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その瞬間、『起業家たちはどう生きるか』 インド起業編

このようなタイトルで、釣りたい訳では決してございません(笑)
あまり赤裸々に語られていないスタートアップ創業期の舞台裏、しくじり談をお届けし、少しでも今後、挑戦される方の後学になればと考えております。

簡単な自己紹介ですが、私は現在、インド(バンガロール)にて、ソウルメイトマッチングのアプリ、日本でコミュニケーションインフラサービスを展開するスタートアップのしがないFounderでございます。

私たちは、2023年8月位から、本格稼働し、エンジェルラウンドでの資金調達、インド現地でのチーム組成を完了し、プロダクト開発に励んでおりました。ここまでは、色々ありながらも前進しておりましたが、歯車は年始に突如狂い始めました。

1.インド式給与交渉

現地で採用したマーケター二人から、理不尽な給与交渉を頂きました笑。

・一人は、インドトップのデザインスクールを出ていているにも関わらず、現状の給与には妥当性が無い。デザイン、マーケを両方やっているから、上げてほしい( 当初から両方やって頂くことは契約書折込済みですw)
・一人は、中々シード期のスタートアップにおけるスピード感への順応に苦しんでいるタイミングで、謎の雇用条件交渉が入りました。

※インドでは、大抵の20代の若者達が、20代のうちに最低3回くらいは転職し、ベース給与の底上げに努めます。(インドの一回あたりの転職による給与上昇は26%程度です)

特例をつくっては、その他のメンバーへの影響も発生し得る為、難しい旨を伝え、最終的には、二人に去って頂くことになりました。

それだけに留まらず、1月中旬に続け様に事件は起きました。
Plug and Play、JETROさんに採択いただいたUSでのスタートアップ支援プログラムに参加するために、米国に渡航していました。

渡航期間中に、インドでのソウルメイトマッチングアプリ「native. 」をAndroidアプリをテストユーザー100名に対し、ローンチをしました。

スタートアップらしく、泥臭くバンガロールの市街地で営業部長の長男坊、広報部長の次男坊を連れて、女性ユーザーの獲得に勤しんでおりました。

反応も悪くなく、テストユーザーとのインタビュープロセスを経て、本番ローンチに向け、プロダクトの磨き込み、マーケティングの仕込みをしている際に、事件は起きました。

2.突然のシステムダウン


共同創業者間契約の進捗を問う内容

全ては、このメッセージから始まりました。共同創業契約書を締結する動きで昨年末に決まり、年始から契約作成に向けて動いてたところでした。完全に私の落ち度で猛省しておりますが、インドタイム( Tomorrow Never Comeの国)の計算を入れず、契約書を作成するインドのリーガルファームに言われるがままのドラフト作成期間である1週間程度を相手には伝えてました。
一方で、3週間経過しても尚、進展を見せない状況に痺れを切らしかけていた背景からのメッセージです。( 共同創業者間契約は、株式の分配、条件を決める重要な契約書な為、このメッセージを送る心情も重々分かります)

追い討ちをかけるように、メッセージが来ました。

要約すると
毎回自分からリマインドしているが、このタスクを重要視しているのか?
②優先度高く迅速に対応すると言っていたけど、間も無く1ヶ月経過する。
この契約が締結完了し、クリアになるまで、本日システムを停止する。

ちょうど、当日、USにてアクセラレータプログラムで終日埋まっていた為、このメッセージに気付かず、気付いた時には時すでに遅しでした。

サービスを今停止するという内容

!!!!!!!!!!!!!

(リアルメタルギアの音がしました)

気付いたタイミングですぐにコールし、3時間近く対話しました。
35歳の良い歳したおじさんが、しっかり目に涙しました(笑)

  • まず、共同創業契約が遅れたことに対しては完全に謝罪しました。

  • 日々のコミュニケーションスタンスの相違も併せて謝罪しました。

  • ただ、国内で約2万人ほどユーザーがおり、ノンマーケでアクティブに日次100名程度が新規流入している状態でのシステムダウン。今回の件で、ユーザーを巻き込む事態に発展させたことに対し、どうしても気持ちの整理がつかず、倫理観を超えた状態で、今後どうしたいか再考させて頂きたいと伝えました。

同時に、数十名程度のユーザーからサービスが使えない旨のご報告をいただき、複雑な気持ちで、謝罪、ご返答差し上げました。そして、USからの12時間に渡るフライトの中で色々考えました。羽田空港に着く頃には、気持ちは固まってました。

3.日本帰国直後の直談判


翌日位に呼び出し、あの日と同じく3時間くらい膝を突き合わせて話しました。結論から伝えると、『チームを解散して、もう一度やり直したいと思う』と告げました。

向こうも突然の通達に驚いた様子で、説得をされました。ただ、自分の中での気持ちは決まってました。2023年8月に、本格稼働スタートさせた創業半年程度のスタートアップ。スタートアップをマラソンに例えると、まだ3km地点。
『残り40kmを一緒に走り切れるのか?』というシンプルな問いに対し、答えは『No』でした。信用関係が良い仕事のパフォーマンスを生む上での必要最低条件とした時に、そこが崩れた今、ともに未来を描くイメージが湧きませんでした。そして、妻からの「あなたは、native. (自然体、生まれつきの)と言っているけど、〇〇さんと話したりしている時がnative ( 自然体 ) ではないよね。。」という言葉が妙に刺さり、フラッシュバックされました。

長時間の議論の末、離婚が決定。その流れで、プロダクトコードの話になりました。
向こう側の主張としては、自分が開発したので、そのまま持っておくとのこと。NDAは、共同創業者間契約に含まれる予定だった為、この状態では、開発物は先方の帰属物になる認識は、うっすらとあった為、コードを買い取る方向で議論が展開。最初に私の方からその場で自己権限でコミットできそうだと提示した金額は180万円から200万円程度でした。
( ロジックとしては、今まで給与をお渡しできておらず、エンジェルラウンドが完了したので、そろそろ30万円くらい払い出そうという矢先だった為、稼働月数を半年程度で簡易計算しました)

全く納得感がなさそうな状態で、その場は終わり、翌日、請求書が届き、開くと以下の金額が目に飛び込みました。

残キャッシュが、1,500万円程度だった為、3分の1の金額が支出され、ランウェイが急激に短縮されるなかなかにヒリヒリするラインでした。

4.契約交渉決裂

時間を買うのか、それとも、最低でも3ヶ月程度、時間をかけてもスクラッチで作り直すのか、色々決めあぐね、大変多くの方からご助言をいただきました。

投資家の岡安さん、Relic 大庭さん、アンパサンド後藤さん、01 Booster 大西さん、spectacle岩永さん、ユニコーン10メンターの椎葉さん、bTANK 代表瀬戸さん、ProfinanSSキム兄さん、Google 堂田さん、AWS柳さん、GB時代のボス深山さん、大先輩の中川さん、IVSのKeitaroさん、Bit Star 渡邊さん、大久保さん等々、ここには挙げきれない方々にアドバイスを頂きました。

ご相談させていただいた皆様、大変貴重なお時間いただき、有益なアドバイスいただきまして、本当に有難うございます。

最終的に、時間は買えないということで、関係者との議論の結果、購入する方向で決まりました。

契約書の交渉、最終化プロセスを進めていく中で、引き継ぎ担当のエンジニアを紹介させて欲しいというリクエストを依頼しました。金額が金額なだけに、投資家承認が必要なレベルで、周囲の関係者から私が非エンジニアということで、契約内容の最終化とシステムの状態を把握する為に依頼してくださいリクエストがあったという背景でした。

ご本人としては、金額、契約内容的に譲歩している中、引き継ぎ担当のエンジニアを紹介して、コミュニケーションして欲しいというリクエストは受け入れらるものではなかったようで、そのやり取りの直後に、連絡が止まり、一時的に戻していただいた2回目のシステムダウンが発生しました。事実上、交渉決裂のアナウンスとなりました。

5. スペシャルサンクス 地元ヒロシマ

奇跡的な出逢いを産んでくださった ひろしま Camps

今回、非エンジニアの私が落ち着いて状況に対応できたのも、本当に周囲の方々のサポートのお陰です。なんと言っても、LTSの星山さん。ヒロシマユニコーン10というスタートアップアクセラプログラムの運営を担う広島のスタートアップの雄。
元々、エンジニアリング会社を経営されており、双方の事を知っているということで、買取契約に対する交渉サポート、アドバイスを大分親身に乗っていただきました。星山さんの存在無くしては、ここまで落ち着いた状態で適切な進め方、意思決定は出来なかったと思います。この場を借りて、深く深く感謝申し上げます。

難局を支えてくださった恩人

そして、契約交渉、コミュニケーションサポートだけに留まらず、開発体制、現在の状況を見るに見かねて、エンジニアの方をご紹介いただいたり、運営されているスタートアップコミュニティスペースにて、素晴らしいデザイナーとのご縁を演出いただきました。お二方とのご縁があったからこそ、今、この瞬間も前を向いて進めております。

6.今回の学び

①共同創業契約、NDA、ドメインを保持すること

本当に当たり前の事でお恥ずかしい限りですが、今、共同創業を検討されていらっしゃる方がいらっしゃいましたら、まず真っ先に共同創業者間契約の締結をお奨めします。但し、パートナーになり得る方がまた企業にお勤めされていらっしゃるケースもあるかと思いますので、臨機応変な対応が要求されます。
そして、これも釈迦に説法ですが、ノンテックFounderの方には、Git Hub、AWS、GCP、iOS/Google Appsアカウント等々、あらゆる開発関連のプロダクトは、ご自身でアカウント登録、管理されることを強く推奨します。

②志レイヤーで分かち合える方を選ぶこと

良く共同創業者は、スキル的に相互補完性の高い人を選んだ方が良いと言われます(例:マーケティング、営業が得意であれば、テック、ファイナンスに強いパートナーを選ぶ)
一義的にはYesですが、それだけだと有事の際に踏ん張りが効きづらいなというのが実体験です。パズルとしてパチッとハマる感覚は大事ですが、そこに加え、接着剤( 数年後にどのようなビックピクチャーを描くのかへの共感強度)が無ければ、いざという時、いとも簡単にピースの結合部が剥がれてしまいます。私の挑戦は、インドを主軸に現地の若者達に出逢い革命を起こしたいという志からスタートしており、インドに対する想い、解像度が低いパートナーにとっては、想いをひとつにすることは酷な状態だったのではないかと思います。

③主演と脚本家感覚を持つこと

このような事を言うと関係者からお叱りのコメントが来るかもしれませんが、誤解を恐れずに申し上げるとこのような事態が発生した瞬間から、少し楽しめている感覚を覚えてました。過去、色々やらかしてきている私ですが、その度にネタとなり、周囲の方に楽しんでいただけている気がしております。もちろん狙っている訳ではなく、都度の学びを二度と繰り返さぬように日々精進しておりますが、『NetFlixの人気コンテンツの如く、次のチャプターも思わず夜ふかしして観たくなる人生なのか 』という俯瞰視点で、常時セルフモニタリングしており、今回の有事も、今後どのような展開を生むのか、本人も予想だにしない全く異なる展開が待ち構えているのではないかと思い、ワクワクしております。もちろん関係者の皆様にはご迷惑、ご心配をおかけしている事は事実ですので、結果、存在でお返しできるように精進します。

7.今後の展開

緩やかなピボットをすることになりました。

新プロダクト概要🆕

・日本国内では半年で約20,000人、インド国内は1ヶ月で1,000人程度のユーザーがマーケティングコストゼロで獲得できており、一定のニーズは検証済み。
・native. cardの多様なライフシーンカテゴリー( 恋活/婚活、キャリア、子育て、旅、引越し等々)を取り揃えたサービスECアプリの開発にシフトする方向。

今後のローンチスケジュール🛫

native. は、情報過多社会におけるあらゆる人生の意思決定を支えるサポーターとして、本国のインド🇮🇳、母国の日本🇯🇵において、様々なシーンでの展開を予定してます。ぜひお楽しみにしていただけると幸いです。

1️⃣ 「native. for Career👨‍💻」「native. for Love💑」 ( 2024/3/11ローンチ)
2️⃣ 「native. for Biz (HR) 👩‍💼」「native. for Kids 👶」 ( 2024/4ローンチ)
3️⃣「native. for Life 🏠」「native. for Travel 🏖」 ( 2024/5ローンチ)
4️⃣ あらゆるシーンにおけるnative. card が、都度/サブスクで購入できる「native. Life」 ( 2024/6ローンチ)
5️⃣ native. card が、毎週、毎月のペースで配信される「native. AI」 ( 2024/7ローンチ)

■ピボットの背景 

1.タイミング、志との整合
・プロダクトコードが無くなり、改めてアプリの再開発が必要な状態。少なく見積もって、3ヶ月、場合によっては、半年程度の開発期間を要する見込み。
・一度、強制的に立ち止まる機会を得た今、ステップバックして、改めて進むべき方向性を定めるチャンス。
・何を成し遂げたいかという創業時の志に立ち返り、「人間関係における分かち合えなさを解消し、より滑らかで穏やかな社会を想像したい」という事にブレはなく、山の登り方を多少スライドさせる程度という解釈で、新たな構想を着想。

2.市場浸透、拡大可能性
・アプリMVPをテストローンチした反応として、「native. card」( 生年月日入力後に発行されるパーソナルカード)に対する反応は良好。
・インドの人口は、14.5億人ですが、マッチングアプリとなると対象人口が10分の1程度となる。
・他方、native. card発行サービスの場合、占い等のスピリチュアルサービスを嗜好する人は、8億人程度まで拡張可能。
・当該領域(インド国内、占星術)の市場規模は、現状来年までに1兆円規模(CAGR 10%程度)まで成長する見込み。
・加えて、粘着性が高いサービスへの展開(生成AIを用いた動的コンテンツの提供)とは可能。

3.投資家コミュニケーション
・インドのChirataeというトップVCのPartner、日本のグロービスキャピタルパートナーズの仮屋薗さんと壁打ちの機会を頂きました。
・マッチングアプリの領域はユニットエコノミクスの成立難度が高く、VC調達向きではない。加えて、経営資源の投下もマッチングなのか、native. cardの販売なのか集中した方が良いとのアドバイスを両者から頂きました。
・もちろん、全てに迎合し、一意見を真に受ける必要はなく、上述の内容は、スタートする前から、既知の事実であることは重々に理解してますが、諸々の背景から、複合的に判断し、今回の意思決定に至りました。

8.終わりに

ビジネスパートナーが去り、LINEユーザー2万人、Whats App1,000人のユーザーを失い、プロダクトコードも無くなりました。ただ、ゼロからまた始める妙な爽快感、清々しさがあります。

このような不恰好な状況下でも、一緒に走ってくださっているインドのメンバー、必死に救済サポートをしてくださっている方々、この場を借りて、深く深く御礼申し上げます。皆さんがいるからこそ、また前を向いて歩き出せております。決して、この御恩は忘れないですし、必ず恩返し、もしくは、Pay Forward精神で、周囲の方々に還元して参ります。

旧アカウント(ユーザー20,000人)
新公式アカウント(ユーザー0人)

そして、本日、再開発したnative. cardの発行サービス( キャリア版、恋愛版)が再度ローンチをさせて頂くことになりました。

本当に有難いことに、周囲から何かお手伝いできることはありますか?と聴いていただけます。お願いしたい事としては、極めてシンプルです。

サービス改めて触っていただき、周囲の大切なご家族、友人、知人に拡めていただけると有難い限りです。今回、改めて感謝、お待ちいただいた皆様への謝罪の意を込めて、本日20時から24時間native. cardを発行し放題キャンペーンを実施することになりました。

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今回、全てを赤裸々に綴り切ることはできませんでしたが、可能な限りで生々しいお話をし、次世代の起業家の方々が、同じ想いをしないようにお伝えさせて頂きました。また、世界のどこかでお逢いさせていただいた際には、笑って肩を叩いていただけると幸いでございます。

そして、奇遇にも、3.11という日本人にとって特別な日に改めて、復活の狼煙を上げる事ができ、有難い限りです。原爆投下後の絶望の焼け野原から、奇跡の復活を果たしたヒロシマに生を受けた者として、今後も幾多の困難が訪れることかと思いますが、その度に、何度でも何度でも這い上がり、しつこく立ち上がります。そして、東日本大震災、原爆でお亡くなりになられた方々の分まで、全身全霊で生き抜きます。

破天荒な自分ですが、今後とも、どうか温かく見守っていただけると幸いです。皆様の大変貴重な人生の時間を使い、長文にお付き合いいただき、有難うございました🙏🇮🇳

PS:何か類似したケースに直面して、苦しまれていらっしゃる方がいらっしゃいましたら、私でよろしければ、お気軽にDM下さいませ🙇‍♂️
そして、この2ヶ月間、支えてくださったDragon Ashの『NEW ERA』の歌詞で締め括れればと思います。『今日だって僕達は 生まれ変われるよ』


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