「らしさ」がないファッションは、ただの布だ
あっという間に年末です。竹内まりやさんの歌withパーティーバーレルの季節ですね。それは置いといて。来年のテーマとか色々考えだす頃かなぁと感じます。
個人的には「らしさの追求」をスタイリングや仕事のテーマにしていこうと考えていて。
よく”自分らしく””あなたらしく”みたいな売り文句を聞くじゃないですか。歌とかでも多い気がするけど。でも本当に「自分らしさ」を分かって生きてる人、表現してる人ってどんだけ居るんだ?と思うわけです。
何が自分らしさなんだろう?と悩んで自分探しをしている人も多いですよね。で結局色んなところで別々のことを言われて堂々巡りになったり。そりゃ手当たり次第に聞いたらそうなるのが当たり前です。みんな主観で言うに決まってんだから。
「らしさ」=個性
らしさ、というと少し曖昧かも知れないので改めて定義すると、こういうことになります。らしさはあなたの個性です。
あなたらしさが濃く見えることによって、人はあなたの”輪郭”を把握し、どう接するべきか、自分にとってどんな存在になるか決定していきます。恋愛や友人関係や仕事、社会での人間関係すべてそうですよね。
それが元から濃く出ている人もいれば、そうでない人もいる。でも誰しも「らしさ」は持っていると思うんです。見せる勇気が出なかったり出し方が分からなかったりするだけで。
多くの人が「何を着たらいいか分からない」「自分らしいファッションとは?」と言って相談に来ますが、イコール自分で個性が分かってないということでしょう?これは問題だし、勿体ないことだなと思うわけです。
日本ではことさら自分を表現しない、らしさを表立たせないことが美徳というかマナーである的な文化がありますが、少し認識を変えていかないといけない時期に来ている。中身が良ければそれでいいんだ、分かってくれるはずという考えは過去のものになりつつあります。
最近の若い世代の人たちは生まれたときからネットが発達してたりSNSがあった世代だから、自分の見せ方のポイントをなんとなく分かっている人が多い。らしさを表現することにも抵抗がないし、むしろ出すことで共感が集まっていきます。
「らしさ」はどう表現すればいいのか
じゃあ「らしさ」はどう表現すればいいのか、ということになってきますよね。
それにはまず、自分らしさを定義することです。
自分が言う/言わない、やる/やらないことを決める。
そういう行動規範を作って、ポリシーに従ってジャッジしていけば自然とその人らしさが表現されていきます。これは企業もそうですね。
例えば、トム・クルーズはアクションも出来る限り自分でやり、作品の制作にも関わるという強いこだわりがある俳優さんですが、昨年撮影中に感染防止プロトコルを破ったスタッフに対して激怒した音声が流出するという騒動がありました。
でも、”映画業界に対して真剣な姿がトムらしい”という印象で、むしろポジティブに受け止める反応も多かったと記憶しています。彼は自分が言うべきことを言っただけで何も特別なことはない、という感覚でしょう。だから周りも自然な姿として納得できたわけです。
せっかくなので、ちょっとnote内でも”らしさ”のある公式アカウントを探してみました。
やっぱり「ムー」さんは濃いですよね。ヘッダーからしてらしさ全開だし。
世界の怪奇・不思議現象について長年ブレずに発信し続けているパイオニアならではの味があります。うちの母が好きだった影響で今も読んでいたり、本誌に登場したまじない師さんのスタイリングを担当しているご縁もあったりして。ずっとらしさを失わない強さは、年月を重ねるほどにより強固になっていくはずです。
そしてキリンさんのアカウントもまた「らしさ」があるなぁと思う。
”よろこびがつなぐ世界へ”というスローガンをまさに体現していて、フランスの話やコラボの話題に社内のことだったり、色んな世界をnoteで繋いでいます。ビールだけでなく、もはや飲料のことだけでもないという世界観がよく分かる、伝わる発信じゃないかなぁと。紅茶は午後ティー1択です。
自分らしさはイコール自分の売りでもあるんだから、とりあえず自分で決めればいいんです。決めなきゃいけない。
これが私の自分らしさ!決めた!でいいと思う。あまりにかけ離れてたら身近な人がそっと耳打ちしてくれるでしょう。ある程度生きてたら自分の判断基準のクセとか強みみたいなもののひとつくらいは把握してる、と信じたい。これもまた企業にも言えることですね。
その上で、ファッションの話をします
「らしさ」が装いに表れてるかどうか。
これ大きなキーポイントになっていきますよ。というか既になっている。
今って、”〇〇な感じ”にしようと思えばいくらでもサンプルが出てきます。真似しようと思えば無限に参考写真や動画が出てくるでしょう。だから〇〇風とかトレンドに乗ってみたいと思えば簡単にできますよね。リーズナブルに揃えるのも難しくない。
でも、みんなそういうことを考えてるわけですよ。
それで個性が出るかな?正直ビジネスでそれをやったらアウトです。
その業界風の装いというのはあるので、それに倣えばそれっぽくは見える。特に駆け出しのときはそうしたくなると思うけど、それはわざわざ所謂レッドオーシャンに飛び込んでいくことと同義です。お勤めの人も最初はリクルートスタイルだったとしても、そこから個性を発揮していかないと。仕事現場で量産型ではダメなんです。
特に個性のない、こだわりのない服を着てどんなベネフィットがあるでしょうか。そこにお金を払うのは、語弊を恐れずに言えばお金を捨ててるようなもんです。それならばそういう服を買う資金を数枚分貯めて、らしさが見える服を買った方がいい。
正しい「掛け合わせ」を見つける
ここまで読んでいただけたならお分かりかと思いますが、単にブランド物とかを着ただけでは表現できないんです、個性は。
だからとりあえずブランド物着ようとしたりそういう風に勧めてくるスタイリストが居たらすぐに逃げてください。本当にそれが必要かどうか考えてみてください。
簡単に言うと、その人の個性×ブランドの個性で「らしさ」が作られていきます。
特にハイブランドには強い個性があるので、それを認識した上で取り入れないと個性がケンカしたり不要なメッセージが入ってきてしまう。そこを分かっていない人が多い印象を受けます。
以前”ジョジョの奇妙な冒険”とグッチがコラボしたことがありましたが、これはジョジョの第5部がイタリア編であったことや荒木先生の緻密な画風にクラフトマンシップが感じられたことなど、どちらも「らしさ」を損なわない個性の掛け合わせだったからからこそ評価された事例ではないかと思っています。
これがドラゴンボールではちょっと個性が違うんですよね。ミスターサタンはグッチ柄のシャツとか似合いそうだけども。
自分の個性を表現する上で、このブランドは必要なのか、メッセージとして合っているのか、それを考える必要があります。
いかにもスマートでデキる人のイメージだ、格や見栄えが必要だというのであれば、エルメスのネクタイやジルサンダーのスーツだったり、ディオールやサンローランのバッグとか分かりやすく良いものやブランドが分かるものを使うのもいいと思う。
でも、お洒落に気は使いたいけど無理のないナチュラルな印象だ、そんな路線でいきたい、というのであればまたチョイスが変わってくる。sacaiとかメゾンマルジェラのようなカジュアルミックスであったり、ステラマッカートニーやマルニのようにサスティナブルだったり遊びのあるブランドを選んだ方がいいかなと思う。
これが逆だと思ったような印象が得られないだけでなく、投資に対して回収ができないということになってしまいます。例としてハイブランドを挙げましたが、これは値段に関係なく起きていること。本当に勿体ないし、せっかく買うならベストな組み合わせで買ってほしいのです。
らしさがないファッションは、ただの布だ
誰しも日々洋服を着て生活し、仕事をしています。
それなら、らしさを表現できるファッションであった方がプラスになるわけだし、ビジネスでは尚更そうしない理由はないんじゃないでしょうか。
残念ながら世の中は平等じゃない。
みんなが同じ格好になったら生まれつき美形とかスタイルがいい人にスポットライトが当たるでしょう。でも、ファッションにはそれを覆す力がある。
スタイリング次第で、掛け合わせ次第で、総合力でひっくり返すことが可能です。そういう可能性を誰もが秘めていると思う。
ユニクロやZARAだとしても選びようはいくらでもあるのに、それすらしないというのは勿体ない以外のなにものでもない。そういう意味で、可能性を捨ててるような「らしさがないファッション」はただの布だ、と言うのです。
そして、それは人だけじゃなくモノやブランド、会社の見せ方も同じだと思っています。
個性と見せ方の掛け合わせ、例えば働く人の装いやディスプレイもそうだし、出来ることは色々あるはず。
個人的には、代々木上原「sio」のオーナーシェフが新たにオープンさせた業態が面白いなと感じています。
架空のホテルというコンセプトで、スタッフのユニフォームもファッションデザイナーとの協業で決めたとのこと。細部までこだわった”らしさ”は他にない個性になっていますよね。ぜひ行ってみたい。
これからは、らしさがしっかり見えるかどうか、纏っているかどうかが選択の基準になっていきます。
買い物は投票だ(Voting for shopping)という考え方が世界的に広まっていますが、それはまさに「自分らしさを表現できるサービスやしてくれる人、お店やブランドを選ぶ」ということに他なりません。選ばれる方にらしさがなければ共感されないので選択肢にも入らなくなっていく。賛否は別として、そういう潮流は考えておく必要があるでしょう。
エヴァンゲリヲンのシンジ君役・緒方恵美さんは、収録中セリフに違和感を抱いて「シンジ君はこんなこと言いません」と言い放ったという伝説があります。
そこまでキャラ「らしさ」を追求できるのって、役者として素晴らしいですよね。
僕たちも、自分らしさをもう少し追求していいんじゃないでしょうか。
人と服、色々な事柄の掛け合わせで、らしさを作っていきたい2021年末でした。
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