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BCPを作っていない飲食店は、ラーメン二郎新宿歌舞伎町店の火災事故を笑ってはいけない

出典:FNNプライム

今回の事件で、ラーメン二郎新宿歌舞伎町店は、火災や自然災害への対応が不足していることが明るみになりました。
本来であれば、店舗責任者が緊急事態を認識し、発信。厨房スタッフは、加熱調理機器を一刻も早く止め消火活動を行うとともに、ホール担当は店内外の客を安全な場所に避難させることが必要でした。
今回はけが人がいませんでしたが、もしこの火災で、けが人や死者が出たら、ラーメン二郎新宿歌舞伎町店の責任問題は図りしれないものになっていたはずです。


二郎を食べ続けるお客さん

ことの発端は、2024年5月28日、東京都新宿区歌舞伎町の「ラーメン二郎新宿歌舞伎町店」から火災があったとの通報がありました。
店は当時営業中で、この日もすでに15人ほどのお客さんが店内におり、外にも行列ができていました。
幸いにもお客さんや従業員は全員避難し、けが人はいませんでした。SNSでは、店内に煙が充満する様子や、厨房の奥で火柱が天井まで達する場面などを投稿する人が現れ、瞬く間に広まりました。

それらの映像は各テレビ局のニュース番組でも使用されましたが、視聴者が驚いたのは、店内に煙が充満する中でも、何人ものお客さんが夢中でラーメンを食べ続ける姿でした。

出典:FNNプライム

ラーメン二郎には熱心なファンが多く、ラーメン二郎や二郎系ラーメンの食べ歩きをする「ジロリアン」と呼ばれる人々がいます。彼らジロリアンによって、「コール」や「黙食」などの独自の文化が二郎系ラーメンでは形成されています。
ラーメン二郎では、最も罪深いとされる行為は、ラーメンを食べ残すことです。特に、小ラーメンを食べきれなかった場合は謝罪すれば許されますが、大ラーメンや全マシを注文して残すと、お客さんの責任とされます。
お客さんはラーメンを食べきるというルールを重視するあまりに、火災の際にもラーメンを食べ続けてしまったのです。

ラーメン二郎新宿歌舞伎町店を笑うな

しかし、おそらく個人事業主や小規模飲食店のほとんどが、今回のラーメン二郎新宿歌舞伎町店のように、適切な対応が「できない」と断言してもよいでしょう。
火災・災害に対しては、火災保険などの保険に加入するという対応にとどまっており、まさか自分の店舗が災害や火災に見舞われると思っていないに違いありません。

飲食店もBCPを作りなさい。

今回の事件を踏まえて、私はBCPのプロとして、小規模飲食店も、大手飲食チェーンと同様にBCP(事業継続計画)を策定する必要すべきであると声高に訴えます。
自分の店舗ではどんなリスク(火災、地震、水害など)があるのか、また営業中に地震が起きたら、火災が起きたらどう対応するのか、そして早急に復旧するするために何をすべきかを事前に定める必要があります。
これだけBCPの必要性が昨今高まる中、災害対策がわからなかったでは済まされないと考えます。

BCPを作ることで売上が上がる

飲食店であれば、BCPを策定し、災害時の事業復旧を早めることで、通常営業時よりも売上が上がる可能性があることにも注目すべきです。

例えば、地域全体に地震が起きて、地域経済が止まっているとしましょう。そんな状況で、地域の飲食店で一番乗りで復旧し、営業を再開するとどうなるでしょう?外食をしたいという地域住民の需要が、そのお店に集中することになります。瞬く間に、営業したという噂は広範囲に広がり、通常営業時よりも広範囲から顧客を集客できます。

復旧が早まることで、市場シェアを拡大することも可能である

このように、BCPの策定は単なる「守り」ではなく、将来の「攻め」に転じるためのきっかけとして重要です。

飲食店がBCPを作成する際のポイント

ポイント①火災の他、地震や水害などの影響について考える。

店舗所在地のある自治体や国が出しているハザードマップを確認してください。

地震ハザードマップ J-SHIS

今回のような火災の他に、地震や台風・水害の他、地域によっては大雪などの災害リスクがあります。それぞれのリスクに対して、どのような状況となったら、緊急事態として認識し、災害対策をとるのかを明確化しましょう。
例えば、水害であれば警戒レベル4が発表された際には、営業を停止し、顧客と従業員の身の安全を最優先にするなどです。

ポイント②災害発生時間ごとに初動対応を規定する

飲食店であれば、少なくとも①営業時間前の仕込み、②営業時、③営業終了後の閉店時間中の3つのケースに分けて、初動対応を考えておく必要があります。
②の営業中であれば、お客さんや従業員の命の安全を最優先にした初動対応が必要となります。

ポイント③防災器具の設置・店舗レイアウトの改善

飲食店の防災器具として、代表的なものとして上げられるのは、消火器の設置、厨房機器の耐震固定金具・厨房機器の緊急停止機能の設置、食器棚の固定などです。
居酒屋などでは、棚に酒瓶をディスプレイしている店舗もありますが、接着剤などで落ちないようにしっかり固定する、もしその酒瓶が落ちてきても従業員や客にあたらない場所にディスプレイするなどの対策が必要です。

ポイント④定期的な災害訓練

従業員が、調理機械の緊急停止方法、消火器の正しい使い方、避難場所の把握、緊急時の役割分担などを、しっかりと平時から理解しておく必要があります。少なくとも年に1回は災害訓練等を行っておく必要があります。

ポイント⑤地域住民の避難場所としての役割も担う

飲食店は店舗面積が大きく、調理スペースや食材もあることから、賛否はあるかもしれませんが、地域住民の避難を受け入れる公的な役割も担うべきであると考えます。例えば、避難所として活用する際のスペースや提供メニューなどについても、日ごろから検討しておくことが必要です。

まとめ

多くの飲食店が火災・災害について事前想定がされていません。
しかし、飲食店は従業員の他に顧客の命という責任を負っており、BCPを定め、災害対策を行うことは重要です。
飲食店のBCPを作成する際のポイントを抑えることで、迅速な事業復旧が可能となります。
それにより、通常時営業時よりも売上・シェアを高める可能性すらあるとのことを理解しておく必要があります。

BCPの無料相談は、中小企業診断士平澤龍一のX、nstagram、HPのお問合せからどうぞ。

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