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ハトムギはグルテンフリーのスーパーフードか?

こんにちは。
今日はハトムギについてのお話です。ハトムギは「麦」という名前がついていますが、グルテンフリーです。しかも、デトックス、アンチエージング、滋養強壮の効果もあるとか。スーパーフードとまで書いている人もいますが、ハトムギってほんとうにそんなによいものなのでしょうか。ハトムギについて、科学的に検証したいと思います。

ハトムギはイネ科の雑穀のひとつ、値段は米の10倍

ハトムギはイネ科ジュズダマ属の植物で、玄米より大きな実を付けます。殻と皮を取り除いたものが、食用として売られているほか、医薬品や化粧品の原料にもなります。主にインド、中国で栽培されており、主食にもしているそうです。日本でも各地で栽培されており、国産のハトムギをネットショッピングで購入できます。

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ハトムギには、殻と皮を取り除いた精白粒(上写真)、皮を取り除いていない玄麦粒、精白粒を粉にしたハトムギ精白粉、焙煎した精白粒を粉にしたハトムギ煎粉など、いろいろな種類の商品があります。販売者や内容量によって価格はまちまちなのですが、ふつうの精白粒で300g入りで900円くらいです。安い国産精米が5kgで1,500円くらいなので、お米の10倍の値段ということになります。

いろいろな料理に使えると書いてありますが、穀物なので、何にでも使えるのでしょう。他の雑穀と同じように、精白粒をお米と一緒に炊いて、食べるというのが一番オーソドックスな食べ方のようです。お米にどれだけ加えるのかも自由ですが、苦みと独特のにおいがあるらしく、お米1合に大さじ2杯を加えるというレシピがありました。つまり白米180ml+ハトムギ精白粒30mlということになります。比率でいうと14%ということで、ほかの雑穀よりやや少な目といった感じでしょうか。なお、ハトムギは粒が大きいため、そのままお米にまぜて炊くと、固くなるそうです。あらかじめ一晩水につけてから炊いたほうがよいとのことでした。
ハトムギ精白粉、ハトムギ煎粉などは、小麦粉に代わりに使えるかもしれませんが、粉の性質について情報がなかったので、具体的にどのように使えばよいのか、わかりませんでした。

ハトムギの栄養成分は白米と同等かそれ以下

お米の10倍の値段のハトムギには、どんな栄養成分が含まれているのか、興味があります。ネットの記事には、ビタミンB1・B2、カルシウム、鉄、食物繊維がたくさん含まれると書いてあったので、日本食品標準成分表2020年版(八訂)で調べてみました。するとたんぱく質が多い以外、お米(精白米)とほとんど変わりません。しかも、ビタミンB1と鉄はお米の半分食物繊維はお米とほぼ同じ量しか入っていません。ハトムギを玄米と比較すると、カルシウムは玄米の2/3ほど、ビタミンB2は玄米とほぼ同じでした。

ハトムギ栄養成分

白米はビタミンB1が不足しがちで、明治・大正時代に脚気が流行してから、玄米ご飯や麦飯が取り入れられるようになりました。また鉄分は多くの女性が不足しがちな成分です。これがたくさん含まれると書いてあるにも関わらず、実際は白米の半分しか入っていないとは、驚きです。
また、確かにたんぱく質は多く含まれています。ただイネ科植物のたんぱく質は、動物性たんぱく質や大豆のたんぱく質と比べると、消化・吸収が悪く、必須アミノ酸の含有量(アミノ酸スコアーという指標で評価します)も低いです。だから、たんぱく質が多くても、あまり意味はないと思います。

ハトムギがスーパーフードと言っている人は、スーパーフードの意味がわかっているのでしようか。何の根拠もないのにスーパーフードという名前をけるのは、無責任です。

ハトムギはウイルス性イボの治療に効果がある薬

ハトムギはヨクイニンとも呼ばれ、昔から漢方薬や民間療法でさまざまな目的で使われてきました。飲む以外にも、エキスを患部に塗るという使い方もされていたようです。しかし、ハトムギ(ヨクイニン)を有効成分として含む薬は、ウイルスが皮膚に感染することでできる「青年性扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)」と「尋常性疣贅(ゆうぜい)」というイボに対してだけ、治療効果があると考えられています。これ以外のウイルス性のイボはもちろん、加齢や紫外線が原因でできたイボには、明確な効果が認められていません。どんなイボにも効く、あるいは、肌荒れやニキビにも効果があると書いてある記事もありますが、医学的効果は証明されていません。

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またハトムギ(ヨクイニン)には飲み薬(内服薬)しかありません。塗り薬のような液体もありますが、これは薬ではなく「化粧品」として売られているものです。イボの上からハトムギエキスを塗っても、効果はありません。なぜなら、ハトムギ(ヨクイニン)は、その成分が免疫細胞の1つであるナチュラルキラー細胞を活性化させ、体の免疫機能を高めることで、ウイルスを死滅させているからです。

さらにハトムギ(ヨクイニン)を飲むと、まれに副作用が起こることがあり、医薬品の使用上の注意には、そのことが明記されています。具体的には、胃の不快感、下痢、発疹、発赤、かゆみ、じん麻などです。また子宮収縮作用があるため、妊娠中の人に使用する場合は、注意が必要です。生薬だから、漢方薬だから、安全というわけではありません。

民間療法でいわれていた効果が、いつのまにか真実に

ハトムギは長い間、民間療法で使われてきました。そのとき、いわれていた効果が、十分な科学的な裏付けがないまま、いつの間にか真実のようになっているようです。例えばハトムギを摂ることで、
・デトックス効果がある。
・利尿作用により体の余分や水分を排泄してむくみを解消する。
・吹き出物などの肌荒れやニキビに効果がある。
・シミやソバカスを改善する。
・肌の保湿力を高める。
といわれていますが、本当でしょうか。

ハトムギには、
・利尿作用:体内の水分やナトリウムを尿として排出するのを促進する。
・消炎作用:体内で起きる炎症反応を抑える。
・滋養強壮:健康を維持し向上させるとともに、体の疲れを取り除き元気な状態にする
といった効果があるといわれています。これと、民間療法で言われていた効果を組み合わせることで、さまざまな効果をうたっているようです。
でも、ハトムギをどれだけ摂れば、そのような効果がどれだけ得られるのか、よくわかっていません。特に滋養強壮など、きわめてあいまいな概念です。さらに、利尿作用や滋養強壮作用は、多くの植物由来の食品が持つ効果で、ハトムギに特有のものではありません。

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いかでしたか。
ハトムギは昔から生薬として漢方や民間療法で使われてきましたが、明確に効果が認められているのは、ウイルス性のイボの治療だけです。それ以外の効果については、否定も肯定もされていません。このようなあいまいな効果を引っ張り出して、ハトムギが素晴らしい食品であるかのように説明するのは、果たして正しいことなのでしょうか。また栄養成分についても、お米と比べて、特に優れているわけでもありません。スーパーフードというのは、明らかに言い過ぎです。
お米の10倍の値段のハトムギを、積極的に食べる理由は見当たらないというのが、私の結論です。

まとめ

・ハトムギはイネ科ジュズダマ属の植物で、玄米より大きな実をつけます。実の殻と皮を取った精白粒をごはんに混ぜて食べることができます。値段はお米の10倍と高いです。
・ハトムギの栄養成分はお米と同等かそれ以下で、とくに栄養的に優れた食品ではありません。
・ハトムギは内服したとき、ウイルス性イボの治療に効果があります。それ以外の目的や使い方は民間療法をベースなしたもので、効果は科学的に証明されていません。


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