見出し画像

イベントレポート:ずこうやさん

こんにちは。HAM2020ディレクターの波村桜子です。
今回は、11月22日(日)に開催されたワークショップについて、アーティストの言葉を交えながら、報告していきます!

画像2

清々しい秋空の下、お昼12時から始まったこのイベントは、つくば市の吾妻西児童館で月に1度子ども向けのワークショップを開いているずこうやさんによって企画されました。

通常は、約10畳の図工室で小学校低学年の子ども12人程度を対象に、空き箱や折り紙、紙皿やビニール袋など身近で工作に使えそうなもの、時にはどんぐりといった季節を感じられるものも含め、色々な材料を使った工作を楽しんでもらっているそうで。

「工作だけでなく、工作を通した遊びや体験を大切にしている。」
とずこうやさんは言います。

なんでも、子どもたちが自分の作ったもので体を動かして遊べることもずこうやさんのワークショップの特徴になっているらしく、カッパを作って水遊びをしたり、楽器を作ってリズム遊びをしたり、マントを作って屋外の風で遊んだり...大学生の私でさえ聞いただけでワクワク&ウズウズしてくるのだから、実際に参加している子どもたちはすごく楽しいんだろうなあ、と思わず童心にかえりそうになりましたが。

今回は、ずこうやさんが、HAM2020の活動場所であるつくばセンター広場に注目し、広い場所を活かして空間全体を工作することや体全体を使って大きなものを作ることができるんじゃないか、大きな会場で大きく遊べたら楽しそうだなあと考えたことで、このイベントが企画されたというわけです。

画像2

当日は2階の手すりから1階の広場まで垂らされた白いビニール紐4本と色とりどりのビニール袋やビニールテープ、リボンに折り紙、ペンといった材料の置かれた机が用意され、そこにいるのは二人のずこうやさん。その空間に引き寄せられるようにやって来た親子や子どもたちは、さまざまな材料を自由に使って紐を飾ったり、広場で遊んだり。

画像5

中でも、大きなビニール袋を土台としてその他の細かい材料で飾りつけをし、袋に空気を入れて口を縛って完成!というタイプがよくいた気がします。そのタイプだと完成後はボールとして使う子もいれば、ペットのように引き連れて広場を動き回る子もいたり、大事そうに抱えて持ち帰ったり...と、当初想定されていた紐の飾りつけ以外の遊び方の多いこと多いこと。

画像5

広場全体にカラフルな袋を持った子どもたちが散らばり、ずこうやさんの空間がどんどん広がっていくような、そんな光景を前に何度「フリーダム!!」と叫びたくなったことか。

画像5


そして、今回のイベントを通して色濃く窺えたのは前述した子どもの自由さに加えてもう一つ、親子の関係です。

ずこうやさんが「いつもは子どもたちだけを相手にしているので、親がいるというのが新鮮だった。」と口にしていた通り、イベント参加者の多くは親子でした。
「今回は良くも悪くも親の存在の大きさを感じた。子どもがワークショップを含めたさまざまな物事に触れるかどうかは、親の興味に大きく左右される。」「子どもが表現活動に触れることを、大人たちはこちらが思う以上に望んでいる。」「自分の子どもに対して『こんなに集中できるんだ』と言っていた方がいたのが印象的だった。」といった言葉をイベント終了後にずこうやさんから感想としてもらいましたが、これらに関しては私も思うことがたくさんありました。

画像8

参加中は、親子で一緒に工作をするところもあれば、実際に作っているのは子どもだけで、親は近くから見守っているというところも見られました。ですが、参加するきっかけの言葉として「あなたこれやりたいんでしょう?」「すみません、この子もこれやりたいみたいで...」というのを共通してよく聞いたように思います。

私自身が年齢を重ねるにつれ、子どもの自由な表現活動における大人の干渉について、個性の喪失につながるのではないか、自由さに制限をかけてしまうのではないか、と批判的な意見を持つようになっていました。
実際に今回のイベントにおいても、ずこうやさんが子どもたちを神業のようなサポート力をもってお手伝いしている横で、子どもが次に何をしようか考えている(ように私には見えた)ときに、親が傍から「リボンを使ったらいいんじゃない?」「あの子のと一緒の作りたいんだもんね~」と声を掛け、子どもはそれに頷いて次の作業を始める...という場面が何度かありました。
これに対して以前の批判的な私だったら「また横から口出ししちゃって」「その子は本当にそれがしたかったのか」とすぐさま疑問を抱き、下手すれば少々憤っていたかもしれません。

画像10

しかし、今回のイベントを全体を通して観察する中で、私の中に新たな考えが生まれました。それは、親子の関係はある程度確立されたものが多く、その関係の中にいる当事者にしか分からないこと、すなわち当事者間で共通認識されている部分や関係の中にいるからこそ理解できる部分というのが存在するのではないか、そしてこのイベントではそれがほんのり可視化されて現れているのではないか、ということです。

先ほど触れた参加するきっかけというのも、子どもが抱いた興味・関心をいち早く察知できるのは親であろうし、自分では行動に移しにくい年齢の子どもにとって、その親の気づきや働きかけというのは成長するのに欠かせないとても重要な関わりと言えるのではないでしょうか。さらには、傍から声を掛けるのも、タイミングや内容(その子にできるできないの判断)は親だからこそ分かることで、子どもからしても親が積極的に協力してくれるとそれは一種の安心感につながるかもしれませんよね。

画像6

ずいぶん長々と文字を連ねてしまいましたが、今回のイベントから得られたものは大きいと私は考えます。
HAM2020で現在行っている週替わりイベントを私たちディレクターはつくばセンターという場所についての理解と思考として位置づけているとともに、ステイトメントでは市民と学生の差異に着目し、彼ら差異のある人々が同じ時間や空間を共有するときに何が起こるのかという可能性を探ろうとしています。

先述した親子というのは、各々で差異があり、かつ外部からすればさらに中身の見えにくい存在であることから、市民と学生の間の差異にどこか共通するものがあるように思います。

そして、ずこうやさんからもらった感想の中にもこんな言葉がありました。
「今回のようなひらけたワークショップでは親の存在も意識して進めていくべきだと思った。」
おそらくこれはワークショップとしてひらけていることと親も参加することが今回初めてだったことを受けての素朴な感想なのですが、実は、ひらいた場所としてのつくばセンター広場という認識と、普段は関わりのない他人同士が交わることで初めて互いの意識の中に入っていくことへの自覚にまで広げられる、HAM2020の活動につながりの深い気づきだと捉えることもできそうではありませんか?

さらに、広場にいた方の中にはHAM2020の活動自体に興味を持ってくださる方も多く、中でも参加している子どもの親がディレクターの一人に芸術に対する感想を正面からぶつけている光景は非常に印象的でした。

これらを総じてみると、今回のイベントはHAM2020の週替わりイベントとして非常に意義あるものになったと私は思うのです。

画像7

また、イベント当日の同じ会場では他にダンスイベントが行われていたり、上には屋外カフェがあったり、近くのビルでも何かのイベントが行われていたりと、久々に人がとても多い週末のつくばセンタービルが見られました。
人は大勢いて、ほぼ同じ場所にいるのは間違いないのだけれど、互いにちらちらとお互いに視線を向けつつも大きく交わることはなく、しかしそれが一つの空間になっているという...なんともいえぬ不思議な空間。
これぞつくばセンタービルと言うべきか。

画像9

さて、そんな空間は学生にどう見えていたのでしょうか?
ということで、最後に、ずこうやさんからもらった興味深い感想を紹介してイベントレポートを終わりたいと思います。

「ちょっとカオスなお祭り感が良かった。一つの空間の中で、色んな立場の人間が少し距離をとりながら一緒にいる感じは個人的に心地よかった。」


写真撮影:小池真莉、波村桜子(HAM2020ディレクター)


◎次回イベントのお知らせ
※茨城県からつくば市に対して12月13日まで外出自粛要請が出されたことを受け、こちらのイベントは延期となります。
延期後の日程は追ってお知らせします。

画像11

《空虚のはたらき》
11月28日(土) 12:00~16:00
11月29日(日) 11:00~16:00

つくばセンター広場に4つのオブジェクトが置かれます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?