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服が売れないからって、逃げちゃダメだ

いよいよ明日はバレンタインデーですね。と思ったらマッキー逮捕が全てを持っていきました。もう○○○なんてしないなんて言ってくれ今回は絶対。

先日、WWD(vol.2121)にファッション企業のトップに聞く2020年の展望、という特集があってそれを読んだんです。20社くらい載っていたのかな。

多くの会社が

「脱・ファッション企業を目指す」的なことを言っていました。中には

10年後は「昔は洋服屋だった」と言ってもらえる存在になっていれば

というような発言もあって。

これはますますファッション売れないな、と。

個人的には、一社でも「ウチはファッション企業として原点に戻って、ワクワクしながら買って頂ける洋服を作っていきたい」と言って欲しかったんですが、ちょっと残念でした。

いや、方向性として正しいのは分かります。

ライフスタイルを含めた提案大事です。モノじゃなくてコンセプトをプロデュースして売った方が利益出ます。でもそれはあくまで「ファッションを売るため」のものだったのでは?

今の現状を見るとそれがすっかり逆転していて、”そっちのが儲かるから儲かる方行くべ”という感じになっている。果たして、その余力で作った服って売れるんですかね?

それなりの規模の企業を存続させていこうとすると仕方のないシフトチェンジなのかも知れない。だけどみんながそういう方向に行ってしまったら、より魅力が無くなっちゃうんじゃないかな、アパレルは。

そもそも、服の売上げが下がってるのって出生率が下がってるから仕方ないんですよ。もう高度成長期みたいにはいかない。でもそれ以上に「その瞬間売れるものばっかり作ってきた」ことが大きいと思っていて。

売上げが良くないから安パイなものしか作らない→どこも同じようなものしか並ばなくなる→どこで買っても一緒→ファストファッションでいいや、ということになる。自分たちで緩やかに首を絞めあっていた間に、GUあたりにポジションを取られてしまったのです。
 

一方、グッチがリブランディングして爆発的に売れたのは

「もう一度ファッショントレンドの最前線に戻る」

という強い決意を持って取り組んだからです。それまでは名前こそ誰でも知っているけどやや地味というポジションに収まっていました。それを払拭するために大胆な行動に出た。

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当時内部デザイナーのひとりだったアレッサンドロ・ミケーレを昇格させる人事には多くの疑念が呈されましたが、結果は今の通り。ウチはこういう路線で行くんだ!という強いバックアップがあったからこその成功でしょう。

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これは、良いクリエイションが出来れば売れるという証明です。企業としてブレずにバックアップすれば可能性はより大きくなると思うのだけど、WWDの誌面にあった記者の言葉を借りれば

トップが自省している、自信を喪失している

現状では、難しいのかも知れません。

でも他業種ですが、いきなりステーキが生牡蠣を食べられるようにして業績が回復したという話は聞かないし、松屋のジョージア料理「シュクメルリ定食」が大ヒットしたのは物珍しさだけでなく単純に美味しかったからです。

結局、業態の本丸が良くなかったら何をやっても上向かない。

飲食だったら美味しいかどうかが全てだし、サービス業だったらまた来たくなる接客が出来るかどうかが全て。アパレルだったら買いたくなるクオリティであるかどうかが全てになるわけです。

売れないのを時代や天候不順のせいにするのはもっともらしい理由にはなります。実際その影響も少なくはないのでしょう。

ですが、アパレルが本気でアパレルを売ることから逃げたら、ますますファッションのポジションは落ちていくことになります。全体としてシュリンクしていくことは避けられないとしても、ファッション好きな人、興味を持ってくれる人のためのクリエイションやファンを増やすための努力はしていくべきです。現状維持、微減ならいいなんて心構えではそれ以下の結果にしかならない。
 

逆に、最近ではIT関係の人たちの方がファッションに可能性を感じているようで、僕もそっちの人たちと話している方が楽しかったりします。

彼らはファッション業界では技術的に不可能だった売り方や魅せ方を簡単に実現できるし、業界の慣習に捉われない面白いアイデアを持っている。そして学ぼうという意欲が強い。

「自分たちの技術とアイデアがあればファッションはもっと売れるはず」という思いがあるから、とても前向きです。今のファッション業界よりずっとポジティブ。

今面白い話をいくつか頂いていますが、もっとITの力を借りたらいいと思う。アパレルの歴史とクリエイションをデジタルの力に提供したら、間違いなく新しい世界が生まれるしファッションも盛り上がるという確信があります。僕はファッションのために自分の経験や感覚を惜しみなく提供したい。
 

やはり、発信する側が自信を失っていたら絶対に上手くいくはずがありません。

ファッションは、もうトレンドセッターというポジションではなくなってしまったのかも知れない。でも生活に欠かせない密着したものだし、何を着るかで毎日が、ひいては人生が変わっていくものであることは変わっていない。

個人的には変わらず、一枚の洋服でどれだけその人の魅力を引き出せるかを追求していきたいし、どうやったらファッションの楽しさを感じてもらえるか、ファッションで世の中のどんな役に立てるのか、可能性を掘り下げていけたらなと。

アパレルは、これまで流行の一番手というポジションにあぐらをかいた押し売りに近かった。薄利多売ではなく時代に合わせて、ほんとうに必要なもの、その人の魅力を上げるものだけを提供して満足してもらえれば、洋服の価値は自然と上がっていく。それがサスティナブルやSDGsにも繋がっていくんじゃないでしょうか。

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」と唱えていたのは碇シンジくんですが、今こそその言葉を業界に贈りたいと思います。

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