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平凡女の人生衝撃急展開⑤~さらばポッコ。そして最終審判~

「わぁ。ドラマみたい!!」

と、手術室に入った途端、思った。


30年前の鎖骨骨折手術のとき(第3話参照)は病室から寝かされて行った覚えがあるのに、今回は歩いて手術室に行くという。

ドラマみたいに、ガラガラしたストレッチャーに乗せられて「じゃあ、お父さん。行ってくるね」なんてなことも言った気がする。30年前は。

今回もそうだと疑わなかった。
ま、見送りは誰もいなかったけどね。


「えまさーん。じゃ、手術室に行きますんでね。指輪とか全部外してくださいねー」

「わー!忘れてました!!」


12年間、ほとんど外したことがなかった結婚指輪を、なんとか引っこ抜く。若い看護師さん(かわいい系男子)と並んで歩く病院の廊下は、いつにもましてヒンヤリと感じられた。


……まったく現実感がない。

これから手術?しかもガンの??歩いて行って???


手術室前で、入院してから何十回言ったであろう氏名と生年月日を呪文のように唱える。点滴を押しながら、促されるままに手術室に入った。


そこで、冒頭のセリフである。

さらば、ポッコ。第5話、始めます。


激ヒマが幸せ


「今日はね、誰もいないから貸し切りだよ!」

部屋に案内されるやいなや、病院内を案内してくれた看護助手さん(多分)が嬉しそう。ちゃきちゃきしていて、話が飽きないひと。多分長く勤めていらっしゃるのだろう。白髪のロングヘアをひとつにまとめていた。

入院説明の日、部屋のグレードを勧められるがままにあげた。入院経験があるため、あまりにも狭かったり、お隣さんが近いのは避けたかったのだ。たった3泊とはいえ。

+2,000円×4日。

旦那に相談もせずにあげちゃったけど、入院するの私だし!文句は言わせねーよ!!てな感じで決めたのだけど、大正解だった。

「うわぁ。1人分が広いですね!しかも綺麗!!」

これは快適な3泊4日が過ごせそう。

ひととおり看護助手さんの説明が終わり、担当の看護師さんが入れ替わりできて熱やら血圧やらを測り、とりあえずめっちゃヒマになった。このときは点滴もしていないので、ただただ動けるガン患者がヒマをこいている図ができてしまったのだ。

夕方には旦那と実兄(都内在住・10歳上の真面目でやさしい長男)が来てくれるというが。

というわけで。とり急ぎ、本命バンドのロンTに着替えて、推しメンカラーのタオルを枕に巻いてみた。誰もいないので、テレビもイヤホンなしで見放題。


うーん。それにしてもヒマである。夕ご飯は18時って日程表に書いてあったな。お腹減った。まだまだ時間はある。あ。明日からコーヒー飲めないかも。病院の自販機にもコーヒーなかったし。旦那が来るときに、ファミマのコーヒー買ってきてもらお。


そんなことをウダウダ考えながら、ここに記すこともないくらい、至っておだやかに過ごした。

でもそれって、めっちゃ幸せなことだよね。手術前日なのにね。



目覚めたらかつ丼


なんだかよくわからないけど、自分のわからないところで他の人たちがテキパキ動いてるのって好きだ。

プロフェッショナルって感じ。


手術室に入ってドラマみたいとは思ったけれど、そこに米倉涼子さんも沢村一樹さんもいるわけはなく、本気のプロフェッショナルたちがカチャカチャ動き回っていた。

「よっこらせ」

自ら手術台にあがる。なんか、ウケるな。

プロフェッショナルたちに心電図付けられたり、足にマッサージ器具つけてもらったり(むくみ防止らしい)、それこそ「まな板の上の鯉」だった。鯉より、どっちかというと鯛がいいな。良く言いすぎか。


そして、こちらはキリスト教の病院であった。

準備が整ったところで、2番手的な男の先生が「お祈りしますので、えまさんも目をつむっていてください」と私の肩にそっと手を置く。

(はっ!!!これはドクターXで、米倉さんが手術後に毎回やってるやつや!!!私は手術前だけど、なんかアガる!!!)

なんて、本気で思っていた。もちろん、そんなアゲアゲ感情は奥にしまい、静かに目を閉じてお祈りしていただいたけれど。


いよいよ、私の口に酸素マスクがあてられる。普通の白いマスクをしている上からあてられたので「え?マスクの上からですか??」と、思わず鯉がプロに声をかけてしまった。


「そうなんですよ~。大丈夫ですからねぇ」

「は、はぁ……」

「では、えまさん。麻酔の点滴始めますからね」


キタ。ついにキタ!!
ドキドキドキドキ……ドキッ……ドキドキッ……ドキドキドキドキ……

(あれ?私の心臓、変な打ち方してるよ!緊張??私の心電図、変なリズムですよ!!誰か!?いいの??私、こんなんで……)


……そこで、意識はなくなった。


遠くから、声がする。お祈りしてくれた男の先生だ。なんだか声をかけられて返答した気がする。ボンヤリはしているけれど、ストレッチャーに乗せられたのはわかった。これから病室に帰るらしい。

今、エレベーター乗った。
廊下曲がってる。
曲がるとき、ちょっとクラクラする。
あ、病室着いた。
先生に痛み止めもらうの言おう。

全部、覚えてるから不思議だ。ものすごーくボンヤリの中なのに。


あ、旦那来てる。間に合わないかもって言ってたのに。なんか、喉かわいちゃったな。お腹も空いたし。腰も痛い。朝、腰が痛かったからイヤな予感したんだよね。やっぱり痛くなっちゃったか。


あーなんか、かつ丼食べたい。


そして、手術からおよそ3時間。

看護師さんが見守る中よっこいせと起き上がって、フラフラしながらもひとりでトイレに行った。

「え!立ってる。えまが立ってる!!」

長男兄貴が、切れ長の目を見開いていた。まるで、立ったクララを見たハイジのように。

「なんかさー、こんな点滴してフラフラしながらトイレ行ってさー、私って病人みたいだよね!」

「病人だよ!!!!!」

ツッコミ文化が皆無の東北出身、真面目長男兄貴からの綺麗なツッコミが響いた夜でした。


さらばポッコ


私の体から切り離されたポッコを、旦那は生で見たという。ズルい。

そしてポッコは病理検査に回され身ぐるみはがされ、3週間後、その全貌を明らかにした。

当初、ステージ0判定のポッコだったが、悪性部分の中心にほーんの少しだけ「浸潤」が確認されたとのこと。難しいことは書けないけれど、最終結果は…

ステージ0→1 に、まったく嬉しくない格上げです!

先生曰く「限りなく0に近い1」とのこと。

安心したような……ステージ0のインパクトからすると少し残念のような……。でも、これからも先生を信じて治療続けていきます!そして今後も、真面目にふざけて書いていきますので、よかったら読んでやってください!

目指せ。おばあちゃんでもライブハウスに行く未来✨


本当はこんなこと言いたくなかったけど……やっぱり言わせてもらいます。

みんな検診に行こう!!

ステージが軽ければ、思った以上に病人ではありません!ご飯も美味しいし、夜もグーグー寝れるし、普通に仕事に行けます。もちろん、気持ちの上がり下がりは皆さんそれぞれだし、部位によっても症状はちがうだろうけど、なんでも早いに越したことはないって心から感じました。

そして、医療の進歩の凄さたるや!!!
本当にすごい!!!
医療従事者の皆さん、日々本当にありがとうございます!!!


なので、絶対絶対検診受けてほしい。「あれ?」と思ったら、ビビらずすぐに病院に行ってほしい。

みんな、やさしいよ。



この期間に出会った言葉シリーズ。
「あなたはここに存在するだけで価値がある」
病気にはなったけど、周りにも迷惑かけてこれからもかけるけど、自分を認めて受け入れて、前向きに歩いていきたいです!



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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