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【2019 J1 第13節】横浜F・マリノスvsジュビロ磐田 マッチレビュー

1.はじめに

 前節は新システムである4-2-1-3にて4-1の大勝をおさめた横浜F・マリノス。今節の相手はジュビロ磐田。昨季のホームではビルドアップのミスからショートカウンターを受けての惨敗でした。今度はマルコスシステムをもっての対決。リベンジとなるでしょうか。振り返ってみましょう。

2.スタメン

■横浜F・マリノス

・前節と同じ先発メンバー
・ドゥシャン怪我のため、ベンチにCBは不在

■ジュビロ磐田

・前節と同じ3-4-2-1のシステム
・ロドリゲスが先発に復帰し、荒木がベンチへ

3.ジュビロの前半の守備

守備時は5-2-3のような陣形
・3トップはボランチかSBを切ってCBに寄せる
ボランチ2枚のみで中盤の相手を見る
5バックは完全な撤退守備

 ジュビロは守備時に両WBを下げた5-2-3のような陣形を敷いてきました。前線の3トップはこちらのボランチかSBを切りつつ、ボールを保持しているCBを囲い込むように寄せてきます。ただ、近くにいる相手に何となく寄せる、ボールホルダー近辺のパスコースを何となく切る、などのように、明確なルールに添って動いてるように見受けられませんでした。

 中盤のボランチは3トップの前からのプレスに連動し、主にこちらのボランチに対してマークをしてきました。しかし、マリノスの中盤は両ボランチ+トップ下の3人のため、マルコスが浮くことが頻発していました。また、前線の3トップは下がって守ることをあまりしないため、中盤の広大なスペースはボランチの2人だけでカバーしている状況でした。そのため、中盤2枚の脇にスペースができることが多かったです。

 後方に構えるディフェンスラインは5バックの撤退守備です。マリノスの3トップが後ろに下りても基本的にはついていかず、最終ラインに5人が横並びで揃っている形を保持。5レーンを確実に埋めてしまおうという意図を感じました。

 後方のディフェンスラインは完全撤退状態。加えて、前にいきたい3トップとそれに連動するためにダブルボランチは前寄りな位置に。その結果、前に5枚、後ろに5枚で前後分断されているような形となり、ディフェンスラインの前方に大きなスペースが空いている状態でした。

 また、前述しました通り、中盤の広大なスペースを埋めるのはダブルボランチの2人だけでした。この中盤のエリアに入ってくるマリノスの選手たちは主に以下の面々。

①ボランチ
②内側に絞ったSB
③下りてきたマルコス
④下りてきたエジガル

 前方にいる3トップの限定も場合によってまちまちだったこともあり、ジュビロのボランチたちはマークにつくべき選手が多く、誰につけばいいか迷う、または誰かにつくと誰かが空く状況が多くありました。簡単に言うと、マリノスの選手たちを捕まえきれない状態でした。

 また、WBも低い位置にいるため、ボールを奪えたとしてもカウンターのために上がる手間が発生し、効果的にショートカウンターが決まらない。さらに、中盤の選手が手薄なため、セカンドボールを拾う可能性が低くなっていました。

4.マリノスのビルドアップ

 相手の前後分断と中盤での数的優位を活かしたビルドアップができたのが、前半9分ごろのシーンになります。

 ボールを持った喜田。ジュビロのボランチは前からボールを奪うため、それぞれマルコスと扇原へマークにつきました。このプレスを喜田は扇原とのワンツーで打開。そこを抜けた先に待ち受けていたのは、前後分断されスッポリとスペースがある所に位置してたティーラトン。そこへパスを送ることにより、相手CBを引っ張ることができました。それをかわし、大外で待っている渓太へパス。前後分断状態の相手をかわし、ディフェンスラインから選手を引っ張って大きなチャンスに繋がった場面でした。

 こちらは前半13分ごろのシーンになります。

 この時間帯あたりから、前線のプレスに連動し、ティーラトンが大外に開いてる場合は、右WBの松本が前に出てくるようになりました。ボールサイドに寄せた4-3-3のような形を一時的に形成してきましたが、ちょうど相手選手の中間に下りてきたマルコス。これを見逃さなかった畠中が鋭い縦パスをマルコスにつけます。マルコスに対応するため、ボランチの田口は前進しますが、それによりディフェンスラインの前が大きく空くことになります。空いたスペースへエジガルは下りようとしますが、直前に相手ディフェンスの裏に抜けるような動きをしてディフェンスラインを押し下げてから後方のスペースへ移動。十分なスペースを確保したエジガルへマルコスがパスをつけて前進した場面でした。

①マルコスが下りる
②ボランチが引っ張られる
③空いたディフェンスラインとの間にエジガルが下りてくる

 このように連動して空けたスペースを活用するマルコスとエジガルのコンビネーションはこの試合で複数回見ることができました。また、エジガルが下がらずに裏抜けを狙う場合もあり、相手ディフェンスラインと前後の駆け引きをしていることも印象的でした。

5.ジュビロの後半の守備

WBを高い位置に上げてSBへマークにつく
・3トップはボランチとCBを見る
・片方のボランチはトップ下を見る
・逆サイドのSBはWBが出ていける位置で見る

 後半になり、ジュビロは守り方を変えてきました。簡単に言うと、両WBを高い位置にあげて前からのプレスを強めた形です。

 両WBはSBを捕まえるようにマーク。シャドーの片方がマリノスボランチの一角をマークし、もう片方のボランチにはどちらかのジュビロボランチがマーク。これによりジュビロボランチの片方が浮くので、その選手はマルコスにつく。後方に残った3バックはボールサイドにスライドし、横方向にコンパクトな陣形を形成。これによりマークがハッキリとしたジュビロは後半開始から激しいプレスを仕掛けてきました。

 この激しい前方からのプレスにパスを引っ掻けることもしばしばあったマリノス。今度は両WBが高い位置にいるため、ショートカウンターの速度と威力は増している状態です。何度かピンチを迎えましたが失点することなく切り抜け、コーナーキックからのロングカウンターで追加点をゲット。この時失点していたら大勝という結果にならずに、また違った試合展開になっていたかもしれません。

 この追加点以降相手がトーンダウンしたことと、2点のリードなので選手たちは積極的なプレーを選択する余裕が生まれたこともあり、相手を押し込む場面が段々と増えてきました。PKによる3点目。扇原の機を見た上がりからのクロスに、エジガルが相手DFと駆け引きをして合わせて4点目と連続して得点。結果として4-0の勝利を挙げることができました。

6.スタッツ

■トラッキングデータ

 相手のダブルボランチの一角である山田がこの日最長の12km越えの走行距離。田口も10km越えなど、相手ボランチをよく走らせたことがわかります。また、マリノスは扇原、喜田、和田の走行距離が11kmを越えたことから、バランスを取るために粉骨砕身したことが伺えます。

■チームスタッツ

(左:マリノス 右:ジュビロ)

 シュート数は20本、そのうち枠内は半分の10本。エリア内シュート数も15本と、相手陣地深くまでのシュート数が多かったことがわかります。しかし相手もシュート数が13本と多く、エリア内シュート数も9本もありました。4-0の試合で圧倒していた印象が強かったですが、この数値を見ると多くのピンチを招いていたことがわかります。枠内シュート数は1本だけだったので、相手の精度や質に助けれらたことも伺えます。

■個人スタッツ

 試合をこなすごとに凄みが増しているような気がするマルコスのスタッツになります。成功パス数が57本あるため、後方からの組み立てに多く参加していたことが伺えます。キーパス4本は攻撃で致命的な場面を多く作っていたことがわかります。また、インターセプト数が3回、クリア回数が1回と、守備に関しても多大な働きをしているように思います。

7.おわりに

 前節の神戸戦に引き続き、大量得点で今節も勝利をおさめることができました。こういった試合になったのも先制点を得ることができたからだと思います。前節は前半開始当初は相手の激しいプレスにピンチを迎えて、あわや先制点を与えてしまいそうな場面。今節は追加点を奪えずに試合を決めきれない中、相手の激しいプレスから同点に追い付かれるかもしれないピンチを招いた後半開始付近。大勝の裏に隠れがちですが、試合が危なくなる分岐点はあったように感じました。安定感というのはまだ課題として依然あるため、次の試合でも先制されないことと、試合を早い時間に決めきることは重要になるかと思います。

 それにしてもこのマルコスシステム(影のティーラトンシステム)は各選手の長所をより伸ばし、短所をなるべく隠すという戦術を決める旨味が存分に出ていると思います。次はより前からのプレスが強く、しっかり中を締めるベルマーレが相手です。このシステムの1つの山だと思いますので、そこでも相手を圧倒し、自チームの自信をつけられたらいいなと思います。

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