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大分+長崎+佐賀 蔵元アーカイブズ 2002〜05(10) 大分・クンチョウ酒造
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■古い商家の街並みが残る豆田町の一角に・・・クンチョウ酒造
日田市豆田町と云やぁ、天領として栄えた古くからの城下でさあ。江戸時代からそりゃ代々続く商家が、今でも軒を並べておりやす。この町でちょいと有名なのは「お雛様」。古くから伝えられたお雛様が毎年展示されて、遠方からのお客人で賑わうんでやんすよ。
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ちょいと上画像を見てやっておくんなさいまし。豆田町の南の入口から入りましたところにあります、右の町屋。
これはかの“フーテンの寅さん”、あの故渥美清が活動写真の撮影に使ったという商家でやんす。そういう風に、なかなか風情のある町。
実はこの一角に元禄の時代から酒造り一筋ってぇ蔵元さんがごぜえやす。それが『三隈』を造ってらっしゃる「クンチョウ酒造」さん。
■ガイド本に載っていた、アイデア美人女将に「!」
あっしもね、豊後に暮らしていた6年前ぇまでは、よくクンチョウさんの濁り酒は好きで、飲んでいたんでやんす。だから、懐かしひって云ふか、愛着のある蔵元さんでさあ。
ところで今回、ちょいとお邪魔してみようかってなったのが、家人がある店で買った地元版元の案内本『旅さき本』の日田市郡編を見ちまったからでして・・・。いえね、「ほら。『三隈』の蔵元さんってここでしょう? 女将さん、美人じゃない?」なんて家人が云うもんっすから、つい頁を見ちまった。
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・・・いけねぇ、いけねぇや。家人もこっちの下心は先刻御承知、わざと話を振ってきやがる。
猛牛「ふ~~~ん。いろいろと知恵働かしてるお方なんだねぇ。蔵元の女流平賀源内先生ってぇところでやんすか(-.-)y-゜゜゜」
■元禄期から残る代々の建屋。「薫長酒蔵資料館」に突入す。
ぬぅあんて斜に構えたところで・・・やっぱり訪ねたわけでやんすよ。
蔵の前には、物見遊山自動大型籠が何台も止まって、客人がたくさん降りておりやした。観光蔵として豆田町の繁栄のために開放してらっしゃる、という感じでがしょうか。煉瓦造りの高い煙突が聳えているのが、いかにも蔵元らしい風情でごぜえやす。
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さっそく、玄関口から入ってみるってえと、右横に試飲即売場。通路を奧にズズズイ!と進みまして、「薫長酒蔵資料館」がごぜえやした。
資料館は二階にありまして、階段を登ろうとします。ふと横に目ぇ遣ると、高札がある。クンチョウさんも古い蔵元さんでやんすね。それにゃぁ元禄15年からの蔵ん建物が残ってると書いてありやした。
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急な階段を昇りまして、見渡します。資料館の中、いささか広うござんす。 クソ暑い日田ん町にあって、やはりひんやりとするのは、蔵元さんらしいところで。
さすがに歴史がごぜえやす、道具類もいろいろと揃っている。見て参ぇりやすと・・・おろ! 麹造りに使われます「箱」と「蓋」がありやした。
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そうそう、先日、日向で草鞋を脱がせていただいた小玉醸造さんを思い出したんでやんす。
人手が足りない分、蓋ではなく箱を使って省力化するということでやんしたが、こちらクンチョウさんでも同様。かつてはこの箱を使って少ない人数で手際よく酒造りを行っていたそうでごぜえやす。
大型の箱の横には、ちょいと小ぶりの「蓋」が並んでおります。
ちょうど下左の画像でやんすが、左側の一列が「箱」、真ん中から右が「蓋」でやんす。ほら、大きさがだいぶ違う。
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こうやってみると横幅でも2倍くれえ「箱」がデカイのが解りやすよね。
ところで。クンチョウ酒造さんは、鑑評会でも優等賞を連続受賞、しかも全国鑑評会でも金賞を頂戴したという優良蔵。それも、元禄以来の古くからの技というものに裏打ちされてるんでやんしょうか。変わるもの、変わらぬもの・・・。
■変わらぬもの・・・未だ現役だった正調粕取『三隈』!
さて。資料館から試飲場へと戻ろうと、通路を歩いておりますと、試飲場の手前に小さな資料室がごぜえやした。ちょっくら寄ってみるか!と、中を覗いてみますってぇと、商品のボトルが展示されておりやす。
ん~~~ん。高塚で見た『三隈』25度の一升瓶、4合瓶・・・ん?? 一番上の段におんなじ『三隈』であっても、違うラベルがある! よーーーーく見ますってぇと。おっとどっこい!これが41度の原酒だっ!
押っ取り刀で、試飲場へととって返します。
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試飲場に戻って参ぇりますと、即売の棚が並んであります。
しかし、幾ら探しても、さっき見たボトルが無ぇ。しかし、一升瓶を見ますと、25度の他にも、お!35度もある! 4合瓶も箱入りだぁ! 嬉しいじゃあねえかぁ。
試飲場にゃ二人の女性が立って、試飲のお世話をしておりやした。そこでちょいとお一方にお話を伺ってみたんでぇ。
ところがそのお一方をよく見るってぇと、さっきの“日田細見”の本に載っていた女将さんによく似ている。いや!、女将に違ぇ無ぇ!
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猛牛「資料館には、兜釜とかセイロは、保存されて無いんでやんすか?」
女将「いえいえ。うちではいまでも粕取焼酎を造っておりますので、ちゃんと使っております。だから展示できないんですよ」
猛牛「こちらでは、未だに粕取を造ってらっしゃるとは、見上げたもんだぁ! さっき高塚様にお参りしましてね。そこの茶店で『三隈』を見かけて、買ったんでやんすよ」
女将「ありがとうございます。こちらではまだまだ飲まれておりますね」
いいねぇ・・・・。女将さんもだけど、今でも粕取が現役だってのが。
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猛牛「ところで、隣りで見かけた『三隈』の41度は、これは今は終売でやんすか?」
女将「いえ。こちらにございますよ」
美人女将が指さす先を見れば、瀟洒なボトル。商標は「KASUTORI」と書いてある。商品化にも熱心というアイデア女将でやんす。この再包装も女将さんの発案と、あっしは見て取りやした。
首に下がった栞を覗いてみますと、蔵元の独り言ってぇことで、
「粕取り焼酎をひとくちで表現するなら頑固もんの焼酎。いわゆる飲みやすい焼酎ではなく、ちょっと自己主張の強い個性派焼酎。飲みたい人だけがのんでくれればそれでよし」
と書いてある。
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あっしのような贔屓の引き倒しの好き者ではなく、蔵元さんがこう云い切るのに、あっしは惚れちまったね。「飲みたい人だけがのんでくれ」と云いながら、ちゃんと造り続けるその姿勢が素晴らしいとあっしは思うんだぁ。
さて、“飲みたい人だけが飲む”てぇことで、さっそく25度、35度、そして再包装なった41度の『三隈』を試飲させていただきやした(注:41度は現在『KASUTORI SHOCHU』という商品名になっている)。
41度も飲ませていただいたってぇのは、ちょいと中身とボトルの「差」がどれくらいあるか?ってのが知りたかったんでがすよ。ボトルは瀟洒だが、中身はどうだ?と。実を云うと、あっしやあ、もしや吟醸粕もろみ取りが入ってんじゃないかと勘ぐっておりやしてね。
で。クイッ!と駆けつけ三杯! 掛け値無しに云わして貰ふが、美味いね、美味い。あっしは押しの強い酒が好きでやんす。ってえことで、特に35度、41度は甘さが強く、イケル。25度は飲みやすさでお勧めでがんす。トライアルにはぴったりでがしょう。
あっしは41度を買って帰ぇりやした。包装・図案は美人女将さんのセンスか、現代的な意匠なんだが、中身はド正調の粕取焼酎! だからこそ、意匠が新しくなってすこしでも手に取って貰える客人が増えるなら、あっしぁそれがイイと思いやす。
■『大海』を求めて、彷徨う豆田の夕暮れ。
時間も過ぎ迫って参ぇりやした。もう町が店じまいする午後4時に近づいておりやす。あのgoidaのじに『三隈』入手の報を伝えますってぇと、返事の早飛脚が。
goidaのじ「三隈ゲットとのこと、良かったですね。僕も行きたいです。さて、『大海』は見つかりましたか?」
おっと! いけねぇ、『大海』をまだ見つけちゃいねぇ!(>_<) 『大海』と云やぁ、おんなし日田にある蔵元さん、『角の井』の井上酒造さんの銘柄でがんす。
そこで家人と一緒に、ふたたび豆田町をうろついて“土産物”を買いに行こうかという案配に。あっしぁ、土産見るフリして、酒屋ばっかり探しておりやしたσ(*^^*)
家人「ねぇ、この資料館にちょっと入ってみない?」
猛牛「(゜゜;)(。。;) 」
都合4軒ほどの酒屋が豆田には集まっておりやすが、どこぉ覗いて見ても『大海』は置いちゃあいない。さすがに豆田はクンチョウさんのお膝元だ、云わばクンチョウさんの“城下”だ。こればっかりは致し方ねぇでやんしょうねぇ。
しかしどの店にも、しっかりと『三隈』は置いておりやした。豆田では正調粕取がちゃんと店頭に並んでる・・・これだけでも素晴らしいことじゃねぇかと、あっしは感動したんでやんすよ。
日も少し蔭ったそんな時分、町を一回りして戻って参ぇりやすと・・・、
家人「あ! この資料館、もう閉まっちゃったじゃない!(-"-) もぉ、自分が見たいところばっかり回ってぇ (`´) 私のための旅行だなんて、ウソばっかり!)`ε´( 」
猛牛「ちょ、ちょいと待ったっ! ちょいと待っとくんな! 」
♪女に男 あげあし取られ
細い絆の 幕引き ひかれ
愛の不足を 粕は待たない
粕はいつでも 末舞台
女に男 あげあし取られ
終の在庫に 誘い 誘われ
心うらはら 舞う猿芝居
粕はいつでも 末舞台
(了)
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