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【2020 J1 第27節】横浜F・マリノスvs浦和レッズ マッチレビュー

1.はじめに

 さて、リーグ戦も残すところあと3試合。ホームでの試合はこれが最後ですね。終わりよければすべて良し。とまではいかないでしょうが、それでもホーム有終の美を飾りたいです。連敗し続けて嫌なムードでACL迎えるより、勝って晴れやかな気持ちで臨みたいですしね。お相手は再開初戦で苦渋を舐めさせられた浦和レッズ。この試合はどうだったのでしょうか。いってみましょう。

2.スタメン

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■横浜F・マリノス

4-2-1-3の布陣
・前節と9人も先発メンバーを入れ替える
・オビがJ1デビュー
・トップ下にオナイウが入る

■浦和レッズ

4-4-2の布陣
・前節と同じ先発メンバー
・前節から中10日で試合に臨む

3.中央に押し寄せるマリノスの波

 この試合、注目すべきは中盤中央のエリアでしょう。マリノスは終始ここをズタズタに切り裂いていました。そこに着目していきます。

■前掛かりな浦和

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【POINT】
両SHも高い位置に上がり、4-2-4のような形で試合を進める浦和

 浦和はかなり前掛かりに試合へ入ります。試合前インタビューで大槻監督は「前が後ろを引っ張るくらい積極的にいきたい」と述べていた通りでした。

 具体的には、両サイドハーフが高い位置を取り、全体として4-2-4-のような形で試合を進めていました。基本的に前の4人は攻め残りをします。というのも、奪われたらこの4人にボランチ加えて即時奪回するため。

 エヴェルトンは前に出ていっての守備を得意としています。彼はどんどん突進させると持ち味が出るでしょう。また、後半青木と縦関係になったことからわかるのですが、長澤も前でプレーすることが得意な選手。なので、このボランチコンビは前に出て奪い、高い位置でプレーさせることに特化していることになります。

 実際、上の場面のように多人数でのショートカウンターが発動したこともありました。しかし、前に出ることはメリットばかりではないですよね…

■積極的な前と消極的な後ろ

 前に出るということは、かわされると後ろに広大なスペースを空けることになります。浦和はディフェンスラインを低く設定しているため、前線との間が大きく広がります。前に出て高い前線4人。低いディフェンスラインを敷く守備陣。間延びしたスペースを埋めるのは、ボランチの2人だけ。彼らだけで、ここを何とかしなければなりません。

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 しかし、マリノスはそのスペースに多くの選手が入っていきます。

・ボランチである和田と扇原
・トップ下であるオナイウ
・内側に絞ったサイドバックの小池とティーラトン

 どうしても誰か空いてしまいますよね。特に小池は捕まえづらかったように見えました。サイドハーフのマークにもならず、ボランチは手一杯。前節のコメントでスペースの活用について話していましたが、それをこの試合で体現していました。走行距離13km越えも圧巻でしたよね。

 さて、これに対策を打つためには、ざっくり以下のことが考えられます。

・ハイプレスをやめ、ディフェンスラインを基準にしたブロック守備に移行する(守備位置を下げる
・ハイプレスは継続したまま、前線のプレスバック速度を早くしてスペースを埋める(走力にものを言わせる
・ディフェンスラインを高くする(守備陣に頑張ってもらう

 簡単に言うと、『後ろを上げる』か『前を下げる』かしないといけないということです。縦に間延びしてるので当然ですよね。そして、浦和は『後ろを上げる』ということをしていたんですよ。

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 しかし、それが失点に繋がっています。下がっていった選手にセンターバックがついていったことで後ろが同数。または、スペースを空けてしまっている状態。勇敢な行動が、見事裏目に出てしまいました。

 大槻監督は、試合後にこんなコメントをしています。

 入りのところからもう少しコントロールしてというのはありましたけど、メンタルも含めて、前半の入りのコントロールを失ったところがすべてかなと思っています。

 恐らく早めに失点して自信を失ったという旨なのですが、これ守備陣に恐怖を植え付けたという点も言及してると思うんですよね。自分のした行動が失点に直結すると、その後のプレーが委縮してしまいます。スピードでぶっちぎられた相手に対し、ラインを上げろと言われても怖いですよね。3点目以降、浦和守備陣が前に出てくる頻度は減ったように思います。こういう意味でも、点を取った形がよかったと言えるでしょう。

■繋ごうとする意識が裏目に

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・浦和はビルドアップの際、全体的に広がる
・その状態でボールを失うとスペースを相手に献上してしまう

 この試合に限ったことではないですが、浦和は後ろから繋いで攻めようという姿勢が見られます。特徴は、フィールド目一杯使うために広がることでしょう。

 広がることは、相手1人で2人を見る守備をさせなかったり、プレッシャーにいくまで時間をかけさせるというメリットがあります。しかし、失ってしまうと広大なスペースを相手に晒してしまうデメリットも。今節はこのデメリットが目立ちました。(余談ですが、マリノスは真逆のやり方を取っています。たぶんカウンターが怖いことと、パススピードで上回れるという考えからでしょう)

 広がっている状態から蹴り出して相手に奪われる。守備陣形を整えるため時間がかかるので、準備完了したときにはゴールへ近い状態に。迎撃位置が低くなることも、浦和のハイプレスがあまり成功しなかった要因の1つだと感じました。

4.後半に修正はするけども

 浦和は後半になり、エヴェルトンに代えて青木を、宇賀神に代えて山中を投入します。前者は、前向きな守備者を一人下げ、幅広いカバーエリアを持つ選手を入れてライン間をどうにかしたかった。後者は、3点差に追いつくため、攻撃的な選手を投入したいという意図だと思います。

 自分はデンも投入してくると思っていました。槙野や岩波よりアジリティがあり、前方守備にめっぽう強い。彼を入れることで、ラインを高くすることが可能です。前述した通り、メンタル面のこともあったので、なおさらそう思います。しかし、そこは代えなかったので、ラインの高さは据え置きでした。

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・岩波がオナイウに出ていって潰す
・2トップの片方が下りることで、ビルドアップしやすい状況を作る

 また、後半からやり方を少し変えてきました。まず、岩波を前に出してオナイウに当てること。ビハインドなので、後ろが同数になるリスクは許容したのでしょう。それは大槻監督の「少しオープンなところを許容して、スペースを作り出してやるという選択肢を取りました」というコメントにも表れています。

 また、後方からボールを繋ぐため、張っていた2トップの片方が下りるようになってきます。基本的には武藤が、レオナルドに代わってからは興梠が下りてきました。これにより、ある程度ボールを保持でき、安定した攻めが行えるように。しかし、65分ごろからスタミナが切れ気味になってきます。そうなると、互いに間延びしている中オープンでの刺し合いになります。こうなればマリノスの土俵。試合が終わってみれば、6-2というスコアになっていました。

 ここまで浦和がきつかったのは、オープン展開(縦に早い攻め)を得意にしているチームと直近で当たっていなかったからでしょう。数試合チェックしましたが、この試合と同じアプローチで試合に臨んでいました。今まではこのやり方でも問題が出ませんでした。しかし、マリノスの攻めが早く、こちらのプレースピードを上げないと対応できない。そして、それに追いつくことができなかった。もし、鹿島や川崎が前の試合だったら、結果も大きく違ったでしょう。慣れというのは怖いものです。

5.スタッツ

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■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

6.おわりに

 鹿島戦のときに書きましたが、まさか後ろが小池になってここまで勇躍するとは…それだけが要因ではないでしょうが、やはり松原より小池の方が相性いいように思います。水沼のいて欲しいと思うところにいましたし、彼のプレーしやすいテンポを作り出せていました。やはりサッカーはチームスポーツです。個人ではどうにもならないんですよね。改めてそれを実感しました。

 また、先発を9人変えても同じサッカーができたことを誇りに思います。もっと言うと、昨季からいる選手って、ティーラトン、槙人、和田、扇原の4人だけなんですよね。しかもレギュラーとしてコンスタントに出場していたのはティーラトンと扇原のみ。それでも同じサッカーができるんです。これこそ今季の積み上げと言えるのではないでしょうか。特殊なシーズンの中、内容をかなり重視していたと言うボス。それがきちんと実を結んでいた証だと思います。

 この試合でハッキリしたのですが、ACL見据えた負荷調整を明らかにしています。恐らく、次も先発メンバーは大きく変わるでしょう。それでも同じサッカーを我らは見ることができると思います。その誇りを胸に、次の試合も精一杯応援しましょう。

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