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米ぬかを食べる!?注目の使い道は効果があるのか?

こんにちは。
最近、米ぬかが秘かなブームです。米ぬか化粧品などで、お肌によい成分が含まれていることは知られていましたが、栄養成分にも注目が集まり、老化防止や病気の予防効果があるだとか、ダイエット効果があるだとか、いささか過熱気味です。米ぬかは玄米を精米したときに出るカスで、タダ同然のものなのに、米ぬかパウダー、米ぬかサプリはかなりの高値で売られています。お米から作られるので、もちろんグルテンは含まれていないため、小麦の代替としてグルテンフリー生活の味方になってくれるのでしょうか。米ぬかのメリット、デメリットについて、科学的に説明したいと思います。

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米ぬかには栄養成分が多く含まれている

玄米10kgを精米すると、白米が9kg、米ぬかが1kg得られます。白米はそのほとんどがでんぷんなので、お米に含まれていたそのほかの成分は、米ぬかに含まれます。その量を玄米、白米と比べてみましょう。日本食品標準成分表(2020年版)(八訂)に掲載されている分析値は次の通りです。いずれも可食部100gあたりの重量です。

米ぬか栄養成分表示

米ぬかは玄米、白米と比べて、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含んでいます。また米ぬかには含まれる栄養成分で、特に注目されているのは次のような成分です。

ビタミンE(トコフェロール)

米ぬかの脂質に含まれています。強い抗酸化作用があり、体内の脂肪酸が酸化されて過酸化脂質になるのを防ぎます。細胞の老化や動脈硬化を防ぐ効果があります。米ぬかには、玄米の8倍、白米の118倍のビタミンEが含まれています。

トコトリエノール

トコトリエノールもビタミンEの一種で、米ぬかの脂質に含まれています。トコフェロールよりも抗酸化作用が強く、体内の脂肪酸が酸化するのを防ぎ、細胞の老化や動脈硬化のリスクを下げます。また血液中のコレステロール濃度を下げる効果もあります。

γ-オリザノール

米ぬかの脂質に含まれています。コレステロール吸収抑制作用、コレステロール合成阻害作用、コレステロールの排泄促進作用によって、血液中のコレステロール濃度を下げます。また内分泌・自律神経系を調整する作用もあります。

植物ステロール

これも米ぬかの脂質に含まれています。コレステロールに似た化学構造をしており、コレステロールの吸収を阻害します。動脈硬化のリスクを下げる効果があるといわれています。

食物繊維

消化管内で腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やすことで、腸内環境を整えます。また不溶性食物繊維は大腸内で水を吸って膨張し便の体積を増すとともに、腸壁を刺激して蠕動運動を起こすことによって、便秘を解消する効果があります。

米ぬかを食べると健康によい効果が得られるのか

ネット上には、

・お米の栄養素は米ぬかが9割以上、白米は1割未満
・米ぬかは非常に栄養価が高い

などと書かれていますが、これは明らかに言い過ぎです。
玄米や白米に比べて、炭水化物以外の成分が多く含まれているのは事実ですが、米ぬかが9割、白米が1割などという根拠はどこにもありません。また米ぬかの栄養価が高いとのことですが、そもそも栄養価とは何でしょうか。何と比較して高いといっているのでしようか。この文章だけ見ると、白米など栄養価が低くて、カスのような食べもののように見えますが、米ぬかの方がカスだったことを忘れないでください。

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米ぬかを販売している人たちは、次のような論理展開をしています。

「米ぬかには、Aという栄養成分が含まれています。」
         ↓
「Aという物質にはBという作用があり、Cという効果が得られます。」
         ↓
「Cという効果を得るために、米ぬかがお勧めです」

これは巧妙なトリックです。
まず、Aという物質をどれだけ摂れば、Bという作用、Cという効果が得られるのか、書いていません。また「米ぬかを摂るとCという効果が得られる」とも言っていません。

一番の問題は、米ぬかに栄養成分がどれだけ含まれているのか、わからないことです。
米ぬかを食べると、ネットで得られるような効果が本当に得られるのか、γ-オリザノールを例にとって検討してみましょう。実はγ-オリザノールは、血液中のコレステロールを下げる効果があることが医学的に証明されており、高脂血症治療用の処方箋薬として使われています。それによると、血液中のコレステロールを下げるためには、1日300mgを3回に分けて服用することになっています。これは、米ぬか何グラムに相当するのでしょうか。
米ぬかにγ-オリザノールがどれだけ含まれているのかはわかりませんでしたが、米ぬかを搾って作られる米ぬかオイルには100gあたりだいたい0.2g含まれていることがわかりました¹⁾。米ぬか1kgから米ぬかオイルが140g取れるとのことなので、

γ-オリザノール 300mg = 米ぬかオイル 150g = 米ぬか 1.1kg

となります。つまり血液中のコレストロールを下げる効果が得られる量のγ-オリザノールを摂るためには、米ぬかを毎日1.1kg食べる必要があるということです。

これは極端な例かもしれませんが、他の効果についても似たようなものです。
米ぬかに含まれている成分に生理活性効果がある、ということと、米ぬかを食べれば生理活性効果が得られるということは、まったく異なります。

ついでにもう一つ。先ほど注目されている成分として挙げた、
・ビタミンE(トコフェロール)
・トコトリエノール
・γ-オリザノール
・植物ステロール
は、米ぬかの脂質に含まれています。その脂質からできたのが、米ぬかオイルです。ですからこれらの成分を摂りたければ、米ぬかオイルを使えばよいのです。わざわざ使いにくい米ぬかから摂る必要はありません。
また、食物繊維が多いと紹介しましたが、食物繊維を多く含む食品は他にたくさんあります。最もコスパがよいのは「おから」です。おからは江戸時代から食品として利用されてきました。高い米ぬかパウダーを買う必要はありません。

米ぬかのダイエット効果と美容効果

米ぬかにはダイエット効果はありません。ダイエット効果があると主張している人が根拠に挙げている点は、次の2つです。

・米ぬかには食物繊維が多いため、便通がよくなり、腸内環境が改善される。
・米ぬかにはコレステロールの吸収を妨げ、排出を促進する効果があるので、ダイエットになる。

米ぬかに食物繊維が多く含まれること、また食物繊維が便通や腸内環境を改善することは事実ですが、米ぬかをどれだけ食べればよいのか全く分かりません。慢性的な便秘に悩んでいる方は、食物繊維を少々摂ったくらいで、便通が改善しないことをよくご存じだと思います。また腸内細菌の改善に関しては、さまざまな商品が出回っている中で、食物繊維の効果はたかが知れていると思います。

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もうひとつのコレステロールの吸収阻害と排出促進についても、いったいどれだけの米ぬかを摂ればこの効果が得られるかという点が不明です。米ぬかを毎日1kg以上食べなければ、γ-オリザノールの効果が得られないことは、さきほど説明した通りです。そもそも、米ぬかは玄米、白米とカロリーがほとんど同じです。ごはんの量を減らさず、米ぬかパウダーを振りかけて食べると、その分、摂取カロリーは増えます。もし米ぬかにはダイエット効果があるといわれる方がおられましたら、ぜひその理由を教えてもらいたいと思います。

一方、米ぬかに美容効果があるというのは本当です。次のような成分が、化粧品、医薬部外品の成分として使われており、ここで挙げた効果を表示することが認められています。

コメヌカエキス

米ぬかから、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールまたはこれらを混ぜた液で抽出して得られたものです。皮表柔軟化および角層水分量増加による「保湿作用」、グルタチオンレダクターゼ発現増強による「抗酸化作用」があります。後者は簡単にいうと、紫外線やストレスによるしわ、しみを防ぐ作用のことです。

フィチン酸

皮脂腺細胞分化抑制による皮脂抑制作用という効能で、ヘアケア製品、頭皮ケア製品など使用されます。

イノシトール

肌荒れを防ぐ、脱毛予防、皮膚病予防などの働きがあり、ヘアコンディショニング剤、保水剤、保湿剤として使われます。

ビタミンE

皮膚の角質化の防止、過酸化脂質による障害の抑制、メラニンの沈着抑制、抗炎症作用、発毛促進効果、紫外線防御効果、保湿効果などの効能があります。皮膚から直接は吸収されるため、さまざまな化粧品に使われています。

活用するなら米ぬかではなく、米ぬかオイルを

米ぬかを食品として摂っても、いわれているような効果は期待できないという説明をしてきました。でも米ぬかに含まれる栄養成分は魅力的で、何とかして活用できないかと思う方もおられるでしょう。そのような方に、米ぬかを摂ることによるデメリットと代替手段について説明します。

米ぬかは、お米の外皮と胚乳の部分が中心ですが、この部分にはカビ毒、重金属、残留農薬といった有害物質が、白米の部分よりも高い確率で存在します。もちろんこれらの有害物質の有無については検査が行われ、基準値以下であることを確認してから出荷されています。でも考えてみてください。基準値というのはゼロではありません。この程度なら口に入っても健康に影響がない、という濃度です。そもそもこの基準値は、米ぬかを食べることを前提にしたものではありません。米ぬかを積極的に食べることで、本来体の中に入るはずではなかった有害物質を取り込んでしまうことになります。
米ぬかパウダー、米ぬかサプリの中には、このような指摘があることを見越してか、国産有機米使用、無農薬栽培などをうたっている商品もありますが、そうなると余計に値段が高くなります。そこまでして、米ぬかを食べる理由があるでしょうか。

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それでも米ぬかの栄養成分を摂りたいのであれば、代替手段があります。玄米と米ぬかオイルです。玄米には米ぬかの成分が含まれており、また食用として販売されています。白米と一緒に炊いて食べることができるので、米ぬかパウダーをごはんにかけて食べるのと同じことになります。また米ぬかに含まれる注目成分のほとんどは、米ぬかオイルに濃縮されて含まれています。ふだんの料理で使う油を米ぬかオイルに変えることで、米ぬかに含まれる体によいといわれる成分を、簡単に摂ることができます。

いかがでしたか。
米ぬかには栄養成分がたくさん含まれているのは事実なので、これを利用することには賛成ですが、米ぬかをわざわざ食べるメリットはないと思います。本来タダ同然の米ぬかが、パウダーやサプリメントに加工されて、高い値段で販売されているのは疑問に感じます。

まとめ


・米ぬかは玄米や白米よりたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含み、ビタミンE、γ-オリザノールなどの栄養成分も含まれます。
・米ぬかを食べても、ビタミンE、γ-オリザノールなどの栄養成分が持つ健康増進効果が得られるとは限りません。栄養成分が含まれる量にも注意を払う必要があります。
・米ぬかにはダイエット効果はありません。化粧品や医薬部外品の成分として使われる場合は、美容効果があることがわかっています。
・米ぬかは白米に比べて、カビ毒、重金属、残留農薬などが含まれる確率が高いです。米ぬか成分を摂りたいのであれば、玄米と米ぬかオイルを使うのがよいでしょう。

出典
1) 金田油店ウェブサイト、https://www.abura-ya.jp/hpgen/HPB/entries/49.html

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