イベントレポート:Orthogonal【kakuzai-bomb】
こんにちは。HAM2020ディレクターの阿部です。
この記事では、11月14日・15日に行われたイベントの様子やインタビューでの発言を踏まえながら、作品について掘り下げます。
Orthogonal【kakuzai-bomb】
今回のイベントでは、筑波大の大学院で芸術を専攻する速水一樹さんが街中でのパフォーマンスに試みました。
Orthogonal【kakuzai-bomb】は速水さんが今年の夏から継続されているプロジェクト作品です。
これまでの制作はInstagramの専用アカウント上で発表されています。
イベントではOpen Spaceにおける取り組みであることを活かすために、過程の公開を重視しました。
その結果、筑波大学を出発点としてペデストリアンデッキに沿って南下し、松見公園と中央公園、そして終着点であるつくばセンタービルを巡るというパフォーマンスになりました。
企画に向けて速水さんが用意していたマップ（左はアイアイモールのHP掲載のマップを使用：http://www.aiaimall.com/floor_guide/index.html）
Orthogonal【kakuzai-bomb】の制作に関する一連の行為はタイトルの通り「bomb」に見立てられます。
「bomb」とは、ストリートの文化において公共物にグラフィティを書き付ける行為を指します。
実際のボムには対象物に書き付けることで自分の存在をそこに主張する効果がありますが、Orthogonal【kakuzai-bomb】は痕跡を残しません。
完成するとすぐに解体され、次の場所・次の形へと遷移します。
制作中の「スポーツみたいな感覚」
速水さんは角材を組み上げているときの心境について「（構成をするのを楽しんでいるとかではなくて）スポーツをやっているような感覚」だと言います。
アートなのに、スポーツのような感覚。
一見信じがたい言葉ですが、Orthogonal【kakuzai-bomb】がスポーツと同様にプレーのための「道具」や「ルール」を持つことを考えると有り得ない感覚ではありません。
まずは「道具」。
この作品における道具は、5本一組の角材です。
2×4と呼ばれる規格の建材を12ft、6ft、3ft、1.5ft、0.75ftの長さに切り分けたもので、この一揃えを繰り返し使います。
そして「組み立て」のルール。
角材をウェイトと摩擦のみで立ち上がるように組み合わせることや、建築物の構造を利用することなど。
（他のルールはぜひ推理してみてください）
これらのルールがあることでOrthogonal【kakuzai-bomb】は作品の同一性を保ちながら、空間ごとに形を変えて立ち現れるのです。
そして同時に、パフォーマーに対してスポーツのような感覚を催すのだと思います。
パフォーマンスを見るひとの視線
私はこのパフォーマンスを見るなかでパフォーマーの「身体」に目が惹きつけられるように感じました。
この作品は、真っ直ぐで長い角材を壁や地面の間に組み立てると言う作品です。
そのために、パフォーマーの身体は磐石な建築物・地面・角材の間をするりするりと動き回り、姿勢を変え、角材を支え、もちあげ、噛み合う様子を計り、とうごきまわります。
この動きのコントラストが身体の繊細さや豊かさ、自由さを引き立ててみせていたように思います。
「自分だったらどうやるか考えていた」
「組むのが難しい場所では、他の場所と違う緊張感が伝わってきた」
「ボルダリングみたい」
「私にはできないと思った」
など、パフォーマンスをそばで見ていた鑑賞者の感想にも視線がパフォーマーに向けられていたことが現れています。
鑑賞者もまた「スポーツみたいな」感覚でパフォーマンスをみていたのかもしれません。
パフォーマンスが受け取るもう一つの視線
リプレイを視聴するとわかりますが、パフォーマンスに最も多く向けられた視線は通りすがる人からの「なんだあれ？」という視線でした。
一つ前の章ではパフォーマーや鑑賞者といった、作品のそばに立つ視点から見えていたことを分析しました。
それに比べて通りすがりに目をやる人は、作品から遠い視点を持っています。
日常の風景の一部としてこのパフォーマンスを見た人には、作品はどのようにみえていたのでしょうか。
次回のパフォーマンスのために用意された角材のための荷車。
【kakuzai-bomb】は今後も街に出没するようです。
写真撮影:
Yuki Ichikawa （Instagram: @daruma_dango139）（2020年11月14日）
中山佳保子（2020年11月14日、15日）
速水一樹（作品写真など）
◎ライブ配信のリプレイはこちらから（全6回）↓
Orthogonal 【kakuzai-bomb】
https://www.pscp.tv/w/coMSkzFXZ0tnQllhWFh3UXZ8MVlwSmt6T2JlWVhHanI8vzmN1TzZxUHiNS3SM_b6nySPtE3xXBVyNe4q03Xq
◎次回イベントのお知らせ
《ずこうやさん》
11月22日(日) 12:00~17:00
各地の児童館で、工作ワークショップを展開しているチーム「ずこうやさん」がつくばセンター広場に登場！
センター広場を広々使って工作してみよう！
こどもから大人まで、どなたでもお越しください！
◎募金箱設置のお知らせ
フィンラガン駅前店のレジ横に募金箱を設置しました。
平砂アートムーヴメントは筑波大学芸術系の学生5名による自主的な活動です。
皆様のご協力が活動の原動力です。PayPayも対応しております◎
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？