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グルテンフリーにすると抜け毛・脱毛は治る?!(1/2)

みなさん、こんにちは。
抜け毛・脱毛・薄毛で悩んでいる人はたくさんおられます。ネットの記事を見ると、グルテンフリーにすると、抜け毛・脱毛が治ったというものがあります。また、グルテンフリーについて書かれた本の中に、グルテンと脱毛との関係について触れたものもありますが、どう関係するのか、グルテンフリーにすると、どんな効果があるのか、そのメカニズムは何なのか、について詳しく書かれていません。そこで、多くの人が抱える髪の悩みとグルテンの関係について、2回に分けて解説したいと思います。

悩む女性

「場合によっては効果がある」というのが結論

グルテンが抜け毛・脱毛の原因だった、グルテンフリーにすると、抜け毛・脱毛の症状が改善した、など、ネット上には多くの記事があります。一方で、1年間苦労してグルテンフリーにチャレンジしたけれど、何の効果もなかった、という記事もあります。これらの記事は、あくまでも投稿した人の感想や意見であり、科学的に正しいかどうかはわかりません。そこで今回は、グルテンが抜け毛・脱毛にどう関係しているのかについて、最新の医学論文に基づいて、整理したいと思います。

先に結論を言いますと、一部の脱毛はその発症にグルテンが関わっている可能性があり、グルテンフリーの食生活にすることで、症状が改善する場合があります。ただ、抜け毛・脱毛の発生メカニズムは非常に複雑で、ひとつの原因を取り除いたからといって、症状が治まるわけではありません。これから、その内容を説明していきたいと思います。

抜け毛・脱毛のメカニズムは複雑

最初に、発毛の周期(ヘアサイクル)について、説明します。人間の毛には、生える・抜けるを繰り返す周期があります。成長期は2~8年、退行期が2~3週間、休止期が2~3か月といわれており、さらに休止期と成長期の間に、脱毛期があるとする考え方もあります。人間は一生の間に、この周期を10~30回繰り返します。また毛髪の細胞のうち、成長期にあるものが85%、退行期にあるものが1~2%、休止期にあるものが10~15%といわれています¹⁾。

ヘアサイクル

人間の頭皮には10~15万本の毛髪があり、毎日25~100本が抜けています。発毛の周期が正常であれば、抜けた後にまた生えてくるため、問題はありませんが、このトラブルが起きると、抜け毛・脱毛・薄毛などにつながります。

抜け毛、脱毛、薄毛の原因にはさまざまなものがあります。主なものをあげると、
・女性ホルモンの減少(産後、加齢)
・男性ホルモンが変換されてできた物質が脱毛因子を生産する
・ストレスのため交感神経が優位になり、血管が収縮して毛母細胞に十分な栄養が届かない
・栄養不足のため、毛母細胞に必要な栄養が届かない
・遺伝的素因(アトピー素因を含む)
・自己免疫疾患(免疫系が自分の毛根などを誤って攻撃する)
・薬剤(化学療法薬など)、金属(ヒ素など)、放射線
・物理的刺激(ドライヤーの熱、三つ編み・ポニーテールなど)

ここでアトピー素因に触れておきたいと思います。アトピー素因とは、アトピー性疾患、すなわちアトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれかの症状を持つ人のことです。日本人の30%がアトピー素因です。

抜け毛2

脱毛症にもいろいろあります

脱毛症にはさまざまな種類に分けられます。このうち、代表的なものをご紹介しましょう。

円形脱毛症
T細胞(Tリンパ球)が成長期の毛根を異物と間違えて攻撃する自己免疫疾患です。免疫による攻撃は、ヘアサイクルの周期を混乱させ、健康な毛が突然抜け落ち、局所的に十円玉くらいの大きさの脱毛が起きます。アメリカでは有病率は0.17%で、1970年代と変わっていません²⁾。
どのようにしてこの自己免疫疾患が起きるのか、はっきりとはわかっていませんが、遺伝的素因があることはほぼ間違いなく、これに他の自己免疫疾患、アレルギー、アトピー、ストレスなどが関係して発症するのではないかといわれています。

びまん性脱毛症(薄毛)
通常より多くの量の髪が抜けるため、全体的に髪のボリュームが減る薄毛の状態です。ホルモンバランスの変化や栄養不足などが原因と考えられており、成長期の混乱または休止期への予定より早い移行によって起こると考えられています。なお、びまんとは、一面に広がるという意味です。

薄毛

男性型脱毛症(AGA:Andro Genetic Alopecia)
男性ホルモンの一種、テストステロンが、頭皮に存在する酵素の作用でジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、DHTは毛乳頭にあるホルモンレセプターと結合して、脱毛因子TGF-βが生産されます。脱毛因子TGF-βが増加すると、毛母細胞の活動が停止し、退行期から休止期へと移行するので、髪が成長する前に抜け落ちてしまいます。その結果、細く短い毛が多くなり、地肌が見えるようになります。
遺伝、生活習慣、ストレスが原因といわれています。男性型という名前がついていますが、数は少ないですが、女性にも見られます。

いかがでしたか。
次回は、グルテンと抜け毛・脱毛との関係、グルテンフリーを試す価値はあるのか、などについて、解説したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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参考文献
1) Kamal V. Patel et. al., Hair Loss in Patients with Inflammatory Bowel Diseas, Inflammatory Bowel Diseases, 19 (8) 1753-1763 (2013)
2) Michael Benigno et. al., A Large Cross-Sectional Survey Study of the Prevalence of Alopecia Areata in the United States, Clin Cosmet Investig Dermatol, 13, 259-266 (2020)

まとめ

・一部の脱毛はその発症にグルテンが関わってる可能性があり、グルテンフリーの食生活にすることで、症状が改善する場合がある。
・抜け毛、脱毛、薄毛の原因はさまざま。また脱毛症にもいろいろなタイプがある。


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