゃないかなと思います。距離にしてどこまでみたいのやってみたい。

そんな中で見つけた洋服を売る極意って、何だと思いますか?

「いい服を仕入れること」なんですよ、これが。

仕入れがすべて。服のクオリティがすべて。素材と着心地とデザインの良さ。
良ければあれこれを言葉を尽くさなくても勝手に買っていく。服がもうすべてを語ってくれると言ってもいいでしょう。

売る方としても、たとえオーガニックだエシカルだろうと服としての着心地やデザインがダメだったら売ろうと思えない。いい商品であるかどうかが最も大事であり、それに勝るものはありません。売る側としても不安なく、良いものを良いと言えばいいだけだし。

売り文句とか押し方はあくまで補足であって。下手より上手な方がいいけど、クロージングのテクニックとかも販売の真髄ではないと思うんです。詐欺的なスキームの人たちが人数で圧をかけるのは、そうでないと逃げられちゃう内容だからでしょう?勧誘する人も本当にいい話だと思ってないし。

結局、言葉を尽くさないと売れないものはその程度のものということ。ある商品が頑張って頑張って売れたとしてそれはいいことだけど、”頑張らなくても売れるもの”を仕入れた方がいいに決まってます。

僕がそれを感じたのは、セレクトショップのリニューアルを主導したときのことでした。

「皆まで言うな」と買っていくお客さま

それまで取引先が増えすぎていて、商品の質がバラバラになっているのが気になっていたタイミングがあって。質が劣る会社は申し訳ないけど切って、求めるクオリティのあるインポート中心の品揃えにするべきだと準備を進めていました。

そんな当時、よくショップに来てくれていた上品で小柄なおばさまがいました。メガネの似合うショートカットの素敵で余裕のある雰囲気だったなぁ。近所にお住いのようでよく立ち寄ってくださるのですが、そんなによくお買い上げになる方ではなかったと記憶しています。

ところが、そんなお客さまがリニューアル直後にいらっしゃると商品をひと通りご覧になると、嬉しそうに

「私の欲しいものを揃えてくれたわね」

と言い、その日から大のお得意さまになってくださったのです。

先日残念ながらお亡くなりになってしまったと伺ったのですが、この日のことは今でも鮮明に覚えている本当に嬉しい出来事でした。

それまで、色々と商品や着方について語って買っていただくことが当たり前だと思っていたのですが、その日を境にそんな必要はないと気付きました。お話をして、お好みや今の気分に合いそうな服をお見せすれば「皆まで言うな」とばかりにお買い上げになっていく。あるいは自分で好きに洋服を手に取ってお会計へ。そんなお客さまが増えました。

これだ、と思いました。

もちろん、お客さまとの関係性や個人のセンスにもよるところは大きいので、誰でも通用することではないと思う。でも、きっとそれがベストな形なんだろうなと直感的に感じたのです。

今はスタイリストして服をご提案していますが、イメージに合うものをご用意できれば大抵着た瞬間に購入が決まっていきます。どこのブランドだとかどういうお手入れだとかというのはあくまで補足でお伝えする程度で。ブランドネームに左右されず、良いと思ったものを買う。非常に健全だと思う。

人は本当に良いと思ったものは、万難を排してでも欲しいのです。

着る機会が、とかサイズが、という部分が気になったとしても欲しくなる。こっちが止めることもあります。逆に何か引っ掛かる、そこまででもないものはどんなに言葉を尽くされても欲しいと思えない。そんなものです。恋愛とかもそうでしょう?だから後者をクロージングのテクニックで売るというのは商売の正道じゃないですよね、やっぱり。

人を売る極意も、同じでは?

で、ここからが本題。
これって洋服や商品だけでなく、人や会社(で働く人)も同じだと思うわけです。

商品やサービスのことを手を替え品を替えしつこく伝える努力ももちろん大事なんですが、説得するより向こうから「ぜひお願いしたいです」と言ってくれたり、簡単なミーティングで「じゃあそれで!」と言ってもらえた方が圧倒的にラクですよね。

洋服は「いい服」を仕入れることがキーポイントでした。では人や会社は、というと「希望的観測が抱けるビジュアル」がキーになります。

今日どこで夜ご飯を食べようか、と思ったとき、はじめてのお店なら「きっと美味しそうな気がする」と思えるところにするしかないですよね。色々口コミを調べたところで味覚は人それぞれなんだし、店構えやメニュー写真のイメージで何となく決めるしかない。

人や会社も、やっぱり依頼してみないと結果や相性は分からないわけです。だから色々調べた上でも結局「自分にはこれが良さそうな気がする」という曖昧な希望的観測で決めることになる。そうなると、希望的観測を抱いてもらえそうなビジュアルやイメージであるかどうかが大事になってきますよね。

これはよく言ってることですが、同じような力量や実績だったとしたら、間違いなく見た目の印象がいい方が選ばれます。それがハッキリしてるのに、まだ中身が大事だと言うのか、と僕は思ってしまいますが。

少し服の話を思い出してみてください。
いい服が説得しなくても売れるのは、”この服を着たら何かが変わりそう”なワクワク感とか”あんな場面で着ている自分”が既に浮かんでいるからです。

ファッション誌のブランドページで、わざわざパリとかミラノで写真を撮るのはイメージを増幅するためでしょう。こんなところにこんな服を着て行きたい、この服を買ったら少し近付けるかも、という。別に多摩川の河川敷で撮ったっていいわけだし。

そんな「いい服」というのは人の理屈を超えて訴えかける魅力があります。だから高くても売れるし、満足感がある。簡単に言えば、人もそんな空気を身に付ければいいということ。

提供しているものがちゃんとしているという前提で、
それを利用したら〜というポジティブな妄想が浮かぶような印象になっているかどうか。
この人・会社なら安心して任せられるという説得力があるかどうか。
それがまさに”理屈を超えて訴えかける魅力”です。

実際、企業でも担当者が説得力のある容姿だと打ち合わせが短時間で済む、顧客からの確認事項が少なくなる、という話を聞きました。それはある意味当然で、この人なら大丈夫だろう、という人が出てくれば「皆まで言うな」という感じで任せたくなります。逆にこの人で大丈夫??という担当だったら心配で根掘り葉掘り細部まで確認したくなるのが心情というもの。そこまで意識して見た目を整えられるのがプロ、と言ってもいいと思います。

準備8割・現場2割

これは僕の仕事スタイルでもあるのですが。
スタイリストも、講師や講演の仕事も準備段階でほとんど決まってしまいます。

ニーズにあった服を揃えておけるかどうか、ニーズにあった内容を提供できるかどうか、事前にどこまで詰めておけるかが大事で。そこがしっかりできていれば大抵はスムーズにいきます。あとは現場で調整する余白を残しておけば万全。

どんなにスタイリングのセンスがあったとしても、洋服のクオリティが悪かったりニーズに沿っていなければお客さまは満足させられません。揃えた洋服にはじめて出会って「これは楽しい時間になりそう」と思ってもらうことも大事です。前述のようにね。

人の印象もまったく同じ。
初対面のときもパッと見た印象の割合が多くて、そこで好印象なら話はスムーズに進む。現場で挽回することもできるけど時間がないと難しいでしょう。だから準備してきた印象が良いに越したことはない。

しかも今はSNSなどを通した「第0印象」の時代になっています。
ちなみに第0印象についてはこんな調査がありますね

「第0印象」とは、実際に対面する前に他人から持たれる印象を指します。

実際に対面する前に、SNSやエントリーシートなどの写真や動画でその人を見て、イメージしたり感じたりすることです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000450.000006496.html

言葉自体を知っている方も知らなかった方も、今の現状として仕事にも大きく影響することが実感できる内容ではないでしょうか?

知らないうちに相手は自分を一方的に知っていて、その印象の良し悪しで採用するか・依頼するかどうかを判断しているわけです。これを見た上で、もう見た目を意識しない理由なんてないわけですよ。

おわりに

「カワイイは、作れる」というCMがありましたが、印象も作れるんです。作って準備しておくのが今のスタンダード。一回しっかり作って、それで自信を持てたり現場でのことに集中できるなら、その方がラクだと思いませんか?

ファッションに興味がないので適当で、と言ってるのは私PC使えませんと言ってるのと同じレベル、というくらい仕事の一環として当たり前になってほしいと願っています。いや近い将来間違いなくなるな。

人も会社も、印象は仕事の事前準備のひとつ。
何を伝えたいのか、どう思ってほしいのか。それは職種や部署によって変わってくるので、併せて明確にしておく必要があります。
結局はそれがブランディングにも繋がっていきますよ。

結論として、いい服をひとつも売ってないSHE○Nは論外、ということをぶっ込んで締めくくりとさせて頂きます。パクりブランドをオススメしてるメディアやスタイリスト、やっべえぞ。

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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介

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