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「相互不信」が生み出すもの

保険会社の情報発信不足により、契約者と保険会社間に「相互不信」が醸成されるとクラウドファンディングのプロジェクトページに書きました。 さらっと書きましたが、かなり深刻な状況を生み出していると考えています。 とある保険会社の社員Aさんがいました。 就職氷河期に保険会社に就職した彼女は、家族にとって大切な自慢の娘です。業務に対する理解も早く、順調に社会人生活をスタートさせました。 所属の組織では、当初仕事は工程別に複数の社員が担当していましたが 「1人のお客様に1人の担

    • クラウドファンディングに挑戦します!

      「1年もあったのに政府は何をしていたのか!」 最近ワイドショーでよく聞く意見です。 聞くたびに、誰が誰のどういう行動に対して怒っているのだろうと不思議な気持ちになります。誰がどう行動したら正解だったのか? そもそも他人が自分の思うとおりに行動しなかったら、それを自分にとっての「怒り」の対象にしてよいのか? そんなことよりコントロールできるはずの「自分」は何をしていたのか? 昨年の4月から会社が休業シフトになって、出社する機会が減りました。 自宅でリモートワークをするわけで

      • 「不正」(虚偽請求)について

        図書館から本を借りて読みました。特に「不正」について書かれた項目は実体験と照合できることが多く、とても興味を持って読めました。 保険金支払いの業務では、多くの「不正」事例と遭遇します。 この本でも触れられていますが、「不正」として圧倒的に多いのは 「便乗請求」です。(実際に盗難にあった。ホントは財布しか盗まれていないけど、カメラと時計も盗まれたことにしておこう…みたいな) 「リュックごと盗まれました。中に入っていたものの一覧表です。」 事故状況に疑義がある場合は、実際に同

        • 「売りたい保険」と「買いたい保険」

          保険会社側から「売りたい保険」というものは存在する。 (事業会社ですから当たり前のことです) 例えば、損保の場合(生保でも)、保険を販売した代理店に対し、販売手数料を支払いますが、商品ごとにその手数料率に差をつけます。 一般に事故の多い商品はこの料率は低くなるし、少ない商品はその逆です。代理店も当然「お客様」に商品をすすめる際、 「販売することによっていくら手数料をもらえるか」は重要な要素です。 生保の場合は、成績保険料という形で明示されます。 過去、損保子会社の生保販売主

        「相互不信」が生み出すもの

          保険金は誰のものか

          軽微な自動車事故の相談をされたことがあった。 自車の損害はほとんどなく、修理は不要だった。 ところが相手車は結構な額の修理費用を請求してきた。 当方に過失があった(むしろこちらの方が大きかった)ので、保険会社が 被保険者の代理人として示談交渉に入れる案件だ。 保険会社は相手の条件を丸呑みした。 ところがそれに納得がいかず、示談に応じなかったのだ。 私は保険会社の条件に乗った方がよいと思った。 便乗請求があるかないかを調べるのはあなたの仕事ではない。 正義感から相手を懲ら

          保険金は誰のものか

          P2P保険

          P2P保険とは、SNS等により形成された会員(保険契約者)同士のコミュニティが、事前、あるいは事後に、一定の事由が生じた会員のためにお金を出し合う(事前にお金を集めていれば保険金を支払う)、相互扶助のシステムである。よく「無尽」や「頼母子講」と似ているとの話を聞くが、「保険」と比較した場合と同様、似ている部分もあればそうでない部分もあるのだろう。 このコミュニティ内において、少額の保険金支払の場合、プールの中でその損害がシェアされ、コミュニティのプールでカバーできない保険金

          P2P保険

          何でも出る保険

          横軸に事象の発生頻度をとって縦軸に事象が発生した場合の損害額をとる。 この評価軸の中で、発生頻度は低いけれど発生した場合の損害額が大きい 事象を補償する保険が損保商品として成立すると一般に考えられている。 (もちろん商品成立の評価軸はこの2つだけということではなく、例えば「事象は独立して起きるか」とかの要素もある) だから「保険金何でも出ます!ドアノック商品です!サービス商品です!」 は売る人にとっても買う人にとっても魅力的だけれど、結局すべての費用を保険料に転嫁することに

          何でも出る保険

          「掛け捨て保険」

          損保の商品の分類の仕方に、満期返戻金の有無による「積立保険」と「掛け捨て保険」に分ける方法がある。 25年前は予算(ノルマ)がこの「積立保険」と「掛け捨て保険」に分かれていたが、秋口から「生命保険」が加わり、やがて「積立保険」は満期管理(きちんと期日に満期返戻金を振り込めるよう手続きしたか)のみの種目となり、「掛け捨て保険」も「一般種目」と呼ぶようになった。 25年前「積立保険」は元本割れすることがなく、契約者にとってある程度 魅力のある商品だったが低金利の環境が常態となり

          「掛け捨て保険」

          誰が費用の負担をしているのか

          盗難事故があり、30万円の請求があったとする。 ただ事故の状況がどうもおかしい。第三者の意見として調査会社による調査を入れたいと思う。この調査によって請求が取り下げられるかもしれない。その場合は調査費用の50万円がかかる。調査によって事故がなかったことが証明できないこともある。その場合は80万円かかる。 当然そのお金は契約者の支払う保険料から支払われる。調査を入れればどちらに転んでも請求額以上の費用が必要となる。 ならば請求どおり30万円支払ってしまうという手もある。 この場

          誰が費用の負担をしているのか

          事故発生の有無を証明することは極めて難しい

          海外旅行で盗難が発生した場合「警察の届出がないと請求できませんか?」と聞かれることがある。結論から言えば警察届の有無のみによって保険の有無責を決定することはない。そもそも警察の届出(ポリスレポート)に「盗難を証明します」なんて書かれていない。多くの場合「~~と旅行者が言ってます」くらいの内容。判断基準をすべて明かすことはできないが、「ポリスレポートを入手するためにどのような行動をとったか」とか、「ポリスレポート内に記載された内容」を重視している。 事故発生の有無を証明するこ

          事故発生の有無を証明することは極めて難しい

          保険を売る人

          25年ほど前まで損保は独禁法の適用除外ですべての損保会社が全く同じ商品を売っていた。だから業績拡大と販売網新設はほぼ同じ意味を持った。「そこの角のタバコ屋を代理店にして来い!」と言われて(損保を販売する)代理店にした なんて話を聞いたことがある。20年ほど前から安易に設置した代理店の後始末に本当に苦労することになるのだが、それはまたのちの話。なので当時は代理店の力が本当に強かった。                「(保険会社の担当者を)気に入んなかったら他の保険会社の代理店を

          保険を売る人

          「お客さま」との関係性

          ほぼすべての保険会社の基本方針に「お客さま第一」「お客さまによりそい」「お客さまのために」みたいな文言が入っている。 CS(顧客満足)について考えるとき、まずそのC:Customerは誰なのか、定義する必要がある。 「当然契約者でしょ」「代理店は?」「潜在顧客もいるんだからすべての人がお客さまだ」などなど。「(株式)会社はだれのものか?」みたいな話になってしまう。個人的には範囲を広げるほど文言の意味はなくなってしまうと思う(「すべての人を第一に考えます!」ってどういうこと?

          「お客さま」との関係性

          保険の「相互不信」をなくしたい

          みなさん「保険」にどのようなイメージをお持ちでしょうか? 社会人になって25年、ず~っと損保会社に勤めている自分が、「保険」に対して持つ印象を端的に表現するならば、「もし自分の子どもが「保険会社で働きたい」と言ったら全力で阻止したい」です。 25年間で仕事の仕方は大きく変わりました。 でも、根源的な、契約者と保険会社との関係は変わっていません。                  「契約者が保険料を支払い、保険会社が保険金を支払う」 契約者にとって保険会社は「不必要なものま

          保険の「相互不信」をなくしたい