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気遣いしたらおかしいですか?―障がい者として働く・暮らすこと―7

その日自分は、いつもの部長と、
なぜか人事担当ではなく、同じ部署の正社員さんと、面談(?)をする羽目になっていました。


「つまり辟音さんは、今後は権限のある人から話をしてほしいということで間違いないですか?

「決定権者じゃない人が、命令というか、指示出ししてるのはおかしいですよね?決定権者が正社員さんと言うなら、正社員さんから、ご連絡頂きたいです」

……と答えたものの、事を遡れば、全然違う話なのです。
毎度の事ながら、自分は
『どうしてこうなった!?』
と心の中で思いながら、面談をしていました。


自分が何か発言すると、この部署は何でも騒ぎにする。

そのことに苛立ちとストレスを感じていて、
ついでに任される業務もほぼない……とくると、
自分のすることは、ストレス発散のためのサボり(欠勤)と
知識不足の政治の勉強や読書、自主的な事務室の掃除くらいになっていました。


そんなある日、いわゆる部署ごとにお菓子やらお茶やらをやっている、有志の親睦会の領収書が
そのまま、部署の名前で切られているのを、たまたま見つけてしまいました。


実は自分は、病気になる前の職場で、何年も親睦会費の管理担当をしていました。
そして、会計監査上、別の財布(予算)から出ているものは、同じ名前で領収書を切ってはいけない……と、
当たり前に思っていたのですが、ここの事務室では全然当たり前ではなかったようです。
加えて、この親睦会費の会計も非常勤に任せっきりで、正社員は誰も確認していないと……いうことでした。

自分は『会計監査上、問題があるのではないですか?』
と訊ねただけだったのですが、
なぜかこうして、会議室にドナドナのごとく連れられている訳で、
シーンは冒頭に戻ります。


「会計上、問題があるのは確かだから、今後はM君に確認してもらうことにしたよ」
「…………。」

薄ら笑いの部長と
ニコリともしないMさん


いや、明らかに、自分のせいで、ただでさえ忙しいMさんの仕事増やしましたよね!?

加えて、決定権者・指示出しの問題……と、明らかに、非常勤の問題にMさんを突然投げ込んだかたちです。

非常勤の管理をしている人がいるのに、なぜMさんに割り振った!?

会議室にいる間、いたたまれなさで、一杯でした。


はぁー……

会議室から出ると早々に聞こえる、深い溜息……。
Mさんが、メモ帳を机に投げ出して、腰に手を当てています。

「あの、お仕事増やして申し訳ないです。大変な時期にすみません」

「…………。」

……え?何か自分、変なこと言いましたか?


その時のMさんの、ハッとした表情、今でも忘れられないです。

人として、同僚として、仕事の進捗や体調を思いやるのは当たり前ではないですか?
プライベートでは絶対に交遊関係を持ちたくないと思っている人でも、
追加で仕事を頼むことになったら
『申し訳ないのですが~』
くらい言うほうが、仕事は円滑に進みますよね。

こういう "クッション言葉" を使うのは、当たり前だと思いますし、
自分が心から申し訳ないと思っているのであれば、素直に伝えるべきだと思うのですが、
ハッとした顔をされて、逆に自分は面を食らいました。


Mさんは、今まで自分のこと、どういうふうに見ていたのだろう?

そこに "障害者" が関わってるかは分かりませんが、
少なくとも、他人を思いやるような人間には見えていなかったのでしょう。

改めて、色々な誤解があるな、と感じた瞬間でした。

(8へ続く)

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