「売りたい保険」と「買いたい保険」

保険会社側から「売りたい保険」というものは存在する。
(事業会社ですから当たり前のことです)

例えば、損保の場合(生保でも)、保険を販売した代理店に対し、販売手数料を支払いますが、商品ごとにその手数料率に差をつけます。
一般に事故の多い商品はこの料率は低くなるし、少ない商品はその逆です。代理店も当然「お客様」に商品をすすめる際、
「販売することによっていくら手数料をもらえるか」は重要な要素です。
生保の場合は、成績保険料という形で明示されます。
過去、損保子会社の生保販売主体が損保社員という状況がありました。その際損保社員には販売ノルマが与えられますが、そのノルマは成績保険料によって決められていました。
いわゆる補償型商品(逓減定期保険とか)はこの成績保険料は大きくなり、貯蓄型商品(養老保険とか)は小さくなりますが、その差(保険料に対して掛けられる係数の差)は100倍を超えます。(0.1と10とか)
つまり、「お客様」に会って話を聞いたうえでそのお客様が最も必要な商品を提案するのではなく、おそらくこちら側の売りたい(成績保険料係数の高い)商品がフィットするであろうお客様のところへ、半分(あるいはそれ以上)「決め打ち」で商品を持っていくことになります。

もちろんこれで長期的なお客様との関係性が築けるとは思えませんが、むしろこの強引さこそ上司受けが良かったりします。
ただ、やはりこの強引さや商品情報の偏在性から、きちんとお客様の意向を確認する「意向確認書」というものが取り付けられることになります。
(各保険会社に対し監督官庁(金融庁)から業務停止命令が出され、その
お客様不在の強引な販売手法はかなり問題になっていました)

何らかの不祥事(不備)が起きた場合、一工程増やして再発防止策とするのは常套手段ですが、やはり安易な対策は形骸化しやすい。
「これは販売する代理店さんを契約者から守る書類なんですよ~」と言いながら書類作成をお願いしましたが、保険会社より顧客との関係性ができている代理店には「手間なだけ」ととられることが多く、なかなか定着しなかったり、書類に不備が多発したりしました。

業務停止期間中、全社員に対し「これはヤバいと思うこと他にはありませんか?」というような内容のアンケートがとられた際「(生保の)成績係数は売りたい商品を、お客様の意向より優先して誘導してしまう要因になるから再考したほうがいい」旨意見を出しましたが、何千人という社員から意見が出されたであろう中にあって一顧だにされなかったことでしょう…

今でも何か不祥事(不備)が発生した際、それの再発防止策として一工程増やすのではなく、何か業務であったり手続きを削減することによって防止策とならないかは常に考えています。なかなか承認されませんけど…
やはり何か問題が生じた際「防止のためこれこれの業務を追加しました!」のほうが「防止のためこれこれの業務をやめました!」より
「何かやった感」はありますよね。

現場の負担が際限なく増えるだけなのになぁと今も思います。。。

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