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TERF論争とは何なのか:終わりなき「ジェンダー観戦争」はなぜ起きる?(1)

TERFという単語をご存知だろうか。

トランス排除的ラディカルフェミニストの略だ。

狭義には「トランス女性をフェミニズム運動から排斥しようとする過激フェミニスト」だが、近年は一般人を含む人々がTERF的だと批判されている。

例えば、最近では小説「ハリーポッター」の著者 J.K.ローリング氏がTERF的だと批判され、大きな話題となり、様々な勢力の間で論争が発生した。

私は、上記の一連の論争を、「ジェンダー観戦争」とみなす。

ジェンダー観とは、文字通り、ジェンダーとは何か、何であったか、何であるべきかという全ての事実認識・価値判断のパッケージだ。

今起きているのは、教育や宣伝、コミュニケーションなど、全てを用いた、異なるジェンダー観どうしの無前提の争い、つまり戦争だ。

本noteから始まる一連のnoteの目的は、3つに分かれる。

1. 「ジェンダー観戦争」はなぜ決して終わらないのかを説明する。

2. 「ジェンダー観戦争」は大半の人には不要だと説得する。

3. 「ジェンダー観戦争」以外の別の政治運動の案を提案する。

1.の視点は、明らかに理解せず各種の運動に飛び込んでいる方々が多く見受けられるため、説明を試みる。なんとか理解して頂きたい。終わりなき戦いに身を投じるのは自由だが、終わりがないと理解してからのほうが良い。

2.を受け入れていただけるかは分からない。

フェミニスト、LGBTだと自認する市民、いやジェンダー論に関して利害関係のあるほとんどの市民は、一部の理論家や学者、ラディカル・アクティビストに引き摺られ、やりたくもないことをやらされている。

あなた方の大半がやりたいことは、フェミニズムの理論や、ジェンダー理論が主張し、目的としていることとは何も関係がないし、それどころか、むしろ利益レベルで対立している。

これは説得なので、拒否していただいて良いが、まず読んでから判断して頂きたい。1と2はほとんどの人には受け入れていただけると信じる。まず一連のnoteでここまでを主張したい。

3.はやや無責任となる嫌いはあるだろう。単なる試案であり、真の目的は対案を皆さん自身で考えていただくことだ。暇のない方は読んで頂く必要はない。

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そもそも、多くの市民が性に関してやりたいこと、やるべきこと、大目標とは何なのか。

『性に関するコンフリクト、つまり具体的な利益の衝突により、特定の属性が不利益を被りすぎたり、リスクを過大に負わされる場合、社会、国家が各種行政により格差を緩和し、リスクを分散する。

これだけだ。

そんな事、当たり前だろう、偉そうに言うなって?いや、賭けてもいいが、多分あなたは、理解できた気になっているだけだ。上に書いたことは、決して簡単ではない。非常に難しく、危険なので、注意深く行うべき事柄だ。

そのためほとんどの人は、楽をしようとして、滅茶苦茶をやり始めてしまい、全てがご破算になる。今、なっている。

その最悪の例は、教育や宣伝、コミュニケーションによってマジョリティに正しいジェンダー観を理解してもらおう、そうすれば社会は偏見から解き放たれ、正常化していき、自然とコンフリクトも解消する、これをコンフリクトの第三者も含め皆で支援しよう、といった発想、及びその活動である。

フェミニズム、各種ジェンダー論を起点とした、ほとんどあらゆるジェンダー権利運動はこのロジックで動いている。故に全てが大失敗している。

もしあなたが上述の「大目標」のために、この手の社会活動を行っているなら、はっきりと批判させて頂く。あなたがやっていることは全くの無意味かつ無駄、むしろ逆効果だ。

そもそも、これをやっている人々は、教育や宣伝、コミュニケーションで「正しいジェンダー観」を争うのがどんなに危険、無意味、かつ残酷なことか、全く理解していない。

そしてそれは特定の個人や団体の人格や資質に起因するものではなく、構造レベルの間違いに起因しているので、どうしようもない。

そもそもやるべき順番、因果関係が全く逆だ。

我々は、ただ目の前の利益対立の緩和、格差の緩和、リスク分散に愚直に取り組むことしか出来ない。

そして、社会の格差が緩和していった後、その結果としてマジョリティを含む全ての人間のジェンダー観が徐々に変わっていくことを期待する。

可能なのはこの方向だけだ。そして、そもそもほとんどの人はこれがやりたいことであるはずだ。これを説明し、説得するのが最初の目的の2つだ。

次回のnoteから、TERF論争にまつわる、具体的な言説を引用して、説明と説得を試みる。

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