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【2020 J1 第32節】サンフレッチェ広島vs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

 22連戦のゴールは目前。長い戦いの最後は、サンフレッチェ広島の本拠地に乗り込むことになりました。連勝の勢いに乗り、最後を勝利で飾りたい。移籍市場も開いており、出会いと別れも。ほんと今季はあらゆる流れが早い…さて、前置きはこのくらいにして、早速いってみましょうか。

2.スタメン

スタメン

■サンフレッチェ広島

3-4-2-1の布陣
・前節出場停止だったレアンドロ・ペレイラが復帰
・柏が久しぶりの先発出場

■横浜F・マリノス

4-1-2-3の布陣
・新加入の高丘が先発出場でマリノスデビュー
・中盤を総取り換え

3.遅速折衷のスタメン

 名古屋戦は遅攻が得意な選手をスタメンに選びました。東京戦はそれと反対に速攻が得意な選手メインでした。「この試合はどうくるのかな?」と思ったところ、半々で組み合わせたメンバーでした。3トップは速攻が得意。中盤は遅攻が得意。サイドバックも遅攻寄りのメンバーです。

 広島はハイプレスと撤退守備を使い分けてきます。相手のハイプレスをかわせば後方は同数に近い状態。相手の戻りが間に合わないうちに進めれば大チャンスになります。また、詰まった場合は時間をかけることで後ろが合流。相手を押し込んだ状態で遅攻を仕掛けることが可能に。対広島を考えると、実に合理的な先発メンバーだったように思います。

■相手のプレスをかわして速攻

マリノス速攻

・3バック以外を積極的に前へ出すハイプレスを実施
・それをかわすと後方は同数になっている
・ハイプレスをかわして前へ素早くつければ大きなチャンスになりやすい

 復帰したばかりでコンディションが整っていないチアゴ。連戦による疲労蓄積が見える畠中とティーラトン。彼らが万全だったのなら、もっとスムーズにボールを運べたでしょう。それでも広島のハイプレスに屈するのは、そこまで多くなかった印象です。

 前述した通り、ハイプレスを越えると大きなチャンスに繋がります。このシーンではエリキがサイド深くまで運んでからのクロス。大然がニアに入るも、相手にブロックされてしまいました。クロスを上げる位置。クロスに合わせて中に入るタイミング。これらが抜群に良かったです。この試合で最もキレイに崩せた場面だったでしょう。

 前3人のスピードに食らい付いた、天野と皓太も素晴らしかったです。前の3人だけでなく、彼らも攻撃に絡んで速攻。また、相手に奪われた瞬間、5人でボールホルダーにプレッシャーをかけることができました。途中交代なのに、10km以上を走った天野の走行距離を見ると、かなり強度の高い上下動を繰り返したことが伺えます。

■速攻ができなくても遅攻で崩せる

マリノス遅攻

【POINT】
速攻が詰まっても、相手をずらして崩せていく

 速攻ができずとも、遅攻で相手を崩すことができていました。この場面は、天野がサイドに流れて4人でローテーション。マンマーク気味の相手を動かすことにより、陣形をめちゃくちゃにします。

 先制されてからもサイドで数的優位を作りながらしっかりと崩せたので、その精度を上げなければなりません。

 試合後コメントで天野が語っていたのは、このような崩しのことでしょう。インサイドハーフが同サイドに寄って密集を作る。そこの数的優位を活かし、相手を崩す。マリノスの十八番ですよね。

 こういった分厚い崩しができるのは、インサイドハーフが2人いるから。皓太が交代してからは、天野1人になってしまいます。彼1人では動ける範囲が広くないので、遅攻で攻めあぐねてしまうことに。1人でなんとかできるのはマルコスだけでしょう。それを感じ、和田とマルコスを交代させたのだと思います。前後を繋ぐ役割もこなしていただけに、皓太の負傷交代は痛恨でした…

4.セーフティーな守備に切り替えた広島

広島守備変更

・ボールサイドのウイングバックのみ前に出す
・ボランチの片方は必ずトップ下をマークする
・後方で数的優位を作り、失点しないことに重点を置く

 リードした広島は、セーフティーな守り方に変更します。両方前へ出してたウイングバックを、ボールサイドのみにする。システムが代わりトップ下1枚のみになったので、片方のボランチはそこを捕まえる。こうすることによって、後ろで数的優位な状況を作り出します

 チャンスがあれば前で奪ってショートカウンター。かわされても人数が揃ってる後ろで攻撃をせき止める。こういった対応ができたのも、広島が先制点を奪ったからでしょう。

 こうなると速攻がほぼできない状態に。前線3トップの威力が半減します。スペースと時間がない状態で密な相手を崩すには、プレー速度の上昇が要求されます。そのためには、共通意識を持って攻められるかが重要になるでしょう。

5.意識の合わない攻撃

意識の合わない攻撃

・サントスはボールを受けるため下りることが多い
・天野や両翼は低くて早いニアサイドへのクロスを想定して動いている

 しかし、マリノスの選手たちは中々意思疎通ができませんでした。特にクロスだと顕著に表れます。

 例えば前半27分、大然がバックドアでサイド深くまで侵入。ニアへ低くて早いクロスを上げます。これってマリノスのお約束ですよね。しかし、このとき中にいたのは天野とエリキのみ。本来ニアに入ってほしいサントスは、ボールをもらおうと後ろに下がっていました。

 手早く攻めないのならありだと思いますが、この試合では大然が何度もバックドアで抜け出せていました。それを信じ、サントスは中で待っててもよかったように思います。ボールに近付くことで野上を引き連れ、スペースを消していますし…また、天野と位置が反対なら違和感は少なかったでしょう。一番得点の臭いがする選手がゴールから離れるのっておかしいですよね。

 天野はマイナスの位置。エリキはファーサイドに詰めている状態。彼らは『ニアに低くて早いクロスをウイングが入れる』という想定でポジション取りをしています。これは明らかにサントスの考えと違いますよね。サントスが間違えてるというわけではありません。どちらかに揃え、意思統一して攻めることが重要だと思います。過密日程なのである程度仕方ないですけどね…

 速攻が塞がれた状態で遅攻を強いられる。しかし、意思統一できていないので、素早く分厚い攻撃を多く仕掛けられない。後半停滞したのは、こういったことが主な理由だったように感じました。

6.スタッツ

マッチレポート - J1レポート note用-1

■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 22連戦が終わりました。次の試合は中5日。これで小休止を取れます。選手、監督、スタッフ、サポーターを始め、マリノスに関わる全ての皆さま、本当にお疲れ様でした。様々なアクシデントがありましたが、なんとか試合をこなすことができたのは、偉業と言ってもよいでしょう。様々な試行錯誤を重ね、毎試合飽きることなく見れたのは、マリノスだからだと思います。本当にありがとうございました。

 前述しましたが、コンディションが整っていればわからない試合だったでしょう。疲労は体が動かないだけでなく、判断も鈍らせます。本来ならハイプレスをもっと素早くかわせていたはず。やはり連戦は恨めしい気持ちが少し出てしまいます。

 遅攻と速攻の折衷がこの試合のテーマでした。相手がリスクを冒したこともありますが、前半は概ねうまくいったのではないでしょうか。課題は、今季加入した選手たちと共通意識を持てるかどうかだと思います。今後多少余裕がある日程が組まれますので、今までの足跡を振り返りながら、反省して話し合う時間も取れるでしょう。ACLに向けて突き進む我ら。リーグ戦を無駄にしないためにもこれを糧にし、よりいいサッカーをしてアジアを沸かせたいですね!

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