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【2020 J1 第31節】横浜F・マリノスvs鹿島アントラーズ マッチレビュー

1.はじめに

 連戦が終わり中5日。ものすごく長いように感じてしまいました。さすがにこの期間で体がリフレッシュすることはないと思いますが、頭の整理はできたはず。駆け抜けてきた連戦の反省がどのように活かされるか。そんな楽しみを持ちつつ迎えたThe CLASSIC。振り返っていきましょう。

2.スタメン

スタメン

■横浜F・マリノス

4-2-1-3の布陣
・畠中が出場停止のため、出場停止明けの槙人が先発

■鹿島アントラーズ

4-4-2の布陣
・アラーノが出場停止。和泉が負傷でベンチ外。三竿が負傷でベンチスタート
・エヴェラウドを左サイドで起用

3.目まぐるしく変わる試合展開

■予想外だった鹿島の守備

 名古屋戦はアップで負傷した三竿に代わり、急遽出場した永木。チームのやり方を整理する時間がなく、三竿のやるべきことをそのまま任されることに。彼とは機動力に差がありますよね。上下動のスピード差が影響し、ハイプレスがあまりハマりませんでした。前節はこのことを考慮して永木を評価すべきでしょう。

 さて、この試合はどうなるか。最初から永木でいくと決めているので、彼がいる前提のやり方を事前に共有できる状態。なので、名古屋戦のとき以上に中央は固くなるし、手強くなると思っていました。そして、機動力のなさを補うため、あまり前からプレスをかけてこないと予想。しかし、これはあっさり裏切られてしまいます。開始早々から積極的なハイプレスを敢行する鹿島。驚きました…

鹿島の守備

永木はマルコス番
・レオシルバが前に出て、片方のボランチを見る
・もう片方のボランチはフォワードやサイドハーフで受け渡す
・最後方は4バックを控えさせ、数的優位を作って素早い攻撃を警戒

 永木は主にマルコスをマーク。トップ下につくことで、前へ出る回数を抑る。上下動が減り、機動力のなさが目立たなくなります。そうすると、前へ出るのはご存知レオシルバ。強度の高いプレーを繰り返せる彼にはうってつけの仕事だったでしょう。

 ボランチをうまく使い分けた鹿島。しかしこれだと片方しか塞げません。もう片方はどうするかというと、フォワードや逆サイドのサイドハーフが受け渡していました。サイドが変わったらレオシルバを交えてスライド。マリノスの選手たちが多少位置を変えても、鹿島はマークをほとんど間違えませんでした。

 サイドハーフは内に入ったサイドバックを見るという役割が主ですが、外に開いたときはちょっと緩くなることも。しかし、ボランチを空ける頻度が少なかったことから、中央を封鎖したい意思の強さを感じました。

■入口はサイドから

マリノスビルドアップ

【POINT】
比較的空きやすいサイドにズレを作る

 守る優先度と、サイドハーフの守備タスクの多さからか、サイドは比較的空くことが多かったです。特に小池は内外の使い分けがうまく、荒木の視線がズレたときにススっと移動。後ろからボールを受け、前線へ展開します。先制点のときなんかわかりやすいですよね。

 鹿島のプレスに完全に屈したかというと、前半はそうでもなかったと思います。このようにかわせることも多くありました。概ね、前半はマリノスが望むサッカーができていたと思います。

■狙いは一気に局面を進める展開

鹿島の攻撃

・フォワードはハイラインの背後を狙った裏抜け
・逆サイドは対角パスを受けるため外に開き気味
・中央にある空間はあまり使われない

 対する鹿島の攻撃は、裏抜けかサイドチェンジが主体。マリノスを考えれば当然ですよね。相手からボールを奪うと、まずは最前線を確認。次に対角を見る。味方がボールを受けられそうなら長いボールを送ります。

 元々鹿島は縦に早い攻撃を目指したスタイル。マリノスの弱点もそれに合致するので、このような展開になるのは必然だったでしょう。エヴェラウドをサイドに配置したことからも、それが汲み取れます。

 これを全選手が狙っているため、マリノスのライン間や中盤にできる空間はあまり使われませんでした。中央からパスを展開して押し込むより、一気に局面を進めて仕留める狙いだったのだと思います。

■縦に早い攻撃と、積極的な守備が生む展開速度

鹿島ライン間

 前述した通り、マリノスはライン間をほとんど使われませんでした。なので、ボランチの2人は躊躇いなく前に出れる状態。永木やレオシルバに対して、喜田や扇原がプレッシャーをかけていました。

 このシーンでは土居が顔を出しますが、永木は松原の方向へパス。そこを認知させないほど素早く寄せていたことがわかります。これが成功すると、積極的な守備をする心理的余裕も生まれますよね。

 互いに縦へ早い攻撃を仕掛け、積極的に前へ出ていく守備を行う。これを繰り返すと、ボールが両陣営を行ったり来たりします。攻守が目まぐるしく入れ替わり、オープンな展開に。

 こうなると、水沼はあまり良さを活かせません。彼の武器は正確なクロス。決してスピードにものを言わせた突破ではないのです。あまりクロスが上がらなかったのは、試合展開が要因の1つだったでしょう。(恐らく彼を先発させたのは、マリノスが押し込んだとき用だと思います)

 また、サイドバックの相方も見るべきポイントです。松原は長いパスをウイングにつけることが得意。小池は正確な位置取りで徐々にボールを進めることが中心。コンビネーションでの打開が得意な水沼の相方が松原。単独でも突破ができるエリキが小池と組む。逆だったら…という思いもありますが、水沼は左サイドだと持ち味であるクロスが発揮できない。ゲームみたいにうまくいかないことを痛感しました。

4.遠藤康の投入が及ぼした影響

■中央での優位性が一転

遠藤ハブ

【POINT】
遠藤がトップ下に入ることによって、早い展開がスローダウンする

 前半マリノスの中央が空くことが目に留まったのでしょう。ザーゴ監督はそこを使えると判断し、遠藤を投入したのだと思います。エヴェラウドは点を取るために必要。上田も点を決めている。土居か荒木が交代候補になります。判断材料になりやすいのは失点の場面。荒木の守備面に不安があったため、土居を残したのではないでしょうか。結果として交代したのは荒木でしたが、彼を下げたかったことが一番の理由ではないと思います。

 さて、話を戻しましょう。遠藤を投入したことで、中央からの展開ができるように。これにより、素早かった鹿島の攻撃がスローダウン。前でタメを作れることで、全体的に押し上げることが可能になります。また、後半開始直後からプレススピードを増加。これはフロンターレ戦と同じですよね。守備のギアが上がったこともあり、マリノスが中々前へボールを運べなくなります。

■前へ積極的な守備は変わらず

扇原守備

 自陣に押し込められる時間が増えると、攻撃の際に押し上げることも難しくなります。マリノスは前後分断しやすい状況に。こうなると、マルコスの守備基準も前にいきやすくなります。遠藤がトップ下に入り、中盤が3人になった鹿島。扇原と喜田は2人で3人を見ることに。しかし、前に出る守備は形を変えていませんでした。

 中盤が前に出ると、カバーするのはセンターバックになります。しかし、急遽行われるカバーはどうしても後手になりがち。芋づる式に前へズラされ、背後が空きやすくなる。このスペースを積極的に使っていたのも、遠藤投入と共にハーフタイムで整理した結果だと思います。

■交代について考えてみる

 相手が中盤を正三角形にしたのなら、こちらは逆三角形に変えればマークがわかりやすくなりますよね。しかし、ボスはこの交代をかなり後まで引っ張りました。そこから以下のことが推察されます。

・この試合では勝利が最優先事項ではなかった(もちろん勝ちにいってるよ)
・それよい、中にいる選手たちが考えて状況を打破してほしかった
・本来得意なプレーではないことをやらせ、プレーの幅を広げようとした

 勝ちにいくのなら、相手がやることをわかった段階で手を打つと思います。ボスはそういうことができる人です。そうしなかったのは、中にいる選手たちに考えてもらいたかったから。速攻だった鹿島が遅攻気味になったことについて、中盤の選手たちに工夫してほしかったのでしょう。特に、前述したボランチが前へ出る守備。この判断ミスが目立ったのは扇原でした。逆三角形にしたとき彼を残したのは、ネタばらしだったのだと思います。

 また、縦に早い展開に拍車がかかったので、水沼を大然に代えると効果的だったはず。それをやらなかったのは、彼に新しい扉を開かせるためかもしれません。松原が相方ということもあり、積極的にバックドアを狙っていました。クロスに合わせることも意識的にしていた側面も見れたので、その感覚を掴んでもらいたかった。こう考えるとそれっぽいですよね。

5.スタッツ

マッチレポート - J1レポート note用-1

■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

6.おわりに

 相手のやりたいことを真正面からぶつけられ、逆転負けを喫してしまった。これってフロンターレ戦と同じなんですよね。あのときほどではないですが、個人的には今季2番目に心へくる試合でした…

 縦に早い展開が影響し、サイドの守備が脆かったようにも感じました。相手も素早く攻めるため、こちらが攻撃したら早く戻らないといけない。この試合ほどのスピードになると、仲川くらいしか要件を満たせないのでしょうね。永戸に14本もクロスを上げられたのは、このあたりにも原因があると思います。

 ACLまでの試合は、選手の負荷調整をしつつ、自信をつけるために勝ちを取りに行くと思っていました。しかし、ボスはそうではないようですね。自分の甘さを反省しています…チームの更なる成長をさせつつ、ACLでも勝てるようなサッカーを目指して邁進していきましょう!

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